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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第七章後編 恋人初心者の二人

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第395話 ボール遊び(罰ゲームアリ)

次回投稿は月曜日を予定しています


次話以降は第七章のエピローグとなる予定です

「あっ!」


 桜彩が打ち上げたビーチボールが、かすかに風をはらんで明後日の方に飛んで行く。

 食後の運動と言うことで、四人はボール遊びへと移行していた。


「ドンマイドンマイ! ほら、次行くよーっ!」


 ボールを拾った蕾華が気にするな、というように笑いながら拾ったボールを打ち上げる。

 高く上がったボールは再び桜彩の方へと弧を描いて飛んでいく。


「いくよー、怜!」


 桜彩も今度は失敗せずに、両手でふわりとボールを放る。


「おっと!」


 怜はそれをタイミングよくレシーブする。

 ボールはふわりと弧を描き、陸翔の胸元へと届いた。


「ナイスパス! んじゃあ蕾華、いくぞ!」


「オッケー!」


 陸翔のパスを蕾華が両腕でしっかりとレシーブ。

 バチンと小気味よい音を立ててボールが跳ねて、波打ち際へと飛んでいく。


「怜っ!」


「任せろ! 桜彩っ!」


 怜は波を蹴ってボールに飛びつき、うまく打ち返す。

 足元では波がふわりと膝を濡らし、太陽の下で水しぶきがきらめく。


「ありがと! それっ!」


 怜が拾ったボールをふわりと打ち上げる桜彩。

 その後もボールが時に波さらわれかけたり、風に流されたりしながらも四人はラリーを続けていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「サーヤ、結構上手いじゃん!」


