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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編② 恋の行方は――

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第372話 日焼け止め① ~日焼け止めを塗ってほしいクールさん~

(……………………どうしてこうなった?)


 怜がいるのは昨日桜彩と一緒に寝たコテージの寝室。

 その床に膝立ちになりながら自問自答する。

 いや、こうなった理由は分かっている。

 理由は今まさに膝立ちになっている怜の目の前にいる桜彩の存在だ。

 最愛の女性が床に敷かれたレジャーシートの上でうつ伏せになっている。

 しかも水着を着用した状態で。


「怜……?」


 首をちょこりと横に向けて、こちらに顔を向けて問いかけてくる。

 何故このような状況になったのか、それは数分前のやり取りに遡る。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 旅行二日目、天気は快晴。

 コテージの裏に広がるのは綺麗な砂浜とその奥にある海。

 小さな入り江となっているそこは砂浜がコテージの敷地に完全に面している為に、事実上のプライベートビーチとなっている。

 となれば当然ながら何をするかは決まっている。

 朝食後、しばらく六人で雑談しながら過ごした後、男女それぞれに別れて着替えを行う。

 当然ながら着替えるのは水着。

 海で海水浴としゃれこむ予定だ。

 さほど時間を掛けずに着替えを終えた怜と陸翔が部屋を出てリビングへと向かおうとしたところ


「え……えええええっ!?」


 女性陣が着替えている部屋のドア越しに、桜彩の叫び声が聞こえてきた。

 階段へと向いていた足を止めて慌てて怜が振り返る。


「どうした!? 何かあったのか!?」


「え!? あ、だ、大丈夫、大丈夫だよ!」


 中の様子をドア越しに問いかけると桜彩の焦ったような声が聞こえてくる。

 どう考えても大丈夫な声ではないのだが。


「本当に大丈夫か?」


「う、うん! 大丈夫、大丈夫だから!」


「ホントに大丈夫だって! れーくんとりっくんはリビングで待っててっ!」


 楽しそうな蕾華の声も聞こえてきた。

 どうやら一刻を争う事態ではないようで、それはそれで何よりなのだが。


「まあヤバい事じゃないだろ。オレらは荷物の確認してようぜ」


「あ、ああ……」


 陸翔に強引に肩を掴まれてリビングの方へと向かうことになる。

 パラソルやビーチボールの用意をしていると、着替えを終えた女性陣が部屋から出て来た。

 ドキリ、と。

 一番後ろに隠れるようにして現れた桜彩を見た怜の心が揺れる。

 当然ながら桜彩も皆と同じように水着を着ている。

 仲の良い者達しかここにいない為、以前プールを訪れた時とは違いラッシュガードは着用していない。

 水着から零れる素肌が目に眩しい。

 桜彩に見とれていると、いつの間にか四人がリビングまで降りて来ていた。


「お待たせ―っ!」


「お、お待たせ……」


 元気よく陸翔の元へ行き腕を組む蕾華と、対照的に水着姿が恥ずかしいのかもじもじと怜の方を見上げる桜彩。

 以前に一度、怜は桜彩の水着姿を見てはいる。

 だが当然ながら見飽きるということなどありえない。

 以前と同じ橙色を基調とした花柄のワンショルダータイプのビキニ。

 本当に桜彩に良く似合っており、その魅力が押し上げられている。


「あ、あの……」


「や、やっぱりよく似合ってる……」


「え、う、うん……。あ、ありがとね……」


 桜彩に感想を求められる前に思ったことを口にすると、桜彩が顔を赤らめて視線を外す。

 残る四人はそれを見て満足そうに頷いていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ひとまず落ち着いた後、蕾華は手に持っていた小瓶を陸翔へと差し出し


