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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章前編 夏・プール・水着

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第348話 部屋の内装

「れーくん、お風呂ありがとーねー!」


 風呂から上がった瑠華がリビングへと戻って来る。

 その肌は湯上りの為か赤く上気しており、本人が美人であることと相まって妙な色気を醸し出す。

 とはいえ怜としてはそんなものに屈するわけもないのだが。

 そのままソファーに腰を落としながら冷たいお茶の入ったグラスを手にする瑠華。

 怜以上にこの部屋の住人感があることに思わず頭を抱えてしまう。


「それじゃあ次は俺が入りますね」


「うん。あ、そーだ。れーくんに聞きたかったんだけどさー」


 お茶を飲みながら後ろを向いた瑠華が問いかけて来たので、洗面所へと向かう足を止めて振り返る。


「はい? 何か?」


「洗面所に歯磨きのセットが二つあったよね」


 不思議そうな顔をして問いかけて来る瑠華。


「「……ッ!!」」


 何気ない瑠華の指摘に桜彩と二人で思わず固まってしまう。

 もちろんあれは怜と桜彩の分である。

 普段から怜の部屋で食事を共にしている桜彩はその後の歯磨きも怜の部屋で行っている為に、歯磨きのセットは怜の部屋の洗面所に常備されている。

 とはいえそれを正直に言うわけにもいかない。


「ねえ、あれって誰のー?」


 そんなこととは露知らずに瑠華が問いかけて来る。


「え、えっと……」


 何と言って良いか考えがまとまらない。

 すると言いよどむ怜に瑠華が疑いの目を向けて来る。


「ぱっと見、あれ女の子のコップだったんだよねー……。ってまさかれーくん! 彼女さんの分!?」


「違います!」


 瑠華の言葉を即座に否定する。

 いや、彼女のコップであればどれだけ良いか分からないのだが、残念ながら桜彩は怜の彼女ではない。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(……むぅ。そ、そりゃあ今の私は怜の彼女ってわけじゃないけど……)


 怜の言葉を聞いて若干不満そうな桜彩。

 もちろんここで『彼女の物です』などと怜が答えるわけにはいかないのは分かっている。

 とはいえそれはそれで寂しさがある。


(で、でもいつかは彼女として……)


 怜の彼女として物を置きたい。

 その思いは当然ある。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「えーっ、それじゃあこれって誰の!? 前来た時にはなかったよね!?」


