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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章中編① 旅行の始まり

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第370話 新たなパジャマはより魅力的に

「お風呂上がったよー」


 怜が陸翔とリビングで涼んでいると、蕾華の声が聞こえてくる。

 声に導かれるようにそちらの方へと視線を向ければ、ちょうど女性陣がリビングへと戻って来たところだった。


「――ッ!?」


 目に映った光景に怜の視線が釘付けになる。

 そこにいたのは蕾華だけではなく女性陣全員。

 当然風呂上がりの桜彩の姿もそこにある。

 湯上りということで赤く火照ったその肌。

 先日の誕生日以降、およそ一か月にわたって桜彩はほぼ毎日怜の部屋で風呂に入っている為に、怜は毎日風呂上がりの桜彩の姿を見てはいる。

 だが今の桜彩はいつもの姿とはまるで違う。

 今の桜彩が着ている服は寝間着姿、いわゆるパジャマ。

 これまでの一か月間(及びそれ以前にも何回か)、怜は桜彩のパジャマ姿を見ていた。

 猫好きの桜彩にとてもよく似合う猫の着ぐるみパジャマ。

 もちろん動物好きの怜からしてみても、桜彩の可愛さと猫の可愛さが融合されることによる可愛さはもう最上級だ。

 少なくともそう認識していた、これまでは。

 しかし今桜彩が着ているパジャマは猫タイプではあるものの、怜も初めて見る物だ。

 冬用だった以前の物は厚手タイプだったのだが、これは夏用ということもあるのか前の物に比べて比較的薄手だ。

 ほぼ全身を覆っていた以前の着ぐるみタイプの物に対し、今桜彩が着用しているのは薄手の半袖パーカーのような物。

 下の方はショートパンツで健康的できめ細やかな桜彩の太ももが覗いている。

 そんな新しく新調したであろう猫パジャマを桜彩は蕾華とお揃いで着用している。

 美少女二人が猫パジャマというとても絵になる光景となっているのだが、怜は桜彩に心を奪われている。

 細くてきれいな腕と共に、風呂上がりで赤く火照った肌が怜の男心をこれ以上ないくらいに揺さぶってくる。

 可愛さに加えて色っぽさまでもが融合してしまい、怜の心臓がバクバクと大きな鼓動を刻む。

 正直かなりの危険物だ。

 桜彩も自分の格好がどういったものかを理解しているのか半分蕾華に隠れるように、しかしそれでも怜の方へと期待するような視線を向けている。


「え、えっと……怜、どう、かな…………?」


「え、えっと…………」


 桜彩の姿に目が釘付けになってしまってまともに答えが返せない。

 それほどまでに桜彩の姿は怜にとってとても素晴らしいものだった。

 これがもし蕾華だけ着用していたのであれば、怜も気軽に似合っているなどと言えただろうが。

 緊張にごくり、と唾を飲み込んでゆっくりと口を開く。


「す、凄く、似合って……」


「ちょっとサーヤ! 違うでしょ!」


 なんとか口を動かして感想を告げようとしたところで桜彩の横っから蕾華がむ、と頬を膨らませて口を挟む。

 後ろに隠れるような桜彩の方に体を向けて指を突き付け


「ほら! れーくんに感想を聞く時はさっき言ったみたいにしなきゃ!」


「え、うぅ……で、でも、は、恥ずかしいし…………」


 蕾華の言葉に桜彩が真っ赤になった顔を両手で覆ってしまう。

 この状態でも充分に恥ずかしいだろうに、いったい蕾華は何を吹き込んだのだろうか。


「サーヤ、何言ってるの! その方がサーヤの魅力をより発揮できるんだからさ! ほら、頑張って!」


 そう言うと蕾華は桜彩の後ろに回り、その両肩をグイッと持って怜の方へと押し出してくる。


「ほら! 勇気出して!」


「う、うん……」


 蕾華の言葉に頷いた桜彩は、ゆっくりと怜の方に向き直る。

 桜彩の背後に回った蕾華はその両肩から手を離し、猫耳の付いたフードを桜彩へと被せる。

 桜彩が顔を覆っていた両手を下げるとそこから真っ赤な顔が現れる。

 そのまま羞恥に顔を染めたまま恥ずかしそうに怜を見上げながら、ゆっくりと右手を少し上げて軽く握る。

 いわゆる猫の手というやつだ。

 そしてゆっくりと口を開き、怜に対してとどめの一言。


「れ、れい……。あの……そ、その……に、似合ってる……ニャ…………?」


 ドンッ!


