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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章前編 夏・プール・水着

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第344話 水着を見せたいクールさん① ~瑠華の襲来~

 買い物が終わり、そのまま四人で軽く遊び解散する。

 別れ際に蕾華が桜彩に向けた『それじゃあサーヤ、頑張ってね! 報告宜しく!』という言葉が耳に届いた怜はとしては、それが若干気になりもしたが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「それじゃあなー」


「また明日ねー」


「じゃな」


「さよならー」


 本日は夏休みゼロ日目ということもあり、勉強のことはひとまず忘れて楽しんだ。

 もちろん夏休み一日目の明日からは、陸翔と蕾華を含めた四人でしっかりと学生の本分に取り組んでいくことになる。


「それじゃあ帰るか」


「うんっ!」


 どちらからともなく手を差し出し、しっかりと手を繋いで帰路へと就く。


「ふふっ。夏休みゼロ日目、楽しかったね」


「ああ。最高の始まりだな」


「うんっ!」


 願わくば、それ以上の幸せが待っているように。

 この隣を歩く最愛の相手と『言葉に出来ない自分達だけの特別な関係』から、それにプラスして『恋人』という関係になれるように。

 そんなことを思いながらアパートへ向けて歩いて行く。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「え、えっとね、怜……。洗面所、借りてもいい?」


「ん? ああ、構わないけど何するんだ?」


「あ、ちょ、ちょっとね……」


 帰宅後の手洗いやうがいは既に終えている。

 これからさっそく夕食の支度に取り掛かろうと思っていたところなので思い至ることがない。

 よってそのような質問をしたのだが、桜彩の返事はなぜか歯切れが悪かった。


「と、とにかく借りるね!」


 そう言って逃げるように洗面所へと入っていき、扉に鍵が掛けられた。

 いきなりのことに怜は洗面所の扉を見たまま呆けてしまう。


(何するんだろうな?)


 風呂に入るにはまだ早いし、そもそも内緒にする必要も無い。

 とはいえ考えていても分からないので、ソファーに座ったまま冷たい麦茶の入ったグラスを傾ける。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(え、えっと……こ、これを着て、怜の前に…………)


 洗面所に入った桜彩が手に持ったそれを袋から取り出して固まってしまう。

 持たれているのは当然、昼間に蕾華と共に購入した水着。

 一番最初に見てもらいたい相手である怜に見せる計画なのだが、さすがに躊躇してしまう。


(そ、そんなに露出が高いってわけでもないけど、でも、恥ずかしい……)


 洗面所の鏡には、この水着に着替えて怜の前に現れた場面を想像してしまった桜彩の真っ赤になった顔が映し出される。


「ううううう~っ……!」


 いざやるとなった途端、今までの覚悟が水泡となって消えてしまう。


(で、でも、蕾華さんも怜が気に入ってくれるって言ってたし……)


 着用した姿を見せたわけではないが水着を体の前に当てたところ、蕾華は怜が気に入ることを確信していた様子だった。


(そ、そうだよね! 怜に似合ってるって言ってもらう為だもんね!)


 恥ずかしいことに変わりはないのだが、とはいえ水着姿を見せなければ褒めてもらえるわけもない。


「よ……よしっ……!」


 決意を固めて桜彩はブラウスのボタンに手を掛けた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ピンポーン


