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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編② 恋の行方は――

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第375話 カップルVS仮カップル

 なんだかんだで日焼け止めを塗り終えて、ついにコテージの裏にある砂浜へと足を運ぶ。

 事実上のプライベートビーチと化している為に砂浜は完全に貸し切り状態。

 入り江のようになっている為に波はほとんどなく穏やかだ。

 早速砂浜にパラソルを突き刺してレジャーシートを広げていく。

 これにて準備完了。

 後は海へと突撃するだけ。


「あたし達はここにいるから最初は四人で楽しんできなさい」


「ええ。それじゃあ私達はゆっくりとしましょう」


 そう言ってパラソルの下、ビーチチェアーに腰を下ろすシスターズ。

 一方で陸翔と蕾華は準備運動を終えると早速波打ち際へと駆け出していく。


「ひゃっほーっ!」


「えーいっ!!」


 勢いのまま海へのダイブを敢行する二人。

 水深はまださほど深くなっていない為に砂を巻き込みながら水しぶきを上げての入水だ。


「ぶはあっ!! ふーっ!」


「あはははははははっ! たっのしーいいいいい!!」


 水から上がった顔は眩しいくらいの笑顔。

 そのまま太もも程度の水深の所まで進んだ後にこちらの方を振り返る。


「おーいっ! 二人も早く来いよーっ!」


「ほらほらーっ! サーヤ、れーくん! はーやくーっ!!」


 大声を上げながら手招きする親友二人。

 それを見て怜と桜彩はお互いの方を向き合ってクスリと笑う。


「桜彩」


「うん」


 怜が手を差し出すと、嬉しそうに桜彩が自らの手を重ねてくれる。


「今行くよーっ!」


 桜彩と頷き合って、先ほどの二人と同じように一緒に海まで走ってダイブする。


 バシャーン!!


 海水が顔にかかり、お腹にざらざらとした砂の感触を感じる。

 しかしそれがとても気持ち良い。

 ゆっくりと体を起こして桜彩と向き合い、ずぶぬれになった顔を見せ合う。


「あははははっ」


「ふふっ」


 まだ海に入っただけなのだがとても楽しい。

 こんな時間がずっと続けばいい。

 そう思っていたのだが


 バシャッ


「わぷっ!」


「きゃっ!」


 思い切り顔に水を掛けられた。

 もちろん犯人は陸翔と蕾華。

 そちらの方を振り向くと、二人共楽しそうに笑っている。


「ほらほら! サーヤ、れーくん! もっといくよっ!」


「えっ!? ら、蕾華さん!? ……ひゃんっ!」


 混乱したままの怜と桜彩へと蕾華が再び水を掛けてくる。


「んなろっ、やり返すぞ、桜彩!」


「う、うんっ! 覚悟してね、蕾華さん!」


 当然ながら怜も桜彩もこのままやられてばかりではない。

 水を掬って蕾華目掛けて掛け返す。


「おっ、やるな、サーヤ!」


「こっちも忘れんなよ、蕾華!」


「お前もな、怜!」


 もちろん陸翔もただ見ているだけではない。

 こうして怜と桜彩対陸翔と蕾華というカップル同士での水掛け合戦が始まった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「本当に仲良いわねえ」


「そうね。あれで付き合ってないって言うんだから驚きだわ」


 ビーチパラソルの下、チェアに座って苦笑する美玖の言葉に葉月も同意する。

 怜と桜彩の関係については陸翔と蕾華を介して幾度となく聞いてはいたのだが、こうして見ると本当に驚きだ。

 最後に直接顔を合わせたゴールデンウィークの時点では、まだ二人共ぎこちなさというものが感じられた。

 それが今ではもうずっと一緒だったかのように仲が良い。


「でも、本当に怜には感謝しなきゃね。あの桜彩こうして大切な友人を二人も作ることが出来たのだから」


 そう言う葉月の視線の先には桜彩と水を掛け合っている陸翔と蕾華。

 友達に裏切られた桜彩に、怜だけではなくあんなに素敵な親友ができた。

 陸翔と蕾華本人が素晴らしい人物であるのは確かだが、怜がいなければこのような関係にまでなることはなかっただろう。


「本当に良い友人よね」


「ええ。陸翔君と蕾華ちゃん、あの二人がいなければ怜はどうなっていたか分からないし」


 かつて弟を救ってくれたことに美玖も感慨深げに呟く。

 葉月も美玖も充分すぎるほどにあの二人には感謝している。

 だからこそ、姉弟姉妹水入らずではなくこうして一緒に旅行に誘ったりもしたのだ。

 いや、もちろん怜と桜彩をくっつける為の手助けをして欲しいという理由もあるのだが、それと同時にあの恩人二人にも充分に楽しんで欲しい。

 その考えはやはり大成功のようだ。

 シスターズの視線の先では四人が楽しそうに遊んでいる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「うわっ! サーヤ、よくも!」


