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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第七章後編 恋人初心者の二人

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第392話 バーベキュー③ ~共同作業の焼きそば作り~

「それじゃあそろそろシメの方作るか」


 伊勢海老やアワビ、サザエなど高級食材をふんだんに使った海鮮バーベキューは本当に美味しかった。

 それらで胃袋を満たして一段落した後、怜はコテージに戻り冷蔵庫から麺を持って来る。

 シメの一品はこの海鮮バーベキューにふさわしい、海の幸を使った海鮮焼きそば。


「あ、怜。私も手伝って良い?」


 怜が準備を始めたところで、桜彩がトングを持って近づいてくる。

 その顔には、ほんのりと期待の色が滲んでいた。


「もちろん。それじゃあ一緒に作るか」


「うんっ!」


 一緒に料理すること自体が楽しいし嬉しい。

 幸せを感じながら、笑顔の桜彩が隣に立つ。


「これが、恋人になって初めて一緒に作る料理だな」


「うん。……記念すべき恋人同士の共同作業だよね」


「ああ。完成したら一緒に食べよう」


「ふふっ。一緒に食べさせ合おう、でしょ?」


 くすりといたずらっぽく笑う桜彩。

 確かにその通りだろう。


「おっ、次は焼きそばか?」


 するとコーラを手にした陸翔が反応してきた。


「ああ。シメの一品だ。楽しみにしてろよ」


「サンキュ。ほら」


「お、ありがと」


 陸翔が差し出してくれたコーラを受け取って一息に飲む。

 炭酸が喉で弾ける感触がたまらない。


「あ、れーくんとサーヤ、焼きそば作るの?」


「うんっ。焼きそばに海老とか入れるから楽しみにしててね」


「わあーっ、楽しみーっ!」


 ぎゅ、と桜彩に抱きつく蕾華。

 そんな蕾華に若干困りつつも、桜彩は差し出されたコーラを飲んでいく。


「それじゃあまずは具材の準備していくか。俺は海老の方をやっちゃうよ」


「分かった。キャベツは任せて」


 怜が海老の背ワタを取る横で、桜彩はキャベツをざく切りにしていく。

 最初に一緒に料理を作った時は包丁すら満足に持つことができなかったことを思い出す。

 それに比べれば、本当に見違えるほどに桜彩の腕前は成長した。

 キャベツを切り終えて、玉ねぎ、にんじん、ピーマンも切っていく。


「それじゃあ炒めていこう」


「あ、私にやらせて」


 せっかくなので炒める係は桜彩に任せることにする。

 鉄板の上にごま油を落とすと、じゅっと心地良い音が立ち上がる。

 その上に野菜を投入して炒めていくと、香ばしい香りが当たりに広がっていく。

 とはいえこれはフライパンではなく鉄板であり、いつもとは少し勝手が違うのか、少し戸惑うように炒めている。

 少々手元が危なっかしいので、桜彩の後ろに回ってそっと手を添える。


「あ……」


「こうやって、野菜の中心から混ぜて、焦げつかないように」


「う、うん……。でも、近いよ……。私の背中に怜が……ぴったり……」


「恋人だしな。これくらい、いいだろ?」


「……もう、ずるい……。そういうこと言うの禁止……」


「言わない方が良いのか?」


「むぅ……。言って…………」



 恥ずかしながら、それでいて嬉しそうに小さく抗議する桜彩の声が、逆に胸に柔らかく響く。

 後ろから抱きしめるような体勢となっているので桜彩の顔を見ることはできないが、それでも髪の間から見える耳は真っ赤になっている。


「おーい、イチャイチャしてないで早く焼きそば作ってー!」


 葉月が笑いながら声を掛けてくる。


「ちょっと怜、桜彩ちゃん、見てるこっちが恥ずかしくなるわよ。」


 からかうような美玖の声に、桜彩は顔を隠すようにして怜の背中に隠れる。

 一方蕾華と陸翔は並んで椅子に座り、片手にジュース、もう片手に持ったスマホを向けて、ににやにやとこちらを見ていた。


「ちょっとちょっとー、そこの新婚さーん。焦げちゃうよーっ!」


「なっ! し、新婚じゃないからっ!」


 蕾華の言葉に顔を真っ赤にして反論する桜彩。


「ね、ねえ……、怜……?」


「ま、まあな……。で、でもその……、しょ、将来はそうなりたいって…………」


「え、う、うん……。それは、私も……だよ…………」


 顔を真っ赤にして見つめ合う。


「いやだからほら、ちゃんと食材の方に注意しなさいっての」


 美玖の声に視線を戻すとキャベツが焦げかかっていた。

 慌てて料理の方へと意識を戻す。


「すまん。じゃ、次は海鮮投入だ」


 桜彩の手を取って、ボウルに入れておいた海老と蟹の身を鉄板に広げる。

 ジュウッという音とともに、香ばしい香りが一気に立ち上る。


「ふわあ……! 海老が、ぷりぷりしてる……!」


「良い具合に火が通ったら、麺と合わせる」


 少しすると火が通ったので麺を鉄板の上に投入する。


「ほら、集中な。麺を蒸すから、蓋するぞ」


「うんっ!」


 鉄板の上で蒸される間、ソースと出汁のタレを混ぜ合わせる。

 先ほどの海鮮焼きにも使ったカツオ節、醤油、みりん、にんにくの効いた香りが場を満たしていく。


「特製ダレ、入れちゃう?」


「オッケー。まんべんなく回しかけて」


「わ、うわっ……! 香ばしい香りが凄い! これ絶対美味しいよ!」


 タレを掛けた瞬間、より強くタレの香りが場を支配する。

 そのまま少し炒めてついに完成だ。


「ね、ねえ……。一口味見してもいい?」


「いいよ。それじゃあ……」 


 少し焦げ目のついた海老と少量の麺をトングでつまみ、そのまま桜彩の口元へ。


「あーん」


「……ん。あっつ……! でも、すっごく美味しい!」


「なら、こっちもくれ。あーん」


「うんっ! ……はい、あーん」


 二人で味見を楽しみ合う。


「もう、いい加減二人だけの世界入りすぎだから〜! そろそろアタシ達にも愛の味分けてくれないかな〜?」


「あ、愛の味って……! も、もう……! で、でも間違ってはいない、かな……?」


 蕾華のからかいに顔を真っ赤にしながらも、どことなく嬉しそうに桜彩が呟く。


「そうだな。恋人同士で作った……、あ、愛の味、だよな……」


「うん……。怜、ほんとに……好き、だよ。からかわれても、恥ずかしくても……一緒に作れて、嬉しい」


「俺も。こうして桜彩と一緒に作れて嬉しい。大好きだ」


「ふふ……嬉しい……」


 そんなことを言っていると、四人の呆れた声が飛んで来る。


「聞こえてるぞー!」


「うわー、もうこれだけでお腹いっぱいになりそう!」


「はあ……。我が弟ながら……」


「まさか桜彩がここまでになるとはねえ……」


 親友とシスターズが笑いながら口々にからかってくる。

 そんな四人に焼きそばを分け合って、六人で一緒に食べていく。


「桜彩とこうしてるのが、一番幸せだ」


「うん。私も幸せ」

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