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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章前編 夏・プール・水着

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第346話 水着を見せたいクールさん③ ~水着姿のクールさん~

(と、泊めてって……。ま、まさか竜崎先生、怜の部屋に泊まるってこと!?)


 瑠華のトンデモ発言を聞いた桜彩の顔が青ざめる。

 なにしろ瑠華は未婚の女性であり、年齢も二十五歳とまだ若い。

 加えて蕾華の姉ということもあり(見た目だけは)かなりの美人だ。

 また本人は身長の低さをコンプレックスに持っているようだが、とはいえそれ以外のスタイルは良い。

 胸も大きく、同年代では大きい方の桜彩でさえ敵わない。


(そ、そりゃあ私は怜のことを信用してるけど、でも、でも……)


 確かに怜は誠実であり、瑠華に対して恋愛感情は一切抱いていないだろう。

 加えて以前の大雨の日、桜彩が帰った後は瑠華を部屋に泊めている。

 とはいえ大好きな相手が年頃の女性と同じ屋根の下、二人きりで一晩を過ごすなど桜彩としては冷静ではいられない。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「食べたら帰って下さい」


「えー? もう飲んじゃったもん。飲酒運転になっちゃうでしょ?」


「原付に乗らなければ良いでしょうが。押して帰って下さい」


「やだーっ! 面倒くさいーっ!」


「じゃあタクシーで帰って下さい」


「えー? れーくん何言ってるの! そんなのタクシー代が掛かっちゃうじゃん」


 言動がまさに駄々をこねる子供のそれである。

 それにお金が掛かると言いながらスーパーで無駄遣いをしておいて何を言っているのか。

 思わず頭を抱えてしまう。


 ピンポーン


 どうしてくれようかと悩んでいると、玄関のチャイムが鳴った。

 ひとまず考えるのを中断してインターホンの受話器を手にする。


「もしもし」


『あ、れーくん!? 入るよ! 良いよね!?』


 聞こえてきたのは親友の声。

 予想外の相手に怜の思考が一瞬止まる。


「蕾華!? 入るよって? いや、別に入ってきて良いけど……」


 バンッ


 言い終わるや否や玄関の扉が開く音がして、数秒後に蕾華がリビングへと姿を現す。

 視線はすぐに姉の姿を捉えると、そちらへと向かって突進していく。


「お姉ちゃん!? いったい何やってるの!?」


「あ、らいちゃん? もう学校で疲れたかられーくんのところで一休みしようかなって――痛い痛い痛いっ!!」


 座っている瑠華の頭を手早くヘッドロックして本気で締め付ける蕾華。


「れーくんに! 迷惑を! かけるんじゃ! ないっ!」


「痛い痛いっ! らいちゃん、タップタップ!!」


 バンバンとテーブルを叩いてギブアップのアクションを取る瑠華。

 しかしそんな瑠華のリアクションを無視して蕾華はヘッドロックを続ける。


「ってか蕾華、よく瑠華さんがここにいるって分かったな」


「さっき連絡来たの。れーくんのとこに泊まるって」


「ああ、そゆこと」


 春先とは違って、今回はちゃんと連絡をしていたようだ。

 まあ連絡したからいいというわけでもないのだが。


「全く……。ごめんねれーくん。おねーちゃんが迷惑かけて」


「痛い痛い痛い! らいちゃん、ホントにギブアップ! れーくん、助けて!!」


 助けてと言われても怜は助ける理由などない。

 心の中で蕾華を応援しつつため息を吐く。

 一方で蕾華は怜と話しながら徹底的に瑠華を痛めつけていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 一通り瑠華を制裁したところでようやく蕾華が頭を離す。

 結果的にもう飲酒してしまった瑠華を家に帰すのは難しいということで、なし崩し的に怜の部屋へと泊まることとなった。

 ついでに蕾華も瑠華のお目付け役として怜の部屋に泊まることが決定した。

 そんなわけで、ひとまず瑠華は浴室でシャワーを浴びている(瑠華が浴室へと向かう前に、桜彩が水着を着る為に脱いだ下着は本人が回収した)。


「本当にごめんね、二人共」


 疲れた表情をした蕾華が、姉の不始末について頭を下げる。

 別に蕾華が頭を下げる必要はないのだが。

 これではどちらが姉か分からない、いや、今に始まったことでも無いが。


「蕾華が謝ることじゃないから」


「う、うん……。それにむしろありがたいって言うか……」


 怜と瑠華が二人きりになるのを防ぐことが出来たので、桜彩としても一安心だ。

 怜のことを信用しているとはいえ、大分気が楽になる。


「蕾華は夕食は食べたのか?」


「うん。もう食べたよ」


 食事がまだなら蕾華の分も作ろうと思ったのだが、その心配はないようで何よりだ。

 そこでふと蕾華は桜彩の方を向く。


「あ、ちょっとれーくん。サーヤ借りるね」


「え? ああ、まあ良いけど」


「それじゃあサーヤ、こっち来て!」


「え? う、うん……」


 戸惑う桜彩をトレーニングルームと化している一室へと少々強引に引っ張っていく蕾華。

 そんな二人を見ながら、怜は食事の片付けへと移っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねえサーヤ。一応聞くけどさ、もうれーくんに水着を見せた?」


