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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第二章後編 二人の関係を表す言葉は……

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第98話 エピローグ③ ~『おかえり』と『ただいま』~

「りっくん、明日どうしよっか?」


「うーん、主役のさやっちが喜ぶような物だろ?」


「だよねー。サーヤが喜びそうなものって何だろ。猫?」


「ってことは猫カフェか? でも打ち上げが猫カフェってのもな。まあ普通に楽しめそうではあるけどなんか違うよな」


「だよねー」


 陸翔と蕾華は明日の打ち上げ兼入部歓迎会について話し合いながら道を歩いている。

 せっかく桜彩と仲良くなれたのだ。

 ここで一気に距離を詰めてやる、と蕾華は意気込んでいる。

 その為にも明日の歓迎会は絶好のチャンスであり、絶対に外すことは出来ない。


「後は何だ? さやっちの好きそうなモンってーと……」


「サーヤの好きな……」


 そこで二人の頭に一つ思い浮かんだものがある。

 顔を合わせて二人揃ってその言葉を口にする。


「怜かなー?」


「れーくんかなー?」


「まあ好きなのは間違いないけどな」


「だよねー」


 疑問にするまでもないだろう。

 自分達の見たところ、明らかに桜彩は怜のことが好きだ。

 まあ『好き』と一言で言っても、桜彩本人が自覚している『好き』と自覚していない『好き』の二つがあることも疑問にするまでもない。

 後者に関しては本人達は気が付いていないようだが、陸翔と蕾華からしてみればバレバレである。


「でも怜って言ってもなあ……」


「うん。れーくんを箱に詰めて、『はい、サーヤの歓迎プレゼントだよ』ってれーくんをプレゼントするってのも違うしね」


「さやっちに内緒で怜に手料理でも作ってもらうか?」


「うーん、それもそれでなあ。いや、喜んではくれそうだけど。それにそれじゃあアタシ達なにもしてないし」


 あーでもないこーでもないと歩きながら話していると、目的地へと到着する。


「とりあえず甘い物でも食べて脳に栄養を補給しよっか。そうすれば良いアイディアの一つくらい思い浮かぶかもしれないし」


「そうだな。とりあえず食べるか」


 目的地の店の前で立ち止まり、いったん話をやめてドアをくぐる。

 アンティークベルの心地良い音が耳に届き、行き詰っていた頭をリセットしてくれる気がしてくる。


「いらっしゃいませー。ってあら、久しぶりね。怜君と待ち合わせ?」


 目的地であるリュミエールへと入ってきた二人、陸翔と蕾華に店員の望がそう問いかける。

 蕾華の姉の瑠華が望と友人であり、蕾華も陸翔もこの店はもう常連のように訪れているので望ともすでに顔見知りだ。

 そんな望の言葉におもわず真顔になって二人で顔を見合わせる。


「…………」


「…………」


「あら? 違った?」


 二人の反応が思っていたのと違ったため、望が首を傾げて問いかける。

 陸翔と蕾華は単に話し合いの場(という口実によるデート)として訪れただけなのだが、望の言葉にイートインスペースへと無言で視線を走らせればそこには怜と桜彩が楽しそうにケーキを食べながら談笑している姿があった。

 一方で怜と桜彩は話に夢中で陸翔と蕾華の来店には全く気が付いていない。


「いや、待ち合わせじゃないんですけど」


「え? そうなの?」


「はい。でもそっか。れーくんとサーヤ、二人で……」


 長く親友として付き合ってきた怜が楽しそうに談笑している。

 その笑顔は間違いなく心からの笑顔。

 怜本人が本当に仲の良い相手にしか見せない、心から笑っている顔だった。

 それを見て二人は表情を緩ませる。


「そっかそっか。二人共楽しそうだね」


「ああ。さすがに割って入れねえな」


「だよね。まあれーくんとサーヤなら邪見にはしないだろうけど、さすがにお邪魔だよね」


「馬に蹴られたくもないし、ここは素直に退散しとくか」


 ここで二人が怜と桜彩に声を掛けたとしても、二人は受け入れてくれるだろう。

 しかし、もちろんそんな無粋なことなど断じてしない。


「言葉で定義出来ない自分達だけの関係か。怜やさやっちにとって、今のところはそうかもしれないけどオレ達にとっては違うよな」


「うん。れーくんもサーヤもアタシ達にとっては親友って言葉で定義出来るよね」


 幸せそうに話す『親友二人』を暖かな目で見守る。

 あの二人と過ごすのは明日以降の楽しみとしておこう。

 ついでに思う存分からかってやっても良いかもしれない。

 普段怜にバカップル呼ばわりされているのだから、明日以降に意趣返ししてやろう。

 そう考えて顔を望の方へと戻す。


「それじゃあすみませんけど、アタシ達は出直してきますね」


「はいはーい。なんとなくしか分からないけど、分かったわー」


 このまま二人の姿を眺めていたいがそれではいずれ気が付かれてしまうだろう。

 今のこの雰囲気を邪魔することなど絶対に出来ない。

 そう思って二人は当初の予定を取りやめてリュミエールから出て行く。

 最後にちらっと店内を見て、相変わらず仲良く話す親友二人の姿を焼きつけながら。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「すっかり遅くなっちゃったね」


