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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編② 恋の行方は――

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第374話 日焼け止め③ ~欲望と理性のせめぎ合い~

(は、恥ずかしすぎるよぅ……)


 背中に怜の手を感じながら、桜彩は顔を真っ赤にして内心で悶えていた。

 蕾華に言われた通り怜に日焼け止めを塗ってもらうように頼んだところ、怜に塗ってもらえることになった。

 背中に怜の手が触れる度に体がビクリと反応してしまう。

 指の腹で優しく、そしてしっかりと日焼け止めが伸ばされていく。

 そのたびに怜の指の動きが肌にじかに伝わってきて、息が止まりそうになる。

 緊張で息ができない。

 そんな折、水着の上が微かに引っ張られた。


「わ、悪いっ!」


「う、ううん……。だ、大丈夫だから……」


 日焼け止めを塗る際に指が引っ掛かってしまったのだろう。

 それであれば対策は一つ。


「で、でも、そうだよね……」


「え?」


「そ、そのね……。このままじゃ怜だって塗りにくいよね……。だ、だから……外して良いよ……?」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にしたたままそう告げる。


「は、外すって、何を……?」


「――ッ!!」


 怜の指摘に桜彩は目をギュッと閉じて羞恥に悶えてしまう。


(い、今、私何て言ったの……?)


 気持ちが高ぶっていたせいか、とても恥ずかしいことを言ってしまった。

 しかし一度言葉にした以上訂正するわけにはいかない。


「その……水着のホック、外してくれて構わないから…………」


 相手が怜でなければ絶対に出ない言葉。


「そのね。怜になら、良いから……」


 これまでいつだって誠実だった怜が相手だからこそ口にできた言葉。

 いや、将来的にはそういった意味でも口にするかもしれないが。


「そ、それじゃあ外すからな……」


「う、うん……。どうぞ!」


 そう告げると、ゆっくりと水着に力が掛けられたのが分かる。

 一瞬の後、それが解放され、水着が背中からどかされていく。

 もしここで立ち上がることになったら、自分の胸は完全に怜に丸見えになってしまう。


(は、恥ずかしすぎる……!)


 そんな桜彩の恥ずかしさを知ってか知らずか、怜の手が再び背中を撫でていく。


「こ、こんな感じで大丈夫か……?」


 あらかた背中を塗られたところで、怜がそう声を掛けてくる。


「うん。あ、そうだ。背中だけじゃなくて、もっと脇腹の方もお願い」


 もう少しだけ今感触を堪能していたい、そう思ったら考えるよりも先に言葉が出て来た。


「なんだか怜に塗ってもらうの気持ち良いから。だからついでにお願いしても良い?」


「わ、分かった……」


 リクエストに応えるように、怜の手がゆっくりと手を背中からお腹の方へと回されていく。

 もしも、その手がもう少しだけ上の方へと移動してしまったら。


(で、でも、怜になら嫌じゃない……もん…………)


 そんな恥ずかしさと嬉しさ、ちょっとした期待を胸に、日焼け止めは塗られていく。

 結果、桜彩の考えるようなトラブルに発展することにはならなかったが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふぅ……。これで終了だな」


