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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編② 恋の行方は――

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第377話 バーベキュー② ~肉巻き登場~

 バーベキューを楽しんでいると、当然ながら食材は徐々に減っていく。

 何しろ六人全員がそこそこの健啖家であり、同年代に比べて食べるペースも早い。


「それじゃあ第二段行くか」


 そう言って怜はコテージの冷蔵庫の中から新たな食材を持って来る。


「あっ、それっ!」


 それを見て桜彩が目を輝かせた。

 バットの中の調味液に浸かっている薄切りの豚肉と、別のボウルに入っている数々の野菜、それにチーズを混ぜ込んだ小さな俵型のおにぎり。

 ここから導き出される結論は桜彩にとっては言うまでもないだろう。


「肉巻きだよね、それ!」


「ああ。昨日仕込んでおいた」


「やったっ! 楽しみーっ!」


 野菜やチーズ等を特製ダレに付け込んだ豚肉で巻いた怜お得意の一品。

 怜と桜彩の大好物でもある。


(ってか肉串よりも俺の作る肉巻きの方を楽しみにしてくれてるってのはな)


 普通に考えれば肉串の方が魅力は高そうだが、こうして自分の作った物を期待されるのは怜としても嬉しい。


「それじゃあ準備するか。そうだ、桜彩も手伝ってくれるか?」


「え……? うんっ!」


 怜の言葉に一瞬きょとんとした桜彩だがすぐに嬉しそうに頷いてくれる。


「それじゃあ何をすればいいの?」


「俺が中に入れる食材を切っていくから、それを巻いてくれるか?」


「うんっ! 任せて!」


 桜彩のボランティア部の歓迎会で行ったバーベキューの時は全て自宅で準備してきたが、今日はコテージの隣で行うということもあり野菜はまだ肉に巻かれていない。

 電子レンジで柔らかくされた野菜を、怜は細く切っていく。


「それじゃあ巻いちゃうね」


「ああ。崩れないようにぎゅっと巻いちゃってくれ」


「うんっ!」


 桜彩は使い捨ての手袋を着用し、怜の切った食材を肉で巻いていく。

 よほど待ちきれないのか巻いている最中も笑顔で『肉巻きっ! 肉巻きっ!』とオリジナルソングを小さな声で歌っている。

 それがとても可愛らしくて微笑ましい。


「ん? どうかした?」


 隣を向く怜の視線に気付いたのか、桜彩が手を止めて問いかけてくる。

 楽しそうに肉を巻いていく桜彩に見とれて手が止まっていたことに気付く。


「いや、気にしないでくれ」


「そお?」


「ああ。あとおにぎりの方も頼むぞ」


「うんっ!」


 おにぎりも同じように肉で包んで肉巻きおにぎりにしていく。


「さっすがれーくん! 手慣れてるね」


「さやっちもな」


 気が付けば蕾華と陸翔が怜と桜彩に向けてスマホを構えていた。


「何度も作ってるからな。俺も桜彩も肉巻きは大好きだし」


「うんっ。もう何回も食べたもんね。怜の肉巻き」


 くすりと笑う桜彩に照れくさくなってしまう。


「あれ、そんなに何回も作ってないんじゃないか?」


「ふふっ。私の方が食べた回数ちゃんと覚えてるんじゃない?」


 楽しそうに笑う桜彩に怜の手元が少しだけぎこちなくなってしまう。

 こうして笑いかけてくれることが、最近は本当に心に響く。


(『好き』って言えればなあ……)


 まだ、言えない。

 近い未来にちゃんと伝えたい、いや、伝える。

 それが『今』ではないのがやはりもどかしい。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 しばらくすると皿の上に大量の肉巻きが盛り付けられた。