「こういう時に一人暮らしだと便利だよな」


 リュミエールで楽しい時間を過ごした怜と桜彩。

 二人で話している時間はとても楽しく、つい時間を忘れて話し込んでしまった。

 お冷のおかわりを持ってきてくれた望が


『二人共仲良いわね。でももう外も暗くなってきてるけど大丈夫?』


 と心配して声を掛けてくれたおかげで、二人はようやく時間を忘れていることに気が付いた。

 そのまま慌てて店を飛び出す二人に望がニヤニヤとしながら


『それじゃあお二人さん。仲が良いのは構わないんだけど、もう少し周りを見た方が良いわよ~っ』


 とからかいの言葉を投げかけてきた為に、二人揃って顔を赤くしてしまった。


 その後は一緒にスーパーで夕食の材料を買い込んで二人の住むアパートへと戻る。

 部屋の前へと辿り着くと、お揃いのキーホルダーが付いた鍵を取り出して微笑み合う。


「それじゃあね、怜。着替えたらすぐに行くね」


「ああ、玄関の鍵は開けておくからな。それと急がなくても良いぞ」


「うんっ!」


 一度別れて自室へと入り、怜は先ほど購入した食材を冷蔵庫に入れていく。

 するとすぐにインターホンが鳴って桜彩が来たことを伝えてくる。

 急がなくても良いと言ったのだが、すぐに着替えて来てくれたようだ。


『怜、入るね』


「ああ」


 受話器越しにそう答えると、すぐに玄関の開く音が聞こえてきた。

 数秒後、リビングのドアが開いて桜彩が入ってくる。


「いらっしゃい」


「お邪魔しまーす。…………うーん」


 最初は笑顔だった桜彩だが、ふと何か腑に落ちないのか考えるような仕草をする。

 別にお互い変なことを言ったつもりはないのだが。


「桜彩? どうかしたのか?」


「あ、うん。その、ね……。なんか今の『いらっしゃい』とか『お邪魔します』っての他人行儀だなって」


「他人行儀?」


 怜の言葉に桜彩はうんうんと頷く。


「うん。怜、前に言ってくれたでしょ? 私と家族みたいな関係になりたいって」


 風邪をひいて、陸翔と蕾華が見舞いに来てくれた時のことを思い出す。

 その時、桜彩に対して『朝起きたらおはようって言って、一緒にご飯を食べて、一緒にリビングで過ごして、一日の終わりにお休みって言って。桜彩とそんな家族みたいな毎日を続けたい』と言った。


(そうか、家族か。なら……)


 家族としての挨拶を考えた場合、『いらっしゃい』や『お邪魔します』ではおかしい。

 つまり桜彩が言いたいのは――そういう事だろう。

 桜彩の言葉に怜が表情を崩すと、桜彩もにっこりと笑いかけてくる。

 そして二人共少し照れながら、それでいて声に甘さを乗せて挨拶をやり直す。


「おかえり、桜彩」


「ただいま、怜」

ここで第二章は完結となります。

『お邪魔します』『いらっしゃい』で始まった第二章ですが、

無事に『おかえり』『ただいま』でまとめることが出来ました。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

当初の予定では、第一章の後に第二章中編、後編をもっと簡単に書いて

両片思い→両思いへと変化して全編のエピローグというプロットでした。

しかし第一章を書いている時に、もっと書きたいストーリーが浮かび上がってきたので

当初の予定を変更してエピソードを追加しました。

その後当初のプロットから外れたこともあり、

それに加えて再び描きたいストーリーも思い浮かんできた為に第三章へと突入することになります。

(もう書き溜めていない為に更新が不定期になるかもしれませんが)


出来れば感想等頂けたら嬉しいです(仲良くなっていく展開が遅いとかでも構いません)。

また、面白かった、続きが読みたい等と思っていただけたら

ブックマークや評価をしてくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱこの2人激甘だなぁ。 最近こういう話にハマってるので楽しませていただいてます。 [気になる点] なろう版もカクヨム版もあんまり評価されてないんだよなぁ。 甘い話好きな人にはハマりそう…
感想一覧
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