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第14話 判決、そして王位を継ぐ者は?

 そしてついに判決よ。


 パリス王太子の婚約者のサルビア・クーデンとロゼラインの母親のロベリア・ノルドベルクは死罪。


 二人は自分の夫や婚約者に助けを求めたけど、二人ともそっぽを向くばかり。


 冷たいものよね。


「だいたい、あの(ロゼライン)が悪いのよ。もっと殿下の気分が良くなる形で仕事をこなせば私だって……」


 この期に及んでなんちゅう無茶ぶり!


 王太子殿下の機嫌を損ねないようしていたら、いずれ人心は離れてしまい治世は安定しなくなるわ。


 弟のエルフリードは成人年齢に達してなかったので、死一等を免れ平民に格下げ。これってよくよく考えたら、死ぬよりきついかも。


 これで終わりではないわ。


 家の者が『反逆罪』という大犯罪を犯すのを放置してきたノルドベルク家も、爵位はく奪の上取り潰しが決定。


 それを聞いた父親のノルドベルク公爵は急に慌てだしたわ。 


「だったら、離婚だ! この女とは離婚する。息子の方も勘当するしそれでどうにかなるのではないか?」


 いままで妻と息子が罪に問われても知らん顔していたくせに、自分にも類が及ぶとわかったらこの態度、ムシがいいわね。


 寄声に近い声で宣言したけど、二人が犯罪を犯したのは家族関係が継続されていた時のことだから意味のない宣言なのよ。


 公爵の反応を無視し裁判長が閉廷を宣言しようとした時、別の場所から声が響く。


「お待ちください! 三名の被告に対する判決に異議はございませんが、彼らと同じく『反逆罪』相当の行為をなされた王太子殿下がこのままなんの処分もないという事に臣下一同納得できません!」


 さあ、始まるわよ。


 これこそがロゼラインというキーパーソンを失ったシュウィツアを仕切りなおすための話し合いの本番だわさ。


 私たち精霊の本意はここにあり!



 ◇ ◇ ◇



「あなたが王位を継ぐのです」


 これは数日前ロゼラインが第二王子ゼフィーロに言った言葉。


 彼への説得はロゼラインに任せていたの。


(パリス)がいつか目を覚ましてくれる、わかってくれる、この期に及んでそんな期待を寄せるのは無駄だと気づいたほうがいいです」


 ロゼラインはそう言いながら複雑な表情を浮かべていたわ。


 自ら気づいて、問題を起こしてばかりのサルビアや近衛隊士から距離をとってくれること。


 ゼフィーロが抱く期待は彼女自身が生前に婚約者であるパリスに対して抱いていたものだったから。


 でも、好悪の感情をあからさまにし耳触りの良い語だけを聞きたがるようなパリスの態度は、阿諛追従の徒を近づけいずれ王国に危機を招くものよ。



 ◇ ◇ ◇



「王族の方々はですな……、反逆罪で裁く対象に入ってないのですよ。それゆえ……」


 裁判長の苦し言い訳。


 それに対して、声を上げた王太后の実家のホーエンブルク公爵やアイリスの父のウスタライフェン公爵、そのほか一同の追及はおさまらない。


「それは法の枠内のお話でしょ。私は本日明らかになったこの驚天動地の事態に国王陛下のご意向をうかがいたく、こちらの席から意見を述べさせているのです」


「王太子殿下の件については裁判で結審することではありませんゆえ、ここで判断は致しかねる所存です」


「ええ、それはわかっております。しかしこの場を借りて国王陛下にご意見を申し上げなければ、なし崩し的に王太子殿下になんの処分も下されない。それは臣下として納得しかねる所存いございます」


 彼らがすごんでいる相手は裁判長ではなく国王陛下。


 うろたえる国王。

 どっちが主でどっちが従か、わからないわね。


「我ら臣下は王族の方々をお守りするため、王宮の出入りの際の不便や面倒も受け入れてまいりました。にもかかわらず、そのお守りする対象の王太子殿下が自ら決まりを破られ何の処罰も受けない状況で、今後臣下が忠誠心を持ちえるかどうかということなのです」


 王太子にも何らかの処分を下さないと収まらない状況で国王はついに、その件に関して後日重臣たちを集めて話し合うことを約束させられたわ。


 よっしゃ!


 ひんしゅくを買っている現王太子と支持勢力を伸ばしている第二王子。

 勝算のある戦いの舞台は整ったわ!


「やりやがったな、ゼフィーロ。これがロゼラインの件でお前が動いた目的か!」


 この展開に兄王太子は弟のゼフィーロをにらみつける。


 そのあからさまな敵意に弟王子は返す言葉なく、視線を跳ね返すのみ。


 うわっ!

 今のはあたしもロゼラインもカッチーンときたわよ。


 ゼフィーロがどんだけ悩んでいたか。

 ロゼラインがどれだけ苦労してその彼を説得したか。


 いやはや、すがすがしいまでのクズっぷりね。

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