 長く続いたラリーで喉が渇いたので、四人で水分補給を行う。

 その際に蕾華が笑いながら言うと、桜彩が頬をほころばせた。

 三人ほどではないとはいえ運動神経が良い桜彩は、早くもこの遊びに順応していた。


「こうやってるとさ、ゴールデンウィークの時のバドミントンを思い出すよね」


「そういえばそうだな。あの時もこうやって四人でラリー繋げてたな」


「うんうん」

「よしっ! 次はもっと競技っぽくやってみようぜ!」


 ペットボトルを置いて陸翔がにやりと笑う。


「え? 競技って?」


「そりゃあもちろん、ボールを落としたやつが負けってことだろ」


「あ、それ賛成! 途中で落としたら罰ゲームね!」


 陸翔の提案に蕾華もノリノリで賛同する。


「なにその急なルール設定!」


「ば、罰ゲームって……」


 一方で怜と桜彩は二人の提案に困惑してしまう。

 いや、怜としては特に問題はなく、昨年まで三人で遊ぶ時は似たようなことが幾度もあったのだが。


「ほら、やるからにはやっぱ罰ゲームがあった方が盛り上がるでしょ!?」


「お題は『全力で誰かの良い所を言う』ってことで!」


「えっ、ちょ……」


 桜彩が戸惑いを隠せないでいると、蕾華もうんうんと頷く。


「さすがりっくん! アタシはそれ賛成!」


「だろ!? ほら、二人共それで良いよな」


「ま、まあ……そのくらいなら…………」


 罰ゲームと銘打っているが、特に嫌ということではない。

 その程度であればちょっとしたスパイスにもなって楽しめるだろう。

 ただし桜彩がどう思うのか。

 そう思って桜彩の方を向くと、思ったのと違い桜彩はニコニコと笑いながらその提案を肯定する。


「うん。面白そうかも」


「桜彩……。それ、本気で言ってる?」


「うん、だって……言われたら嬉しいもん」


 顔を赤らめておずおずと告げられる。

 怜は思わず視線を逸らした。

 照れくさい、でも心の中はほんのりと温かい。


「よーし、じゃあスタートだ!」


 陸翔の掛け声でゲームが始まる。

 一回、二回とボールは順調に回っていく。

 転ばないように足元に気をつけつつ、時には軽くジャンプをしてパスを受け、返していく。

 その内に、桜彩がやや高く浮いたボールを受け損ねかけてバランスを崩した。

 何とかボールを怜の方に打ち返すことはできたのだが、そのまま転びかけてしまう。


「桜彩っ、大丈夫っ!?」


 打ち上げられたボールなど一切気にすることなく怜はとっさに駆け寄って、転びそうになった桜彩の腕を支えた。

 当然ながら自然と距離が縮まり、顔が近くなる。


「……ありがと」


「ううん」


 時間が止まったような錯覚。

 波音だけが耳に響き、自分たち以外はここには存在していないかのように――


「おーい、お二人さーん。今ゲーム中ですよー?」


 陸翔の茶化す声に、二人はハッとして距離をとる。


「はいれーくんアウトーッ!」


 振り向けばボールは砂浜へと落ちていた。


「ちょ、今のはカウント外だろ!」


 怜が慌てて抗議するが、親友二人はニヤニヤとした笑みを向けたまま


「いやいや、さやっちはちゃんと怜の方にボールを打ち返してたかなー」


「そうそう。ボールのこと忘れてしっかりラブラブモードに突入してたからアウトでしょー」


 とからかってくる。


「ら、ラブラブモードって……」


「う、うう……」


 つい二人だけの時間に入ってしまったことを指摘され、恥ずかしさから二人で俯いてしまう。


「ねー、サーヤ。あれは完全に『落とし』だよね?」


 と蕾華はニヤニヤしながら桜彩へと問いかける。


「……う、うん。多分、そうかも……?」


 頬を染めた桜彩が困惑しながらも頷く。


「え……? ちょ、ちょっとそれは酷くないか……?」


 桜彩を助けようと頑張ったのに、罰ゲームを肯定されるのはないだろう。

 そう抗議するが、桜彩は顔を赤くしたまま


「だ……だって、怜に私の良い所、言ってほしいんだもん…………」


 そう小さな声で呟いた。


「う…………」


 そう言われては断ることなどできはしない。

 甘んじて罰ゲームを受け入れる他ないではないか。


「あ、怜。言っとくけどな、罰ゲームの内容は『誰か』の良い所を言うってことだからな」


「りっくんの言う通りだよ、れーくん。別にアタシやりっくんの良い所でも良いんだからね~っ」


「あ…………」


 ニヤニヤとしながらの親友の指摘に桜彩はたった今気が付いたというように驚いて口元を手で押さえる。

 そして不安そうな目を怜に向けてくる。


「あ、あの、怜……」


 小動物のように不安そうな目で桜彩が見つめてくる。


「ちゃ、ちゃんと桜彩の良い所を言うから……」


「う、うん……。ありがと……」


 桜彩を安心させるようにそう言うと、嬉しそうに桜彩がはにかむ。


「じゃー、れーくん。お題、よろしく」


「分かった……」


 怜は少しだけ深呼吸してから、桜彩の方へと向き直る。

 早く行ってくれと期待に満ちた笑顔。


「今みたいな笑顔が好き。ドキッとするけど、でもなんか安心する」


「――っ!」


 思わぬ真面目な言葉に、桜彩はきょとんとして、それから顔を真っ赤にして俯いた。


「れ、怜……。それ……ずるいよ……」


「ず、ずるくなんかないぞ、ルールだし」


「う……うぅーっ!」


 すると陸翔が笑いながら背中を叩いてくる。


「なあ怜。罰ゲームの内容は『誰かの良い所』を言うんであって、好きな所を言うってことじゃないからな」


「だよねー。まあ、アタシ達としてはそれで満足なんだけど……」


「あ…………」


 親友二人の言葉に、確かにそうだったとやっと気が付く。


「そっかそっか。れーくんはサーヤのそう言うとこが好きなんだねー」


「ひゅーっ!」


「う…………」


「うぅーっ……!」


 その後もボール遊びは続き、海辺にはいつまでも笑い声が響き渡っていた。

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