「それじゃあ焼いていくか」


「うんっ! 楽しみだなあ!」


 肉巻きを網の上に置き焼いていくと、すぐに怜の特製ダレが熱されて少し焦げたような良い香りが辺りに立ち込めてくる。


「この香り大好き! 私、これだけでご飯食べられちゃうよ」


「そう言ってくれるのは嬉しいけどな」


 もちろん桜彩の言葉はそれはそれで嬉しいのだが、やはり本物を食べて欲しい。

 そうこうしている内に肉巻きも良い感じに仕上がる。


「あっ! 怜、そろそろ食べ頃じゃない?」


「そうだな。もういいかもな」


 良く焼けた肉巻きを箸で摘まんで


「ふーっ。はい、あーん」


「あーん……。はふっ! 熱いけど美味し~っ!」


 息で冷まして桜彩の口元へと差し出すと、当たり前のように桜彩は口を開けてそれを咥える。

 その肉巻きを噛みしめた桜彩が本当に嬉しそうに破顔する。


「やっぱりこれ大好き!」


「ありがと。それじゃあ俺も――」


「ふーっ。はい、あーんっ!」


 自分でも食べようとしたところで、それよりも早く桜彩が肉巻きを一つ取り、冷まして差し出してくれる。


「あーん……。うんっ! 美味しい!」


「でしょ!? 私、この怜の味好きだなあ」


 桜彩の言葉に照れくさくなって頬を掻いてしまう。

 怜としてはあくまでも自分の腕前は素人に毛が生えたような物だと思っているのだが、それをここまで褒められるのは流石に恥ずかしい。

 もちろんとても嬉しいのだが。


「本当に桜彩は肉巻きが好きだよなあ」


「うんっ! 私、これまで食べた何よりも怜の肉巻きが好きだから!」


「う…………」


 桜彩の実家は裕福であり、これまでにもいわゆる高級料理を食べてきたことは怜も知っている。

 そんな桜彩がそう言ったものよりも美味しいと言ってくれて、恥ずかしくて顔を背けてしまう。


(ヤバい……。嬉しいけど恥ずかしいってか……。それにやっぱり桜彩が可愛いし……)


 無邪気な笑顔を向けてくる桜彩が本当に魅力的だ。


「あははっ。怜、照れてる?」


「照れもするって」


「ふふっ。可愛いっ! でもね、本当だよ。私、怜の作った肉巻きが世界で一番好きな味だもんっ!」


「うぅ……」


 可愛いのはむしろ桜彩の方だ。

 とはいえその可愛さに何も言い返せなくなってしまう。


「あははっ。ねえ、怜。次の肉巻き食べさせてっ!」


「わ、分かった……。ふーっ、はい、あーん」


「あーんっ!」


 こうして一緒に隣で料理をして、食べさせ合って。

 それだけでもう幸せの極致とも言うべきなのかもしれない。

 だけど、今はもうそれ以上を求めてしまっている。

 誰よりも気持ちは近いけど、付き合ってはいない、恋人ではない。


(この関係、いつまでもこのままじゃ、きっといられないよな)


 でも、今この瞬間はまだ。

 隣にいる『好きな人』の喜ぶ顔を見ていたい。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ねえ、あれ平常運転?」


「平常運転ですよ」


「……そうなのね」


「そうっすね」


 またも呆れるようなシスターズに、この光景を普段から見ている蕾華と陸翔が呆れたように答える。


「まあ、あれもあれで見ているだけで楽しいんですけど」


「だからこそもどかしいって言うか……」


「そうね。まあでも本命はこの後だからね」


「ええそうね。とりあえず今はあの二人を眺めていましょうか」


 とりあえず自分達も肉串や肉巻きを食べながら、この付き合っていないバカップルを写真に収めていった。

 昼食編はここまでで、次話から新たなイベント編です。


【お詫び】

 第370話の後書きで、第371話から後編と書きましたが、中編②へと変更致します。

 理由としては、後編で『二人がついに――』までを書いて、その後第7章のエピローグを書こうと思っていたのですが、エピローグについてプロットを練っていた際に、『これ絶対にエピローグの長さで収まらないな』と思ったので、申し訳ありませんが、今書いている所を中編②とすることとしました。

 二人の関係が『ついに――』まで進むところに関しましては中編②にて間違いなく書きますので、そこまでが長くなるということではありません。


 以降も宜しくお願い致します。

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