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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編② 恋の行方は――

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第381話 ☆♡星恋アンサンブル

「「あのさ――」」


 コテージの玄関へと辿り着いたところで桜彩の方を向くと、桜彩もこちらを向きながら同時に口を開く。


「「え?」」


 再び言葉がハモる。


「ど、どうしたんだ?」


「れ、怜こそどうしたの?」


 二人揃って慌ててしまう。


「…………」


「…………」


「そ、それじゃあさ、せーの、で同時に言わないか?」


「う、うん。ど、同時に言おっか。それじゃあせーのっ!」


 そして二人同時に口を開く。


「「もう少し、一緒にいたい」」


 お互い欲求を口に出しあう。

 奇しくも二人の口にした言葉は同じ言葉だった。

 いや、奇しくもというのはおかしい、この場合はむしろ必然か。


「ははっ、同じだったな」


「うん、同じだったね」


 二人でクスリと笑い合う。

 そして手を繋ぎ直してまま歩き出す。

 まだデートは終わらない。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、コテージ裏手の海辺へとやって来た。

 もう既に夜も遅く、空には星空が光っている。


「ははっ。さすがに誰もいないな」


「そうだね」


 事実上のプライベートビーチとなっているこの砂浜は、人の気配など一切ない。

 この海も、この空も、波の音も、この時だけは全て二人占め。

 時折吹く海風が火照った体を冷ましてくれる。

 というか、少しばかり肌寒さも感じてしまう。

 そんな中、身体の一部分、繋いだ掌からは幸せなぬくもりが感じられる。

 桜彩もそう思ってくれたのか、目が合うとふふっ、と笑い合う。

 そのまま上を眺めると満天の星空。


「あれが天の川だね」


 空を指差しながら桜彩が呟く。


「ああ。あれが天の川だな。一年に一度だけ、引き裂かれた織姫と彦星があの川を渡って会うことを許されてる」


「ふふっ。『神話の神々の恋物語』だね」


 初デートの時に観たプラネタリウムのプログラム『神話の神々の恋物語』を思い出す。


「あの時もさ、デートの最後にこうして星を見たよな」


「うん。こうやって手を繋ぎながら星を見たよね」


 今でこそ何度も繋いでいる二人の手。

 意識して繋ぎ始めたのはあの日からだ。


「あれが織姫。琴座の一等星、ベガ。そしてあれが彦星。鷲座の一等星、アルタイル」


 夜空に浮かぶ星を空いている方の手で指差しながら追っていく。


「更に白鳥座のデネブを線で繋いで夏の大三角になる」


「あっ、デネブって未来の北極星の一つだよね?」


「ああ。現在の北極星のポラリスからエライ、アルフィルク、アルデラミン、デネブって変わっていく」


「ふふっ。でも私にとっての北極星は今も変わらずに怜なんだけどね」


「俺の北極星も変わらずに桜彩のままだぞ」


 人を導く北極星。

 怜と桜彩は、お互いに導かれて今がある。


「そしてさ、二人で一緒に星座を作ったよね」


「ああ。あれがギョー座であれがエビフライ座」


「あれがギザギ座でピ座、そしてあれが猫座だね」


 二人で一緒に作った星座をなぞっていく。

 そして


「あれが桜彩座」


「あれが怜座」


 二か月が過ぎ多少の角度は変わったものの、お互いが作った星座はこうして今も隣同士で仲良く夜空に浮かんでいる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ドクン、と。

 あの時に大きな波が胸を打ったことを思い出す。

 それは怜にとって、桜彩にとってこれまでには感じたことのない未知の感覚。 

 しかし今なら良く分かる。

 その気持ちの名前は『恋』だったのだと。


「…………………………………………ははは」


「…………………………………………クスッ」


 あの時と同じように顔を合わせたまま思わず口から笑みが零れる。

 そしてまた揃って夜空を見上げる。

 頭上に広がる夜空は時間を忘れるほどに美しく。


「「あっ……!!」」


 天を翔る一瞬の煌めき。

 怜と桜彩が目で捉えた瞬間、静寂の闇へと消えていく。


「桜彩、今の見たよな!?」


「うんっ! 流れ星、だよね!」


 桜彩も興奮気味にうんうんと頷く。


「ああ。運が良かったな」


「私、初めて見たよ。あ、でも願い事を唱えるのを忘れちゃったな」


「俺もだよ。だけど願い事を三回唱えるのにはさすがに無理があったな」


「ふふっ、そうかもね」


 あまり残念ではなさそうにクスリと笑い合う。

 そう、そもそも今の二人にとって、一番の願い事は誰かに、何かに頼るのではなく自分自身の手で掴むべきものだから。

 願い事を叶えると言われている流れ星はもう消え去った後。

 しかしそれは確かに勇気という夢のかけらを二人へと届けて――

 一度繋いだ手を離し、身体の向きを変えて相手に対して正対する。


「桜彩」


「怜」


 お互い真っ直ぐに相手の、想い人の顔と見つめ合って口を開く。


「俺、桜彩のことが」


「私、怜のことが」


 ずっと抱えていた想いが溢れ出す。

 その想いをはっきりと自分の言葉に変えて、目の前の愛しい相手へと届ける。


「「好き」」


 ―――――――――――――――――


 辺りが静寂を支配する。

 先ほどまで響いていた花火の音も、風の音も、波の音も。

 その他一切の音が耳に届かない。

 それでも、相手の言葉だけは――

 たった二文字、されど二文字、それは確かに耳へと届く。

 自分の抱えていた想いを相手に伝えて、そして、相手の抱えていた想いを伝えられて。

 その言葉の意味を理解した二人の目から涙が零れ落ちる。

 自分の気持ちを伝えることができた、自分の気持ちが伝わった、そして――相手も同じ気持ちを伝えてくれた。

 相手の方へと足を踏み出し、両腕を相手の背中に回してぎゅっと引き寄せる。

 お互いの大切な、そして大好きな相手を胸に抱えて視線を合わせて――二人の距離が徐々に近づいていき


「「ん……………………」」


 二人の距離がゼロになる。

 胸の内が幸せで満たされて腕に力が込められる。

 一度唇を離し、抱き合ったまま見つめ合う。


「桜彩…………」


「怜…………」


 嬉し涙が止まらない。

 顔がぐしゃぐしゃになっているのが自分でも分かる。

 それでも、そんなことなどどうでも良いくらいの幸せを感じ、にっこりと笑い合って


「ありがと。俺のことを好きになってくれて」


「ありがとう。私のことを好きになってくれて」


 そしてもう一度二人の距離がゼロになる。

 再びのキスの後、再び想いを口にする。


「好きだよ、桜彩」


「私も好きだよ、怜」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ついに伝えられた自分の気持ち。

 天に輝く怜座と桜彩座はそれを祝福するかのごとく、二人を照らし続けていた。

【後書き】

 当初は第二章で完結する予定だった物語ですが、ようやく恋人同士になりました。

 約100話で完結するつもりが、恋心を自覚するまでに追加で200話、そして恋人同士になるまでに更に100話弱の追加となってしまいました。

 当初の完結予定より約一年半、恋心を自覚してから半年という長い期間となってしまいましたが、ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。


 まだ二人の物語は終わっておらず、途中で放置はせず完結まで書き続けるつもりですので、これからも宜しくお願い致します。


 よろしければ活動報告の方も読んで下さい。

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