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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第七章後編 恋人初心者の二人

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第385話 恋人同士になった報告を

「桜彩、好き」


「私も好き。ねえ怜、もっと言ってくれる?」


「好きだよ、桜彩」


「好きだよ、怜」


 二人で抱きしめ合い、これでもかというくらいに好きという気持ちを伝えあう。

 こうして相手に伝える度に、相手から伝えられるたびに嬉しさでいっぱいになる。


「ねえ、私達が恋人になったってこと、どうやって伝えようか?」


「うーん……。まあ、なんとなく察してくれるかもしれないけど、でも自分達の口からちゃんと伝えたいよな」


「うん。黙っててもすぐに気付かれちゃうかもしれないけど、でもちゃんと恋人になったって伝えたいな」


 昨日、恋人同士になったことについて、親友と姉二人に対しては話しておくべきだろう。

 なにしろこれまで色々と骨を折ってくれたのだ。

 その手助けがなかったら、未だに自分の気持ちを伝えることができなかったかもしれない。

 いや、もしかしたら、自分の気持ちに気付くことすらできなかったかも――


「それじゃあ、今日の朝食後に一緒に話すか」


「うん。……絶対にいじられるんだろうなあ」


「まあそれくらいは甘んじて受け入れるとするか」


「そうだね。私達が恋人同士になれたのも、あの四人のおかげだし」


「うん。それにさ、こうして今の内から心の準備をしておけば、多少からかわれたところでまあなんとかなるかもだし」


「そうだね。からかわれたとしてもそれを上手に躱して、逆に悔しがらせてあげようか」


「あ、それ賛成。蕾華とかもの凄く悔しがりそう」


 おそらく四人共自分と桜彩をからかって、その反応を見てニヤニヤとするのだろう。

 だが今の時点でそれが分かっていれば、心の準備をすることは可能だ。


「それじゃあそろそろ起きようか。顔を洗ってシャキっとして気持ちを切り替えよう」


「うん。それじゃあ……」


 ベッドから起き上がろうとして、それまで桜彩を見ていた怜の視線が丁度ドアの方を向く――と同時に怜の体は硬直してしまう。


「怜?」


 不審に思った桜彩が問いかけてくるが、視線はドアの方を向いたまま。

 怜の反応をおかしく思った桜彩もドアの方へと視線を向ける。

 ドアが開いていた。

 そしてそこから覗く良く見知った顔が二つ。


「お~はよ~っ!」


「れーくん、サーヤ! おっは~っ!」


 親友二人がニヤニヤとしながらこちらを眺めていた。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


 時が止まる。

 怜も桜彩も反応ができない。

 ベッドの上で掛け布団にくるまった状態で抱きしめ合ったまま固まってしまう。

 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

 一方で親友二人はニヤニヤとした視線をこちらに向けたまま。


「な…………」


「あ…………」


 徐々に働いていく頭が、今の状況を理解し始める。

 見られていた。

 その事実に気が付いて、先ほどまでとは別の意味で顔が真っ赤に染まっていく。


「り……陸翔……? 蕾華……?」


「ふ、二人共……? ど、どうして…………?」


「え? もうじきご飯だから、二人を起こしに来たんだけど」


「も、もうじきご飯って、まだ時間は……」


 六人で決めた朝食の時刻は六時半。

 それまでにはまだ充分すぎるほどに余裕があるはず。

 そう思ってスマホへと手を伸ばし、現在時刻を確認する。


「え…………?」


 そこに表示されていた現在時刻は六時十分。

 つまり、目が覚めてから既に四十分が経過している。

 桜彩と愛を囁き合っていただけなのに。

 この後、朝食までに身支度を整えたりすることを考えればそろそろ起きなければならない時刻だ。


「な、なんで……?」


「う、嘘……?」


 怜としては、もうこんなに時間が経っているとは思ってもみなかった。

 つまりそれほど、桜彩と一緒に過ごす時間が幸せ過ぎて、時が経つのを忘れていたということか。


「一応言っとくけど、ちゃんとノックしたからな」


「うんうん。それで全く反応なかったからまだ寝てるのかなって」


 つまり、桜彩と一緒に過ごす幸せからノックの音を聞き逃していたということ。


「ち、ちなみに何を聞いた、何を見た?」


「二人がお互いに名前を読んだり好きって言ったりしてるのを聞いた。その他いろいろ」