「あっ、そうだ! 日焼け止め塗るの忘れちゃった! ねえりっくん! 日焼け止め塗ってくれる?」


 そう陸翔へお願いした。


「おう、任せとけって! ちゃんと塗るからな!」


「えへへ、ありがとね!」


 小瓶を受け取った陸翔に蕾華が嬉しそうに微笑む。


「それじゃあ早速いこっ!」


 さすがにリビングで塗るのはまずいということで、レジャーシートを一つ持って二人が泊まっていた寝室へと戻って行く。

 確かに気温は高くはないとはいえ直射日光が降り注いでいる中、日焼け止めは必須だな、なんて考える怜。

 そんな怜に桜彩はもじもじとしながら


「あ、あの……怜……。私に日焼け止め塗ってくれない、かな……?」


 蕾華と同じように小瓶を差し出しながら、おずおずとそう告げてきた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 少し前――

 夏の外出時の必需品と言えば日焼け止め。

 日光による肌へのダメージを軽減させる効果のあるそれは、特に年頃の女子にとって必須のアイテムとなっている。


「ってなわけでさ、サーヤ! 日焼け止めはちゃんと塗らなきゃね! 持ってきたよね!?」


 水着へと着替え終えた蕾華が自らの用意した日焼け止めを手に持って桜彩へと力強く問いかけてくる。


「うん。持ってきたよ」


 あらかじめ怜の作成した必需品リストの一覧に入っていたし、数日前に蕾華に『サーヤ! 日焼け止めとかサンオイルとかは絶対に忘れちゃダメ! いい、絶対だよ!!』とくどいくらいに念押しされた。

 それを蕾華に見せながら頷く桜彩。


「うんうん! ちゃんと持ってきたね。それじゃあサーヤ、れーくんにそれ塗ってもらおっ!」


「あら、それは良いわね。桜彩、やってもらいなさい」


「え…………? ええっ!?」


 蕾華と葉月の提案に桜彩が目を丸くして驚く。

 何度かパチパチと瞬きをした後、蕾華の言っていた言葉の意味をようやく頭で理解する。


「あ、あの、蕾華さん……。ひ、日焼け止めってと、当然その……手で、塗るん、ですよね……?」


「え? もちろんそうだよ」


「それ以外にないでしょ。まさかハケでも持って来いって言うの?」


 何を当たり前の事を、といった感じの蕾華と葉月。

 後ろでは美玖もうんうんと頷いている。

 もちろん桜彩としても日焼け止めは手で塗ることは理解しているのだが。


(れ、怜に塗ってもらうって……。つ、つまりそれって、怜の手が直接私の背中を撫でるって……)


 その光景を想像してしまい、慌てて頭を振って想像を追い払う。


「そ、そんなの無理だよぅ…………」


「え? 何で?」


「な、何でって……」


 当たり前のように言ってくる蕾華に桜彩は言葉を失ってしまう。

 何でと言われても当たり前の事ではないのか。


「だってさ、サーヤって今は毎日お風呂上がりのケアをれーくんにやってもらってるんでしょ?」


「そうね。昨日だって怜にやってもらってたし」


「う、うん……」


「ほらほら。それとおんなじだって!」


 初デートの日以来、(瑠華が襲撃してきた日を除いて)桜彩は毎日怜の部屋で入浴し、その後怜にケアを行ってもらっている。

 日焼け止めは肌のケアの為なので、それの延長と言えばそうなのかもしれない。


「それにさ、サーヤだって塗ってもらえるんなら塗ってもらいたいでしょ?」


「え、そ、それは、う、うん……」


 もちろん蕾華の言う通りだ。

 風呂上がりに毎日怜がケアしてくれるのは桜彩にとって至福の時間だ。

 あれと同じように大好きな怜の手で日焼け止めを体に――


「わ、分かった! わ、私も怜に塗ってくれるように頼んでみるね!」


「うんうん! サーヤ、頑張ってね!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ほら怜。桜彩ちゃんが頼んでるのよ。返事してあげなさい」


 桜彩のお願いに固まっていると、桜彩の後ろから美玖がそう言葉を投げかけてくる。


「怜、ダメ……?」


 いつもと同じように上目遣いで桜彩が問いかけて来る。

 当然ながら怜にそれを防ぐ術などない。

 まあ怜としても桜彩に日焼け止めを塗るのは嫌ではない、というかむしろ役得の部類である。


「わ、分かった。それじゃあ……」


 そっと手を差し出して小瓶を受け取った。

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