【番外編、及びカレンダー】第398話 その頃瑠華は――
カレンダーを投稿しようとしたのですが、文字数が足りなかった為、短いですが急遽番外編を書きました。
怜達が旅行の三日目を満喫しているその時、領峰学園の一室で瑠華は頭を抱えていた。
冷房の効いた教員室に座る瑠華の目の前には書類の山。
外からはセミの鳴き声や運動部の掛け声が響いてきて、それがまた瑠華の頭へと負担を増やす。
「くそっ! こんなに冷房が効いているのに、心は全然涼しくならない……!」
そう呟きながら分厚い書類の山に向き合うが、視線は窓の外に浮かぶ青い空へと何度も逸れてしまう。
煌めく夏の空、それがまた腹立たしい。
何故ならばこの絶好の海水浴日和の空の下で、妹達は今頃楽しく海水浴など旅行を楽しんでいるであろうから。
旅行に行くと蕾華に伝えられた際に、ボランティア部の顧問として付いて行こうと提案したのだが、保護者枠は既に居るからとあえなく却下された。
「みんな、楽しんでるんだろうなあーっ! あたしがこうして苦しんでるのにーっ!」
悔しさを込めた叫び声が教員室へと響き渡る。
ヴヴヴ
するとちょうどスマホが震えた。
差出人は、今考えていた相手であり妹の蕾華。
メッセージアプリを開いて、そこに表示されていた内容に目を向けると、そこには大量のメッセージと写真が映し出されていた。
『海だよー!』
『バーベキューおいしーっ!』
網の上で美味しそうな焼き色を付けた様々な食材。
見ているだけで口中によだれが溜まっていく。
他にも海で遊んでいる写真だったり休憩中の写真だったり。
キラキラしていて、生き生きとした笑顔が弾けていた。
それを見る瑠華の胸はざわつき、じわりと熱くなり、やがて切なさが込み上げてきた。
「あたしだけ、なんで……」
妹たちがこうして楽しんでいる中、何故自分は一人寂しく仕事などしていなければならないのだ。
同じ姉妹なのに不公平だろう。
そんな馬鹿なことを考えていると、また別の写真が届く。
そこには、蕾華と陸翔がお互いに食べさせ合っている仲睦まじいカップルの写真が映し出されていた。
「な、なんで……こんな写真を!」
いや、なんでではない。
間違いなく自分を煽る為だけに送ってきたのだろう。
怒りと嫉妬と寂しさが入り混じり、体が震える。
「むううううううううっ!! こんなの見せないでよ!」
机を拳で叩こうとした手を止めて、瑠華は自分に言い聞かせる。
「お、落ち着いて……! ま、まだ、れーくんは彼女がいないはず……!」
その言葉が唯一の心の支えだった。
「そうだよ、そうに違いない。あたしだけじゃないんだから!」
そう、恋人がいないのは自分だけではない。
あの優しい弟分なら、自分を差し置いて彼女を作ったりなどしないだろう。
そう呟いて、瑠華は再び書類の山へと向き直った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昨夜、その弟分についに彼女ができたことなど、夢にも思わずに。
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本編の投稿は月曜日を予定しています