 溢れてくる欲望を理性を総動員して封じ込めながら、怜は桜彩の背中や脇腹へと日焼け止めを塗り終えた。

 一度外した水着のホックを再度付け直し、これにてミッションコンプリート。

 まさか体の前面まで塗ってくれと言われることはないだろう。


「ありがとね。あ、そうだ。ねえ怜、ついでに顔もお願いできないかな?」


「えっ? 顔も?」


「うん」


 問い返すと桜彩は恥ずかしそうにしながらも頷く。


「いや、顔は自分でできるんじゃ……」


「うん。確かに手は届くけどさ、自分で見ながらできないからムラがあったらまずいなって」


 確かに桜彩の言う通り、勘だけを頼りに顔に日焼け止めを塗って、結果変な焼け跡が出来たら大変だ。

 だがそれなら洗面所など鏡のある場所で塗れば何の問題もない。

 そう桜彩へと返事を返そうとしたのだが、それより先に桜彩がこちらを見上げながらおずおずと


「ねえ、ダメ、かな……?」


 当然ながらそのおねだりを断ることは怜には不可能。

 よって返答は決まっている。


「分かった。それじゃあ顔も塗るよ」


「うんっ、ありがと!」


 嬉しそうに桜彩が頷く。

 怜としてもまあ恥ずかしくはあるのだが、他に人がいるわけではないし決して嫌というわけでもない。


「それじゃあ、塗る、からな……」


 日焼け止めを手に馴染ませて桜彩へと近づけ――


「うん」


 怜が日焼け止めを塗った手を桜彩の顔へと近づける前に、桜彩は目を閉じて顎をクイッと上げる。

 少しでも塗りやすいように、という配慮だろう。

 とはいえこれは――


(い、いや、わ、分かってる! これはアレだ! 俺が日焼け止めを塗りやすいようにってことで決してキス待ちとかそういう意味じゃないからな!)


 怜もそれは分かっているのだが、この桜彩の可愛さから目が逸らせない。

 ついその瑞々しく美しい唇へと目が勝手に吸い寄せられてしまう。

 これまで何度か(事故で)触れたことのある桜彩の唇。

 傍から見れば完全に勘違いされそうなシチュエーション。


「怜? どうかしたの?」


 いつまでたっても日焼け止めが塗られないことに疑問を抱いたのか、桜彩が目を開けて不思議そうな表情で問いかけてくる。

 その言葉で怜も正気を取り戻す。


「い、いや、何でもない! そ、それじゃあ塗っていくからな」


「うん。お願いね」


 再び先ほどと同じような格好で顔を向けてくる。


(勘違いするな勘違いするな勘違いするな……!)


 自分を戒めるように何度も心の中で念押しをして、桜彩の顔へと手を伸ばす。

 ぴと、と桜彩の頬に手が触れる。

 柔らかで、張りがあって、滑らかで。

 そんなとても素敵な桜彩の頬をゆっくりと撫でるように日焼け止めを塗っていく。


「んん……。はぁん…………。気持ち、いい…………」


「――ッ!」


 先ほどと同様に桜彩の口から聞こえる吐息が本当になまめかしい。

 加えてその音を発する魅力的な唇が本当に近い距離にある。


(無になれ……!)


 そんな先ほど以上の予期しない誘惑に耐えながらも、怜は桜彩の顔へと日焼け止めを塗っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「よし……。今度こそ終了だな」


 心臓に悪い、それでいて幸せだが拷問のような日焼け止めを塗る時間はようやく終わり。

 後は桜彩が自分で体の前面に日焼け止めを塗って、そしてやっと海へと突撃可能となる。

 さすがにその場に居合わせるわけにもいかないので、一度部屋の外へと出るべきだろう。


「それじゃあ俺はいったん外に出るぞ」


 そう言って立ち上がろうとした怜だったが、その腕を桜彩が掴む。


「桜彩?」


 不思議そうな表情でそう問いかけると、桜彩はにっこりと微笑む。


「まだ怜は日焼け止め塗ってないよね。ほら、私が塗ってあげるからうつ伏せになって」


 そう言ってたった今自分が寝ていたレジャーシートを指差してくる。


「いや、桜彩はまだ体の前は塗ってないだろ?」


「そんなのすぐにできるよ。それに怜はまだ背中にすら塗ってないじゃない」


「いや、それは――」


「むーっ! ほら、早くうつぶせになる!」


 そう言って半ば強引に桜彩にうつぶせにさせられる。

 そのまま抵抗する暇もなく、背中に冷たい感触、日焼け止めが垂らされる。


「それじゃあ塗っていくからね」


 その言葉と共に桜彩の指が背中を撫でるように這い回っていく。

 この苦しくも幸せな時間はまだ終わっていないようだ。

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