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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章後編 恋人初心者の二人

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第393話 スイカ割り① ~従来とは違うスイカ割り~

 焼きそばを食べ終え辺りを片付けるとバーベキュースペースが広く感じる。

 潮風と炭火の香りが残る中、そこに準備してあったレジャーシートを広げていく。


「それじゃあデザート行くわよ!」


「やっぱり最後はこれよね!」


 シスターズが次に取り出したのは丸々とした大きなスイカ。

 それをレジャーシートの上にドン、と置く。

 当然ここから始まるのはスイカ割り。


「スイカ割り、初めてかも……楽しみ!」


「それじゃあ桜彩、やってみる? スイカ割り」


 葉月が尋ねると、桜彩はぱあっと顔を輝かせた。


「うん! でも……、ちゃんと割れるかな」


「あ、だったられーくんがサポートしてあげたら?」


 蕾華の言葉に怜と桜彩が『え?』となる。


「サポートって言ってもな……。声で指示する以上のことはできないぞ」


 スイカ割りとは目隠しされた人間に周囲の者が指示を出し、スイカの所まで誘導する。

 そこで目隠し状態でスイカを割ることができれば成功。

 スイカ割りとはそういうゲームだ。

 指示も何もないだろう。

 そう伝えると、蕾華はニヤリと笑う。


「いやいや、指示はアタシ達が出すからさ。れーくんはサーヤの後ろに回って動きをサポートしてあげて」


「「え?」」


 木刀を持った桜彩と共に首を傾げる。


「そ、それってどういうこと……?」


「だからさ、れーくんがサーヤの後ろから、サーヤが変な方に行こうとしたら直してあげたりするの。こんな風に」


 そう言って蕾華は木刀を持つ桜彩を後ろから抱きしめるようにする。


「あら、それは良いアイデアね」


「怜、桜彩ちゃんをフォローしてあげなさい」


 シスターズも蕾華の提案にうんうんと頷く。


「す、スイカ割りって、そういうもんじゃないだろ……?」


「別にそんなのはどーでもいいだろ。ほら怜。早くさやっちのフォローしてあげろって」


 そう言って陸翔がどん、と桜彩の方へと押してくる。

 戸惑いながら桜彩と目配せをして


「そ、それじゃあ桜彩。良いか……?」


「う、うん……。怜、お願い……」


 蕾華の代わりに、今度は怜が桜彩を後ろから抱きしめるような形となる。

 桜彩の柔らかさや体温、息遣いが伝わってきてドキリとしてしまう。

 桜彩を抱きしめてゲームをした時や、ウォータースライダーの時のことを思い出してしまう。


「怜……」


「大丈夫。俺が全力でサポートするから」


 気持ちを切り替え桜彩の手に自分の手を重ねてにこりと笑う。

 その自然なスキンシップに桜彩は目を丸くしてほんのりと頬を染めた。


「もう……」


「恋人だろ?」


「うん……。恋人、だよね」


 桜彩が嬉しそうにぽつりと呟く。

 昨日から何度も言って、何度も言われた恋人という言葉。

 まだ慣れない、けれど心地よいドキドキに包まれる


「うん……じゃあ、お願いね。……えへへ、ドキドキするよ」


「スイカ割りデビューだもんな」


「うん、それもそうなんだけどね……。背中が怜に触れてるからさ」


 不意打ちの言葉に怜はは一瞬だけ無言になった。


「……それは俺の台詞だよ」


「ふふっ。怜もなんだ」


 二人で見つめ合ってクスリと笑い合う。


「ちょっとーっ! 目的はスイカ割りなんですけどー」


「早く始めろってー」


「いつまでそうしてるの。日が暮れるわよ」


「ほらほら。いちゃつくのは後にしなさい」


 ニヤニヤとしながらからかってくる親友達とシスターズ。

 慌てて顔をバッと逸らす。


「じゃあ、桜彩。目隠しするよ」


「うん。お願い」


 怜はそう言って、桜彩の頭の後ろで目隠しを結び始める。

 すっと指が髪を避け、ふわっと甘い香りが鼻先をかすめる。

 恋人同士になる前からもう何回も同じように髪に触れたことがあるが、それでも恥ずかしく、そして心地良い

 桜彩も思わず小さく身じろぎした。


「怜、くすぐったいよ……」


 囁くような声に、怜の心臓が跳ねる。


「我慢してくれ。ずれたらスイカ割りにならないから」


 結び目を軽く確認して、怜の指が今度は肩に触れる。


「木刀、ちゃんと持てるか?」


「うん……。これで良い……?」


 桜彩が頷くと、後ろからすっと腕が伸ばし、その手を包むように重ねる。


「こうやって握る。下手に力入れると、弾かれるから。柔らかく……でもしっかり」


 木刀を握る桜彩の手を包んだままコツを教える。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんな二人を見ながら、蕾華は隣に立つ陸翔へと問いかける。


「ねえりっくん」


「どうした?」


「なんだかさ、こうして見てると付き合う前とあんま変わんないよね」


「そうだな。まあずっと『どうして付き合ってない?』ってレベルだったし」


 怜と桜彩の関係に初めて気が付いた四月。

 その時からずっと、そこらの恋人よりも恋人らしいことをしていた二人。

 今更恋人になったところで、大して違いはないのかもしれない。

 現に今も自分達の煽りに照れながらスキンシップをとっている所など、それこそずっとそうだった。

 いや、まあ恋人という言葉に意識したり、キスをしたりとステップアップはしているのだが、とはいえこうして見ると依然と変わらない所も多い。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 目隠しをされた桜彩。

 完全に視界が閉ざされた為、目から入ってくる情報は何もない。

 しかし背中にはしっかりと怜の存在を感じる。


「ねえ、怜……」


「ん?」


「スイカ割りって……こんなに、くっつくイベントだったっけ……?」


 少なくとも自分の知っているスイカ割りとは違う。

 本来であれば、このようなイベントではなかったはずだ。


「桜彩が可愛いから、特別にくっついてるだけ」


 後ろの怜から予想外の言葉が返って来て、心臓がドクンと揺れる。


「……っ! それ、反則だよ……」


 顔が熱くなるのをどうしても止められない。

 周りが見えないアイマスクの下で、表情が緩んでいるのが自分でも分かる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「こういうとこは違うんだよね」


 そんなやり取りを見ながら蕾華は先ほどの自分の言葉を考える。


「だよな。前はこういうとこ意識しないでいちゃついてたけど、今は恋人だって意識していちゃついてるし」


「まあ、やってることはあんま変わってないけどね」


 そんな親友達の姿に、蕾華と陸翔は思わず笑い合ってしまった。

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