 怜の態度に瑠華が訝し気な視線と共に問いかけて来る。


「姉さんですよ。少し前に来た時に置いていったんです」


 とりあえず当たり障りのない答えでごまかすことにする。

 姉であればここに置いていても違和感はない。

 とりあえず美玖の私物と聞いた瑠華は納得したというように頷く。


「ああ、美玖ちゃんのかあ」


「ええ。だから彼女とかじゃないですよ」


「でもさ、あたしが前に来た時と比べてこの部屋って随分と変わったよねー」


「…………そうですかね?」


 室内を見回す瑠華にそうとぼけておく。

 怜としても自覚はあるのだが、同意すると面倒になりそうだ。


「そうだよー。なんていうかさー、壁とかも変わったじゃん。前もぬいぐるみなんかはあったけど、壁にガーランドとか飾ってなかったしさー」


 瑠華が視線を向けた先の壁にはワイヤーネットが張られ、そこにガーランドが飾られている。

 猫や犬、熊などの動物のガーランドが数か月前までは飾り気のなかった壁に華やかな彩りを与えている。

 これはもちろん桜彩と一緒に選んだ物。

 その他にも手のひらサイズのぬいぐるみやタペストリーなど。

 殺風景だった、とまではいわないが、数か月前に比べて随分とファンシーな感じに変化している。


「別に良いでしょうが。部屋の中、華やかにしても」


「別に悪いとは言ってないよー。でもさ、さすがに短期間で結構変わったなって。洗面所やトイレなんかもさ、観葉植物とか置いてあったし」


「まあ、いつも過ごしてるとこですからね」


 先日、桜彩と共に色々とこの部屋のインテリアをショッピングモールへと買いに行った。

 照明なども普通のシーリングライトだったのが、花模様に点灯するタイプの物へと変更されている。

 こうしてみると以前に比べて随分と華やかになった。


「んー……」


 未だに納得いかないような顔を浮かべる瑠華。


「確かにれーくんの趣味っぽくはあるんだけどさー。でもなんていうか、れーくんってこういうのにあんまりお金使わなかったでしょ?」


 怜の金銭感覚については瑠華も良く知っている。

 無駄遣いをあまりしない怜にしては、こういった物を作るのならともかく購入するイメージがないのだろう。


「そりゃ確かにそうですけどね。でも日常的に過ごす所ですから、そこにお金を使うのは別に良いんじゃないかって」


「ふーん…………。ねえれーくん。一応聞いておくけどさ、あたしに隠れて彼女さんとか作ってないよね?」


 訝しむような視線からなにか睨むような視線で問いかけて来る。


「……彼女なんていないですが、なんでまたそんなことを?」


 確かに彼女はいない。

 彼女になって欲しい相手はすぐ側にいるが。


「うーん……。れーくんのインテリアが変わってるのって、彼女さんの影響かなって」


「……んな訳ないでしょうが」


 彼女の影響ではない。

 彼女になって欲しい相手の影響は混じっているが。


「それなら良いんだけどさ。れーくん! くれぐれも彼女を作って色恋沙汰にうつつを抜かして勉学を疎かにするなんて駄目だからね!」


 そう言いながらびしっ、と人差し指を突き付けて来る。

 とはいえそう言われる筋合いは怜にはない。


「彼女を作っても勉学を疎かにしなければいいと思いますが」


「なっ! 何言ってるの! 勉学を疎かにしなくても彼女なんて作ったらダメに決まってるでしょ!?」


 支離滅裂なことを言い出した。

 先ほど自分が何と言っていたのか思い出して欲しい。

 いや、いつものことと言えばその通りなのだが。


「なんでですか。ちゃんと勉強さえしてれば彼女作っても問題ないでしょ」


「問題あるに決まってるじゃん! れーくんに彼女さんなんて百年早いからね!」


「だからなんで」


「あたしがまだ彼氏作ってないから! いい!? れーくんはあたしに彼氏が出来るまで彼女さんなんて絶対に作っちゃダメなんだからね!」


 いつの間にか瑠華が手に持っているグラスの中身がお茶からビールへと変わっている。

 酔っぱらいと化した(その前から化していたが)瑠華が素面の時よりも質の悪い絡み方をしてくる。


(どうしてくれようか……)


 瑠華の処理を悩む怜の肩を背後からポンポンと叩く手。

 振り向けば蕾華がにっこりと笑っていた。


「いい、れーくん!? お姉ちゃんとの約束だからね! …………痛い痛い痛い!!」


「だから! れーくんに! 迷惑を! 掛けるな!」


 先ほどと同様に蕾華のヘッドロックが炸裂する。

 一応瑠華の持っていたグラスはソファーテーブルへと置かれてているので零れる心配はないだろう。


「ちょ、ちょっとらいちゃん! ギブ! ギブ!」


「だから! れーくんに! 変なことを! 言うなって言ってるでしょ!?」


「だ、だってだって! れーくんに彼女さんなんて……!」


「お姉ちゃんの嫉妬で! れーくんに! 彼女が出来るのを! 妨害するんじゃない!」


「なっ……! ま、まさか本当にれーくんに!? ……痛いっ! れーくん助けて!」


 蕾華にヘッドロックを掛けられている瑠華に関しては自業自得なので放っておくことにする。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(むぅ……。やっぱり竜崎先生って怜と仲良いよね……)


 怜と瑠華のやり取りを眺めながら、桜彩は心にモヤモヤとしたものを抱えてしまう。

 この二人が双方ともに恋愛感情を抱いていることはないと頭では理解しているのだが、それはそれ、これはこれだ。


(でも、怜、さっき言ってたよね。『ちゃんと勉強さえしてれば彼女作っても問題ないでしょ』って。それって怜も彼女が欲しいってこと……? もしそうなら……)

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