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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第八章後編 二人の両親

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第423話 両家顔合わせ① ~対面した両家~

 お茶を飲みながら柔らかな空気で団欒。

 リビングに流れる穏やかな空気。

 そんな中、桜彩が少し緊張した面持ちで隣に座る怜を一度見上げてから、正面に座る宗也と若葉へと静かに体を向けた。


「……あの」


「どうしたの、桜彩ちゃん?」


 緊張の混じる声に、若葉がグラスを置いて微笑む。


「私の両親が、今、こちらに来ていまして」


 丁寧な口調で言葉を紡ぐ桜彩。


「私……怜には出会ってから本当にたくさん助けていただいて。両親がその話を聞いて、ぜひ一度、怜のご両親にもお礼を申し上げたいと……」


 言い終えたあと、桜彩はぺこりと頭を下げた。

 その姿に宗也と若葉はゆっくりと頷く。


「まぁ……。そうだったのね」


 若葉は頬をほころばせる。

 宗也もふむふむと頷いて、どこか微笑ましそうな視線を向ける。


「もちろん。そんな丁寧に言っていただいて、私達こそありがたいくらいだよ」


「ええ。それに怜もあなたにお世話になったのだから、私達こそお礼を伝えさせて下さい」


 怜も桜彩と出会ったことで、過去のトラウマを乗り越えることができた。

 それを宗也も若葉も充分に分かっている。


「ありがとうございます。両親と姉は今、隣の部屋にいますので。もしご都合がよければ、こちらにお招きしても……」


「ええ、ぜひお会いしたいわ」


「じゃあ、私達も玄関でお迎えしようか」


 皆で立ち上がって玄関へと向かう。

 怜も胸の奥がどこかそわそわしていた。

 桜彩の両親ときちんと向き合うこと――それが初めてではないとはいえ、今回は両家の顔合わせ的な意味合いもある。

 桜彩が一礼して玄関から出て行く。

 数分後、再び玄関のチャイムが鳴る。

 ドアを開けると、そこには桜彩と、そのすぐ後ろに三人が立っていた。


「こんにちは。突然、お邪魔して申し訳ありません。桜彩の父の渡良瀬空と申します」


 空が代表して言葉を紡ぎ、渡良瀬家の四人が頭を下げる。


「ようこそいらっしゃいました。どうぞ、上がってください」


 宗也も落ち着いた笑顔でそれに応える。

 第一印象は悪くなく、怜と桜彩はひとまず胸を撫で下ろし全員でリビングへと向かう。

 互いに微笑み合いながら四人を迎え入れた部屋の空気は、どこか優しかった。

 まだ『正式な紹介』に至ってはいないが、それを必要としないくらいの理解が漂っていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 普段食事をするテーブルと、その隣に移動させたソファテーブルを使ってお互いの家族が席に着く。

 人数が増えたことで少し窮屈にはなったが、部屋の雰囲気はむしろいっそう賑やかで、どこか温かみに満ちていた。

 まずは再度自己紹介。

 お互いの両親も美玖と葉月が友人同士だということは過去に聞いていた(実際に会ったことはない)為、その辺りについてもスムーズに進む。


「怜がいつもお世話になっております。今日はわざわざありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ」


 宗也の言葉に空が笑って答える。


「むしろうちの桜彩が、常日頃から怜君のお世話になっているようで……。こうして正式にご挨拶できて安心しました」


「それは……うちの息子が何か失礼をしていないか心配になりますね」


 若葉が冗談めかして返すと、舞がくすりと笑う。


「いえいえ。桜彩からの話を聞く限りでは、もう怜さんにおんぶにだっこといった形のようですので。うちの子が何かご迷惑をおかけしてないかと……。突然の一人暮らしということもあり、慣れていないものでして」


「わかります。最初は怜も失敗が多かったと聞きますから」


 怜本人は伝えていないのだが、おそらく陸翔と蕾華の両親によるネットワークによるものだろう。


「料理を初めとして何から何まで。怜さんには本当に感謝しております」


「いいえ。怜も桜彩さんには充分すぎるほどに助けていただいていると聞きました」


 まるで旧知の友人のように自然と笑い合いながら、両親四人はどんどん打ち解けていく。

 シスターズもその様子を穏やかに見守っていた。


「……大人って意外と早く仲良くなるよね」


「そうね。私達のことを知ってたってのも大きいのかも。でも本当に良かったわ」


 一方、怜と桜彩は隣に座りながらも言葉少なに見守っていた。


「良かったね、怜」


「ああ」


 視線を交して小さな笑みがこぼれた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 冷房によりよく冷えたリビングのテーブルに並んだ湯飲みから、香ばしいほうじ茶の香りが立ちのぼる。

 お互いの両親は、なんだかちょっとした親戚に賑わいのような様子を見せている。


「……それにしても、本当に落ち着いた雰囲気のお部屋ですね」


 室内を見回しながら、舞が柔らかい声でそう言った。

 視線の先には壁に飾られた動物のガーランド。


「ありがとうございます。もともとは味気ない部屋だったんですけど、桜彩と一緒に変えていきました」


 もともと千円という名前の大きな猫のぬいぐるみ(スペースの問題で今は寝室に片づけてある)や、掃除ロボの上に小さな猫のぬいぐるみを張り付けたりなどはしていたのだが、桜彩と共に過ごすようになってから飾りつけは大きく変わった。

 先日訪れた瑠華も、その光景に驚いていたことを思い出す。


「桜彩は、小さい頃から描いたり作ったりするのが好きで……。でもまさか、男子高校生の部屋をここまで可愛くするとは思いませんでした」


 舞がくすっと笑い、桜彩は少し頬を赤らめて怜の方を向く。


「そ、そんなに変じゃないよね……?」


「ああ。むしろ落ち着くし。っていうか、俺もこういうの好きだし」


 ぽつりと呟いた桜彩の言葉にうんと頷く。

 自分達を見る両親たちの暖かい視線を感じるが、あえてそこには触れることはしない。


「怜君は今も家庭科部に入ってるのですよね。桜彩の料理の腕前もぐんぐん上がっているようで」


「怜さんの作ったお菓子を頂きましたが、とても美味しかったです」


「あ、ありがとうございます」


 空と舞い、二人の称賛の言葉に顔を赤くしてしまう。


「昔からずっとなんですよ。小さい頃に料理をして、それから料理に興味を持ちまして」


「それは頼もしいですね。うちは二人共料理のりの字にも興味がなかったので……。桜彩の方は最近は少しずつ頑張ってるようですが」


「う……」


 舞がちらりと横を見ると、その視線に葉月は顔を逸らした。


「桜彩ちゃん、けっこう成長してますよ。先日バーベキューを行ったのですが、とても手際よかったですし」


「本当ですか?」


 美玖の言葉に桜彩の目がぱっと輝く。

 怜もそれに同意するように頷く。


「ああ。この前のたこ焼きパーティーの時だって、切り方も均一になってたしな。前にも言ったけど、基本的なところは問題ないと思うぞ」


「う、うん……。ありがとね……」


 そのやりとりに、空と舞は嬉しそうに目を細めた。

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― 新着の感想 ―
 親同士を紹介しあうのは、なんか……小っ恥ずかしい物が有りましたよね……
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