 部屋の扉を閉めて開口一番、蕾華がそう口にしてきた。


「ううん。その、怜に見せようと思ったところで先生が来て……。今、下に着てるんだけど……」


 水着に着替えたところで瑠華が訪れて来た為、結局まだ怜に水着を見せてはいない。

 桜彩としてはせっかく勇気を振り絞ったのだが。

 それを聞いた蕾華が頭を抱えて項垂れる。


「ご、ごめんね。せっかく選んでもらったのに」


「え? ああ、違う違う。今悩んでたのはお姉ちゃんについてだから」


 桜彩が謝ると、慌てて蕾華が首を振る。


「でも、竜崎先生がいると怜に水着を見せるのは難しいよね……」


 さすがに瑠華のいる前で怜に水着姿を見せることになっては二人の関係に気付かれてしまう。

 いや、気付かれるどころかあらぬ誤解をされること間違いないだろう。

 すると蕾華は少し考えた後、良いことを思いついたというように目を輝かせる。


「あ、だったらさ、今お姉ちゃんお風呂に入ってるから、今のうちにれーくんに水着姿を見せてあげたら?」


「え、ええっ……!?」


 期待に満ちた目を向けながら、蕾華が桜彩の両肩を掴んで顔を近づけて来る。


「だってそのつもりだったんでしょ? それに下に水着着てるならすぐじゃん」


「そ、そうだけど……」


「ほらほら。急がないとお姉ちゃん来ちゃうよ。ってなわけでれーくん呼んで来るからね!」


「え……? ちょ、ちょっと蕾華さ……」


 そう言って返事も聞かずに蕾華は部屋を出て行く。

 これでもう怜に水着姿を見せることは確定してしまった。


「うぅ……」


 しかし確かに蕾華の言う通りだ。

 怜に褒めてもらう為に水着を着る決意はしたのだし、このまま先延ばしにして瑠華が風呂から上がったらもう機会がなくなってしまう。

 ならばここで怜に水着姿を見せるのは理にかなっている。


「そ、そうだよね……。うん。頑張ろう!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「あ、れーくんれーくん。ちょっとちょっと」


 怜が洗い物を片付けた終えたところで、トレーニングルームから戻って来た蕾華から手招きされる。


「蕾華、どうした?」


「れーくん。サーヤが二人だけで話があるって。ほら、入って入って!」


 そう言ってトレーニングルームへの扉を指し示す。

 その表情がニヤニヤとしているように見えるのは、きっと怜の気のせいではないだろう。

 しかし桜彩が話があるというのなら待たせるわけにはいかない。

 蕾華の表情は気になったものの、桜彩が話があるというので扉をノックする。


「桜彩? 蕾華から話があるって聞いたんだけど入って良いか?」


「あ、う、うん……。は、入ってもらえるかな……?」


 何やら慌てたような口調で返事が返って来る。

 ゆっくりと扉を開けて中へ入ると、何やら緊張した様子の桜彩が立っていた。


「どうかしたのか?」


「あ、うん……。そ、その……れ、怜に見て欲しいものがあるんだけど……」


「俺に?」


「うん……。後ろを向いてちょっと待っててもらえる?」


「わ、分かった……」


 見せたいものが何なのか皆目見当もつかないが、ひとまず桜彩に言われた通りに背を向ける。

 すると背後からなにやら衣擦れするような音が聞こえてきた。


(な、何をやってるんだ……?)


 気になるが後ろを向いていてくれと言われた以上、振り向くことは出来ない。

 そのまま数十秒ほど黙ったまま経過する。

 耳から入る小さな音がなんだかなまめかしい。

 そして


「れ、怜……。こ、こっち向いて……」


「あ、ああ。いったいなにを…………」


 桜彩の方へと振り向いたところで、言い掛けた怜の言葉が止まる。

 驚きで目が点になる。

 その目に映ったのは、水着姿で顔を赤くして恥じらっている桜彩の姿だった。

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