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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第九章前編 アフターストーリー(秋)

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第438話 夏休み明けの教室③ ~「俺達、付き合ってるから」~

「――それじゃあかいさーん!」


 瑠華の声で放課後が始まる。

 陸翔と蕾華は話があると呼ばれた為に、早々に席を外して廊下へと出て行った。

 教室内には始業式ということで授業はなく半日で終わる為、それぞれ羽を伸ばす相談や仲間内で昼食を食べに行こうという会話で溢れている。

 そんな中、怜と桜彩は緊張しながら二人で見つめ合い、決意を新たに頷き合う。


「ねえ、クーちゃん。本当に何があったの?」


 するとクラスメイトの女子が心配そうな表情で桜彩の元を訪れて問いかける。


「え、えっと……」


 自分達が恋人だということを隠すことはやめよう、そう決意したのだが、やはり告げるのは緊張するのか困ったような表情で怜を見て来る。

 怜も一度落ち着く為に深呼吸をする。


「ねえ、光瀬君と喧嘩でもした?」


「え……?」


「だって距離感凄い変じゃん」


「そうそう。なんか凄くよそよそしいっていうか……」


「どうしたのよ」


 他にも数名の女子が桜彩を心配するように問いかける。


「べ、別に喧嘩はしてませんけど……」


「ほんとー?」


 今度は疑うような表情で怜を見てくる。


「本当だって。俺と、渡良…………」


 そこまで言いかけて、怜は一度言葉を飲み込む。


「何? やっぱ喧嘩?」


「光瀬、クーちゃんになんかやったの?」


 疑い深そうな視線を送って来るクラスメイト。

 そんな彼女らに、怜は首を横に振る。


「本当だ。俺と……桜彩は、喧嘩なんてしてない」


 そう、怜ははっきりと口にした。

 それを聞いた女子達が驚いたような表情をする。

 それも当然だろう。

 こうして桜彩のことを名前で呼んだのは、皆の前では初めてなのだから。

 普段なら自然に呼べる桜彩の名前が、いざ大勢の前で声にするとなるとこれほど重いものになるとは思わなかった。

 教室中の空気が一瞬にして固まり、皆の視線が一斉に突き刺さる。


「はい。私と…………れ、怜は…………、け、喧嘩なんかしていません……」


 桜彩もたどたどしく、しかしはっきりと口にする。

 二人で向き合って深呼吸、そして頷き合い、皆の視線を正面から受け止めて口を開く。


「俺達、付き合ってるから」


「「「え…………?」」」


 それを聞いたクラスメイト達の口から言葉が漏れる。

 目の前の三人だけではなく少し離れたところからも驚いた声が聞こえて来た。

 他にも自分達の関係について気になっている者がいたのだろう。

 今や教室内がシン、と静まり返り、次の言葉を待っている。


「はい。私と怜は、八月の上旬から、その……交際して、います…………」


「「「ええっ…………!?」」」


 教室内に皆の驚愕の声が響く。

 まるで信じられないというように目を丸くするクラスメイト達。

 そんな視線を受けながらも怜と桜彩は顔を真っ赤にして、しかしそれでも俯くことなく正面を向く。

 この気持ちは決して恥じるべきものではないのだから――


「嘘でしょ!?」


「マジで!?」


「八月の頭から!?」


 驚きの声がクラス中を駆け巡る。

 そんな喧騒の中、怜はある意味当然だという感じでその反応を受け止める。


(まあ、当然だよな。夏休み前までは、ちょっと仲が良いってだけだったし)


 そう心の中で呟きながら、隣の桜彩を見る。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 周囲の反応に桜彩は顔を赤くしながらも、どこか達観とした感じでそれを受け入れる。


(そ、そうだよね……。夏休み前までは、私と怜は、そんなに仲の良い所は見せてなかったし)


 これまで必死に隠してきた二人の関係。

 陸翔や蕾華と共に行動することは多かったし、あの三人と一緒のボランティア部に所属はしている。

 とはいえ教室内では仲が悪いわけではなかったが、だからといってそこまでの仲の良さは見せていなかった。

 加えて異性人気のある怜にいきなり恋人ができたということで、そのような反応をされるのは当然だろう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 周囲の反応を桜彩と共に受け止める。

 ある意味予想通りの反応。

 自分達が恋人同士だというのはクラスメイトからすれば寝耳に水、普通に考えれば絶対に考えられないだろう。

 しかし、この気持ちは決して恥じるべきものではない。

 どのような反応であろうとも、胸を張って――


「八月の頭って、それまで付き合ってなかったの!?」


 クラスメイトからすれば寝耳に水、普通に考えれば絶対に考えられない――


「嘘でしょ!? とっくに付き合ってると思ってたんだけど!」


 クラスメイトからすれば寝耳に水――


「てゆーか、付き合ってないのにあんなに仲良かったの!?」


 クラスメイトからすれば――――――――


「「…………………………………………え!?」」


 予想外の言葉が耳に届き、怜と桜彩の口から驚きの声が漏れた。

 慌てて周囲を見回せば、何を言っているのかと呆れた様子や、気まずそうな感じの表情を浮かべるクラスメイト達。


「ど……どういうことだ……?」


「な、なんで……?」


 隣の桜彩も目を丸くして驚きながら、口から言葉を絞り出す。


「どういうこと、とか、なんで、とか言われてもね……」


 何と言って良いか分からず気まずそうに言葉を選ぶ田島。

 そこで奏が目の前にやって来て、苦笑しながら口を開く。


「つまりさ、クラスのみんなは、きょーかんとクーちゃんがとっくに恋人同士になってたって思ってたってこと」


 その言葉を引き継いだのは、これまで黙っていた奏だった。

 ケラケラと笑いながら、状況を説明してくれる。


「い、いやだからどういうことだよ……。説明になってねえよ」


「そ、そうですよ……。これまで私と怜は、少し仲の良い程度の友達って感じで――」


「いやだからさ、その演技、もうバレまくってるから」


「「ええっ!?」」


 今まで完璧に隠せていたと信じていた二人の関係。

 しかしそれが既にバレていたということは、いったい何故なのだろうか。

 疑問に答えるかの如く、クラスメイト達が口を開く。


「はーい。あたし、二人が一緒にスーパーで買い物してるの見たよー」


「俺は二人が一緒に帰ってるの見たぞ」


「七月の下旬に猫カフェから出てきたの見たよ」


「あ、夏休みの最初の方、ボラ部の四人でプール行ってたよね? 二人一緒にウォータースライダー滑ってるの見たよ」


「手を繋いでたこともあったな」


 これまでの怜と桜彩の行動を口にするクラスメイト達。

 どんどんと二人で一緒にいたのを見かけたシーンについて明かされる。

 確かに学内では関係を隠すように努力していたが、学外ではかなり気を抜いていた。

 よく考えればこのクラスメイト達とは学外で行動範囲が被っても全くおかしくはない。

 完全にそれを失念していた。


「つーかさ、教室でもなんかさりげなく意思疎通してるよな」


「そうそう。もう二人の空気って言うかさあ」


「うんうん。お互いに見つめ合って、笑ったりね」


「なっ!」


 学外だけではなかった。

 まさか学内でのちょっとしたやり取りまでバレているとは。


「つーわけでさ、もうとっくに二人とも付き合ってると思ってたってわけなんよね。だからさ、それまで付き合ってなかったってのがみんなにとって凄い意外ってこと」


「「えええええええええっ!!」」


 本日一番大声が、教室内に響き渡った。

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