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【最終章:アフターストーリー(社会人編)】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第十章前編 アフターストーリー(冬:クリスマス)

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第488話 クリスマスの終わり

「ありがとうございました」


 リュミエールの閉店時刻を数分過ぎ、最後の客が店を後にする。

 アンティークベルの音が響き扉が閉まると、そこで皆が大きく息を吐いた。


「ああーっ、終わったああああああっ!」


「つっかれましたよーっ!」


「凄かったねえ」


「もう無理……」


 これでクリスマスイブとクリスマスという、洋菓子店にとって一年の中でも群を抜いて忙しい二日間を無事に終えることができた。

 他の日とは比べ物にならないくらいの客の入り。

 それを何とか捌き切った後、パティシエ達も椅子に座ったり作業台に手をついたりして疲労感が現れる。

 当然怜と桜彩も例外ではない。


「疲れたーっ!」


「うん……。もう手がパンパンになっちゃった……」


 昨日からずっとチョコプレートに絵を描き続けていた桜彩が、怜に見せるように手を広げる。

 怜はその手を取って、ゆっくりとマッサージしていく。


「あ……。気持ち良い~……。ありがと~……」


 目をトロンとさせ、幸せそうな表情で桜彩はマッサージを受け入れる。

 普段繋いでいる桜彩の手だが、たまにこうしていつもとは違う触れ方をするのもなんだか心地良い。


「怜もさやっちもお疲れ」


「頑張ったよねー」


「あ、二人もお疲れ様」


「やっと終わったなあ」


 レジを担当していた陸翔と蕾華も中へとやって来て、怜達とお互いをねぎらい合う。


「ほらほら。この後は打ち上げがあるんだから、みんな早くね」


 望の声に厨房内の皆が重い腰を上げ、イートインスペースへと移動を始める。

 とはいえクリスマスが無事に終わったからか、疲労はあれど皆の表情は穏やかで、なんだかやり切った充実感が浮かんでいる。

 しばらくするとデリバリーが届いたので、それをイートインスペースへと広げ、即席のパーティー会場が完成する。

 グラスに飲み物が注がれ、光がごほん、と咳払い。


「えー、まずみんな、ありがとう。皆のおかげで無事にクリスマスを終えることがでた。忙しい中でも手を抜かず、クオリティを落とさずにやり切ってくれて、本当にありがとう。明日は休みなので、ゆっくりと楽しんでほしい。乾杯!」