 恥ずかしさと期待の混じり合った上目遣いを加えて告げられたその言葉に、今まで必死に平静を保とうとしていた怜の心はこれでもかというくらいに揺さぶられる。

 もう何と言って良いのか考えがまとまらない。

 そんな怜をニヤニヤと見つめる四組の目。


「ほら、サーヤ! もう一回聞いてあげて!」


 挙句の果てに蕾華がさらに煽ってくる。

 この状態でもう一度先ほどの言葉を聞かされることになれば、いったいどうなってしまうのか想像もつかない。

 とにかく何とかして落ち着かなければ。

 そう自分に言い聞かせて深呼吸をしようとするが、それよりも先に桜彩が再び口を開く。


「え、えっと……怜、似合ってるニャ……?」


 何も言わなかった、いや、言えなかったからか、先ほどよりも少しばかり不安そうに見上げながら桜彩が問いかけてくる。

 それが更に桜彩の可愛さを押し上げている。

 もう天井知らずの可愛さだ。

 そんな怜の脇腹を隣の陸翔がツンツンと肘で突いてくる。

 それで怜もやっと正気を取り戻し、一度深呼吸をしてから改めて桜彩の方を向く。

 不安と期待に満ちた目が怜を見上げている。


「す、凄く似合ってるぞ……」


「う、うん……。あ、ありがと……」


「さ、桜彩の可愛さとパジャマの可愛さが組み合わさって、もうこれ以上ないくらいに可愛いっていうか……」


「え…………。そ、そうなんだ……。あ、ありがと……」


「あ、ああ……………………」


「う、うん……………………」


 二人揃って顔を真っ赤にしたまま黙り込んでしまう。

 恥ずかしさでもう一言も言葉が出てこない。

 もう相手の顔を見ることすらできず下を向いてしまう。


「こらこらサーヤ。語尾にニャって付けないとダメだって」


 その状態から更に蕾華が煽ってくる。

 当然、今の桜彩がその口車に乗せられないわけはない。


「あ……。そ、そうだね……。れ、怜……あ、ありがと……ニャ…………」


「――――――――ッ!!」


 だからもうそれは反則だろう。

 その後、もだえ苦しむ二人がなんとか普通に会話できるまでに、実に五分以上かかってしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ひとまず平静さを取り戻した後は、いつも通りに桜彩の髪をケアしていく。

 桜彩の長く綺麗な髪をゆっくりと丁寧に乾かしていく。

 指に当たるサラサラとした感触が実に心地良い。

 その間、桜彩はいつも通りにずっと気持ち良さそうな表情を浮かべてくれていた。

 いつもとは違い、ニヤニヤと眺める四組の視線があったわけだが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後は六人でカードゲームを楽しんだ。

 これに関しては六人全員がか本気で勝ちに行った為、楽しみながらもかなり殺伐とした雰囲気で行われたのだが。

 そのうち徐々に眠気が訪れてくる。


「少し早いけど今日はもう寝ちゃいましょうか」


 桜彩が小さなあくびを漏らしたところで葉月からそう提案される。

 確かに慣れない車移動や普段とは違う場所ということもあり、怜もその提案には賛成だ。


「そうね。それじゃあそうしましょうか」


 誰からも異議が出なかったので、遊んでいたカードを片付けてお開きにする。


「それじゃあおやすみー」


「また明日ね」


 そんなことを言いながら、四人はそれぞれの部屋へと入っていく。

 去り際に贈られたニヤニヤとした視線は気が付かなかったことにしたい。

 もちろん怜も桜彩もこの後はもう寝るだけだ。

 それはつまり、桜彩と二人きりで同じ部屋の同じベッドに眠るということ。

 隣を見ると桜彩もそれを理解しているのか座ったまま恥ずかしそうにもじもじとしている。

 そんな姿も可愛らしいが。


「えっと、それじゃあ桜彩。俺達も、その、行くか……?」


「えっ!? あ、う、うん! そ、そうだね……」


 緊張した様子で桜彩が頷き勢いよく立ち上がる。


「そ、それじゃあ部屋に行こっか……」


「そ、そうだな……」


 そう言って桜彩へと手を差し出すと、おずおずと握り返してくる。

 そのままゆっくりと部屋へと入り、ドアを閉める。

 これでこの部屋には怜と桜彩の二人だけ。

 桜彩と二人きりというのはもう何度となく経験しているのだが、このシチュエーションではさすがに緊張する。


「……………………」


「……………………」


 この後は単に寝るだけ。

 比喩でも隠喩でもなく、本当に睡眠をとるだけだ。


「ま、まあこの前と同じっちゃ同じだしな!」


「そ、そうだよね! 蕾華さんや陸翔さんだって隣の部屋にいるしね!」


「そ、そうそう!」


「う、うん! そ、それじゃあ寝よっか!」


 そう言って二人でベッドへと向かい、意を決して横になる。

 横を向くと、すぐ隣に桜彩の顔。


「ま、前よりは、狭いね……」


「そ、そうだな……。ま、まあ俺のベッドに比べてってだけで、決して狭すぎってわけじゃないけどな」


「そ、そうだよね」


 怜の部屋のベッドはダブルサイズ。

 それに比べれば小さめのこのベッドは二人で寝るには問題ないものの、それでも怜のベッドより小さいのは事実だ。

 隣に横になっている桜彩のことを、あの時以上に感じてしまう。


「そ、それじゃあ電気、消すな……」


「う、うん……。お願い……」


 ベッドの横のスイッチで電気を消すと、部屋の中が真っ暗になる。


「そ、それじゃあおやすみ……」


「う、うん。おやすみ……」


 しっかりと繋いだ手から、大好きな人を感じながら。

 こうして二人にとっての忘れられない旅行一日目が静かに終了した。

(六人で寝る前に遊んでいる話を書いている途中で『これ長くなりそうだな』と思い、話のテンポを考えて泣く泣くカットしました……)


 中編はここで終了となります。

 次話から後編となり、ついに、です。


 期待を裏切らないよう頑張っていきますので、これからも応援をよろしくお願いいたします。


 よろしければ感想等頂けたら嬉しいです。

 話の展開が遅い、とっとと二人がくっつけ、といった内容でも構いません。

 また、面白かった、続きが読みたい等と思っていただけたらブックマークや評価、各話のいいねを下さると嬉しいです。




 また、先日の後書きでも書きましたが、怜と美都をモチーフにした短編をそれぞれの視点から公開しています。読んでいただけたら嬉しいです。

『家庭科室で、恋をひとさじ(女子視点) ~「お弁当の作り方を教えて下さい」から始まった淡い恋心~』

https://ncode.syosetu.com/n3033kl/

『家庭科室で、恋をひとさじ(男子視点) ~「お弁当の作り方を教えて下さい」から始まった淡い恋心~』

https://ncode.syosetu.com/n3026kl/



【2025.05.26 追記】

 申し訳ありません。

 次話から後編と記載していましたが、中編②となります。

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