「れーくんとサーヤが一緒になって、抱きしめ合ってるとこを見た。その他いろいろ」


「ッ……!」


「う……うううううう~っっ!」


 それはつまり、もうカップルとしていちゃついている所を見られたということで。

 桜彩にいたっては恥ずかしさからか掛け布団を引き上げてその顔を隠してしまっている。


「ほらほら。れーくん、サーヤ。アタシ達に何か言うことがあるんじゃない?」


「そうそう。ほら早く言えって」


「う……」


「うぅ…………」


「ねーねーれーくん、サーヤ。いったいアタシがどうして悔しがるの~?」


 分かっているくせにニヤニヤと蕾華が聞いてくる。

 いや、これは先ほどの発言の意趣返しか。

 二人の言葉に、桜彩が掛け布団から少しだけ顔を出して怜の方を向く。


「さ、桜彩……」


「う、うん……」


 羞恥で顔を真っ赤に染めながらも、二人で視線を交わせて頷き合う。

 そしてベッドから降りて姿勢を正し、二人の方へと向き直る。


「陸翔、蕾華」


「ああ」


「うん」


 二人の目を見て名前を呼ぶと、二人共真剣な、それでいて優しい顔を向けてくれる。

 それを受けて改めて桜彩と視線を交わし頷き合う。


「俺と」「私と」


「桜彩は」「怜は」


「「恋人になりました」」


 新たな関係を親友二人へと告げる。


 その言葉に親友二人が驚くことはなかった。


「ああ」


「うん」


 予想通りというように深く頷いて


「おめでとーっ!!」


「おっめでと~っ!!」


 祝福の言葉と共に、怜と桜彩に向かって飛び込んで来た。


「うわっ!」


「きゃっ!」


 陸翔と蕾華に押し倒されるような形で、たった今まで寝ていたベッドへと再びダイブすることになってしまった。

 だがこの親友二人は怜と桜彩を、満面の目に涙を溜めたまま抱きしめてくる。


「良かったなあ! 本当に良かった!」


「れーくん、サーヤ! 本当におめでと!」


「ああ、ありがとな」


「ありがとう、二人共」


 力強く抱きしめられたまま感謝の言葉を述べる。

 そのまま少しの間、室内は祝福と感謝の言葉で溢れかえった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「それじゃあ、俺達は顔洗って来るよ」


 もうすぐ朝食の時間ということで、それまでに身支度は整えておかなければ。

 そう思ってベッドから立ち上がろうとしたのだが


「はいストップ」


 陸翔に止められた。


「どうしたんだ?」


「まあ待てって」


 ニヤニヤニヤニヤ

 いつの間にか親友二人の表情がニヤニヤとしたものへと戻っている。

 嫌な予感しかしない。


「まだ何かあるのか?」


「そりゃああるでしょ。れーくん、サーヤ。さっきアタシ達に気付く前に言ってたよね。『今の内から心の準備をしておけば、多少からかわれたところでまあなんとかなるかも』って」


 当然ながら、その辺りもこの二人の耳には届いていたということか。


「……っておい」


 親友二人の考えを理解した怜の背筋に冷や汗が走る。

 チラリと隣の桜彩の方を見ると、桜彩も顔を引きつらせていた。


「そんな準備、オレ達がさせるわけ、ねえよなあ」


「うんうん。そんな小賢しいことさせるわけないでしょ」


「いや、小賢しいって……」


 別にズルいことでもないと思うのだが。


「ってわけで、さあからかいタイムのスタートだ!」


「うんうん! ってなわけでさ、まずアタシ達と別れた後どうしたの? どんなシチュで告ったの? そもそもどっちから? 告白の言葉は? 返答は?」


 心の準備をする余裕もなく、二人から矢継ぎ早に質問が飛んでくる。


「さあ、照れながら答えろって!」


「うんうん! ほられーくん、サーヤ! 答えて答えて!」


「う……」


「うううううう~っ!」


 戸惑う怜と、ベッドの上の掛け布団を掴み再度自分の顔を隠す桜彩。


「こらこら。陸翔君も蕾華ちゃんも、今はそのくらいにしておきなさい。ご飯冷めちゃうわよ」


 それを助けてくれたのは、怜の実姉である美玖の声。

 弟思いのお姉様が助けに来てくれたということか。


「尋問するんなら、ちゃんとあたし達も参加させなさい」


「ええそうね。桜彩、怜。昨日の事、ちゃんと聞かせて貰うわよ」


 感謝した自分が馬鹿だったと怜は項垂れてしまう。

 当然ながら、昨日の怜と桜彩に何があったのかを聞き逃すシスターズではなかった。


「さあ怜、桜彩ちゃん。顔を洗って来て。どうせ顔を洗ったところで心の準備なんてできるわけないんだから。その後で何があったのかをちゃんと聞かせてね」


 もはや心を落ち着ける余裕などはない。

 この後に訪れている地獄の尋問タイムを想像し、洗面所へと足を向けた。

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