 光がグラスを掲げると、皆もグラスを掲げ、触れ合う音が店内に響き渡る。


「かんぱーい!」


「メリークリスマース!」


 店内に皆の声が響き渡る。

 怜はテーブルに並べられたピザを一切れ取り食べる。

 隣では桜彩がチリソースの掛かったポテトをフォークで口へと運んでいる。


「ん……、美味しい」


「うん。やっぱり充実してるからかな?」


 美味しそうにポテトを食べながら微笑む桜彩。


「ふうーっ。コーンスープ、美味しーっ!」


「チキンも美味え!」


 蕾華と陸翔も食事に舌鼓を打っている。

 そんな四人の下に、何人かのスタッフがやって来る。


「みんなありがとうな。学生なのにクリスマス頑張ってくれて」


「うんうん。レジ入ってくれて助かったよ。その分厨房に人を割けたし」


「怜君も凄い手際よかったしね。本職顔負けで」


「桜彩ちゃんも初めてのクリスマスだけど、凄く頑張ってくれたよね」


「うん! まだバイト始めて少ししか経ってないのに」


 等と、皆が口々にねぎらってくれる。

 褒められすぎて少々むず痒いものもあるが、感謝されるのは嬉しい。

 しばらくすると望もグラスを持って四人の前に現れた。


「みんな、お疲れ様。本当にありがとうね」


 そう言って差し出されたグラスに、怜達もグラスを合わせて軽く乾杯。

 オレンジジュースの酸味が喉に染み渡る。

 そんな怜に、望はニヤニヤと笑いながら


「それで怜君。昨日はどうだったの?」


 と聞いてきた。

 隣で桜彩がドキリとした表情を浮かべる。

 幸いなことに、他の者には気付かれてはいないようだが。

 とはいえ望の質問の意図は、昨日の夜に怜の部屋で行われたことではなく、単にクリスマスデートについて聞きたいのだろう。


「……植物園に行きましたよ」


「植物園に!? どんな感じだったの!?」


 やはりというべきか、早速望が食いついてくる。

 これはもう話すまでは離してくれないだろう。


「どんな感じと言われても……、まあ、クリスマスシーズンの植物の特集とか、巨大なツリーとか」


「ふんふん。それで、桜彩ちゃんとどんな感じでデートしたの?」


 望が目を輝かせながら聞いてくる。

 助けを求めて周囲を見渡すと、何人かのスタッフが興味深そうに聞き耳を立てていた。

 陸翔と蕾華も助ける気はないらしい。


「どんな感じと言われても。今言った通り、植物とかライトアップされたツリーを見たりとか」


「ふうん~……」


 望の目が細くなり、ニヤニヤが一段階上がったように感じる。


「でさ。ライトアップされた巨大ツリーの前で、二人で写真撮ったりとかは?」


「ま、まあ撮りましたけど……」


「へーっ! 見せて見せて!」


「まあ、良いですけど……」


 そう言ってスマホ(後でケーキの写真を撮ろうと思い持って来ていた)を取り出して画像を見せる。

 望の他にも何人かが覗き込んできて、ニヤニヤとした目で怜と桜彩の方を見てくる。

 当然その中には陸翔と蕾華も混じっているのだが。


「あ、ねえこの猫のマフラー可愛い! サーヤ、これって……?」


「う、うん……。怜からの、プレゼント……」


「ってことは手作り!?」


「は、はい……」


 蕾華と望の質問に桜彩は恥ずかしそうに答える。


「そっかー。さすがれーくん。で、サーヤかられーくんへのプレゼントは?」


「それはこれ」


 そう言って怜は別の写真、桜彩からのプレゼントであるテーブルクロスの写真を見せる。


「おっ、これバスカー達か?」


「わあっ! こっちも可愛い!」


「うん。バスカーちゃんとクッキーちゃんとケットちゃんを描いたんだ」


「最高だな。普段の食卓がより賑やかになる」


 実際に今日もそのテーブルクロスの上で食事をしたし、その時に見たバスカー達のイラストで心がほんわりと和んだ。


「つーかさ、二人の方はどうだったんだ?」


 当然ながら陸翔と蕾華も、昨日はデートをしている。

 これ以上詮索されるのも何なので、そちらの方へと話を振る。


「おう。オレ達は――」


 そして話は陸翔と蕾華の方へと移っていく。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 テーブルの上から食べ物がある程度無くなると、光と晴臣がケーキを抱えてやってきた。


「はい。クリスマスケーキだ」


 それを見ると、ピザやチキンを食べた後だと言うのに、更に食欲が湧いてくる。

 昨日食べたディナーはとても美味しく、ケチの付け所などはまるでなかったのだが、とはいえリュミエールのクリスマスケーキというのは絶品であることに間違いはない。

 アルバイト中に目に焼き付くほど見たそれが切り分けられ、皆に配られる。


「これ、食べてみたかったんだよね!」


 切り分けられたブッシュドノエルの載った皿を片手に持ちながら、興奮したように目を輝かせる桜彩。

 そんな桜彩に、怜は小さくケーキをカットし、フォークに刺して差し出す。


「はい、あーん」


「あーん」


 桜彩は幸せそうにケーキを頬張る。


「はい、怜もお返し。あーん」


「あーん」


 桜彩から差し出されたケーキを一口。

 濃い目のチョコと、軽い甘さのクリームが口の中で溶け合っていく。

 まさに最高のクリスマスケーキだ。


「ふふっ、美味しいよね」


「ああ。美味しいな」


 桜彩と共に笑い合いながら、更に一口。

 こうして今年のクリスマスが終わりを告げていく。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 当然ながら、食べ終えたところで皆からすさまじいまでのからかいを受けることとなったのだが。

 今話にてクリスマス編は終了となります


 すみません、私用の為次回投稿は水曜日を予定しています

 今年の十二月、色々と予定が立て込んでおりまして何度か私用で投稿できない日がありましたが、ご了承ください

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