「ら、蕾華さんが先にやったんだよね!?」


 砂浜に響く水音と叫び声、そして笑い声。

 先ほどまで穏やかだった海の一角は、今まさに戦場と化している。


「お返しだ! えいっ!」


「きゃあっ! ちょ、ちょっとストップ! それ反則!」


 蕾華が太ももまで漬かった足を思い切り上へと蹴り上げると、先ほどまでのように手で掬った水を掛け合っている時よりも遥かに強い勢いで桜彩に水が掛かる。


「っておい蕾華! それは……んんっ!?」


 そちらの方に気を取られた怜の足下にすうっと忍び寄った陸翔。


「せえのっ!」


 そのまま怜の体を強引に持ち上げ、海へと投げ入れる。


「ぶふっ!」


 そこそこ水深がある為(もちろん陸翔もそれを理解して投げているのだが)危険はないものの、予想外の攻撃だ。


「イエーイッ!」


「イェーッ!!」


 海水から顔を起こすと、怜と桜彩の二人に有効な攻撃を浴びせた陸翔と蕾華は笑ってハイタッチを交わしていた。

 そしてニヤリとして怜と桜彩の方を向く。


「怜もさやっちもまだまだだな! オレと蕾華の愛の強さを思い知ったか!」


「なんたってこっちはカップルだからね! 二人には負けないよーっ!」


「む……!」


「むぅーっ!!」


 そう言われて怜と桜彩は不満げな表情で頬を膨らませる。

 そんな怜と桜彩に、親友二人は更にニヤッと笑って


「どうした? まだやるのか?」


「諦めなって! れーくんとサーヤの仮カップルが、アタシとりっくんの本物のカップルに勝てるわけないじゃん!」


 とさらに煽って来る。


「…………桜彩」


「うんっ!」


 桜彩の方を向くと、不満げに頬を膨らませた桜彩もコクリと頷き返してくれる。

 当然このまま終わるつもりはない。


「上等だ! 俺と桜彩の絆の強さを舐めるなよ!」


「うんっ! 絶対に負けないんだから!」


「言ってろ! 返り討ちだ!」


「あははっ! アタシとりっくんに挑んでくるなんて良いどきょう……わあっ!」


 下手な口上を述べているその隙を縫って、桜彩は蕾華に水を浴びせる。

 完全に油断していた蕾華はその攻撃をもろに喰らってたたらを踏む。


「ちょ、ちょっと! そのタイミングはズルい! ってわぷっ! た、タイム! 口に水入っ……ぶっ!」


「油断大敵! そんな言い訳聞くわけないでしょ!」


 先ほどやられたのをよほど根に持っているのか桜彩は蕾華へと攻撃を続ける。


「ふん、甘いな! だったらオレが蕾華の盾に……ってオイッ!」


 彼氏として桜彩の攻撃から蕾華を守ろうとした陸翔だが、それより早く怜は陸翔の首の後ろから右腕を回して抱え込み、そのまま後方へと倒れ込む。

 プロレス技でいうところのDDTだ(もちろん倒れ込むのは水なので直接的なダメージはないが)。

 大きな水しぶきが上がり、水中で怜は陸翔を放す。


「ぶはっ! っておい! さすがにそれは……うおっ!」


 水面から顔を出す陸翔へと怜は更に水を掛けていく。


「さっきはよくもやってくれたなあっ!」


「ちょ、待った! 口に砂入った……ぶおっ!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 仲が良いとはいえ真剣勝負。

 情け容赦などせずに水を掛け合う四人。


「本当に仲良いわねえ」


「ええ。本当にねえ」


 そんな四人を楽しそうに見守るシスターズ。

 期待していたイチャイチャというよりは仲良くだが、それでも本当に楽しそうにしているのは間違いない(いや、怜と桜彩も充分にイチャイチャとしているのだが)。

 まあまだこの旅行は先が長い。

 コース料理で例えればまだオードブルにすぎない。

 この旅行が終わるまでに――


「何がカップルの絆だ! 俺と桜彩の方が上だってことを教えてやる!」


「そうだそうだ! 私と怜の方が上だもんっ!」


「舐めんなこの仮カップルがあっ!」


「愛の力を見せてやるっ!」


 そんなシスターズの視線の先では、楽しくも真剣に遊ぶ四人の姿があった。

次回投稿は月曜日を予定しています

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