 怜が桜彩を待ちながら麦茶を飲んでいると、リビングに玄関のチャイムが鳴り響いた。


「ん? 誰だろ」


 怪訝な顔をして立ち上がる。

 常時施錠されており、アパートの各部屋の鍵か各部屋のインターホンでしか解錠操作出来ないエントランスを突破した相手が玄関まで来たということ。

 まあセールスや宗教勧誘だったら即座に切れば良い、と考えてインターホンの受話器を取る。


「もしもし」


『あ、れーくん。あたし、瑠華だよーっ! ちょっと休ませてーっ!』


 聞こえてきたのは怜も良く知る瑠華の声。

 懸念したセールスや宗教ではなかったのだが、それはそれで予想外の相手だ。

 というか、そもそもこのアパートのエントランスは簡単に突破されすぎではないのだろうか。

 いや、確かに他の住人が出入りするタイミングと被れば簡単に中に入ることは出来る仕組みとなってしまっているのだが。


「……休ませてって、どういうことですか?」


 いきなりの要求に頭を抱えてしまう。


「学校で色々とあったんだよーっ! とりあえずここ開けて―っ!」


「ちょっと待って下さいね」


 正直開けたくはないのだが、玄関前で叫ばれることを考えれば開けざるを得ない。

 どうせロクでもないことだろうな、と思いながら玄関を開ける。


「あ、れーくん! お邪魔しまーす!」


 開けた瞬間、瑠華が部屋の中に体を入れて来る。


「いやちょっと待った! なんですか、いきなりお邪魔しまーすって!」


 いきなり入ってこようとした瑠華の両肩を持って押しとどめる。

 何の説明も無く休ませろだのお邪魔するよだと言われても、ここはれっきとした怜の部屋であり、瑠華の休憩室では断じてない。


「それがねー、聞いてよれーくん! れーくん達は終業式ってことで今日は午前中で終わったわけだけどさ、社会人であるあたしはそうもいかないんだよー! 半日で終わったれーくん達と違ってあたしはとーぜんながら今日だって午後も仕事だったし!」


「存じています」


 そんなことは知っている。

 日本の教師が学生と同じだけの夏休みが貰えるなどとは思ってはいない。


「それでね、今日の午後もあたしはれーくん達が夏休みの開放感に身を任せて遊んでいる間もせっせせっせとお仕事をしてたわけですよー」


「それはお疲れ様です。一社会人として当たり前の事であり、別段褒められるようなことではないとは思いますけれど」


 まだ社会人としての経験のない怜だが、それが特筆すべきことの無い普通のことだというのは間違ってはいないだろう。

 しかしそんな怜の返事に瑠華はムッと表情を歪ませる。


「いやいや、社会人ってのも学生が考えるよりも大変なんだよーっ! もー、あの主任めーっ!」


 どうやらまた上司に怒られでもしたのだろうか。

 その理由が自業自得である気がしなくもない。

 少なくとも瑠華にはその前科があるのだから。


「なるほど。それはお疲れ様でした。で、今度は何をやらかしたんですか?」


「やらかしたって、れーくんひどくない? まああたしが記入ミスしたのが原因だけどさー」


「怒られて当然だということは理解しました」


「むーっ! れーくん可愛くないなー!」


「可愛くなくて結構です。それではまだ今度」


 そう言って玄関の向こう側へと瑠華を返そうとするが、瑠華も扉に手を掛けて抵抗する。


「むーっ! なにれーくん、そんなにあたしを休ませたくないわけ!?」


「はい、その通りです」


 無表情のまま毅然と言い放つ怜。


「なんでよーっ!」


「四月にここに泊まった時のこと忘れたとは言わせませんよ。あの時大変だったんですからね」


 桜彩を交えて夕食を食べた後、瑠華はそのまま寝てしまった。

 翌日は翌日でゲームに付き合わされたりと散々であった。

 まあ楽しくなかったのかと言うと嘘になるのだが。


「なんでそんな――」


 ガチャ


 続けて何かを瑠華が言いかけたところで洗面所の扉が開き、そこから顔が現れる。


「え?」


「え?」


 洗面所から顔を出した相手、つまり今この部屋の中にいるもう一人の人物である桜彩と、玄関にいる瑠華の目が合う。


「え? え? 渡良瀬さん? どうして?」


 この部屋は怜が一人暮らししているわけで、いくら隣人であろうと桜彩がここにいる理由が瑠華には思いつかない。


「せ、先生……?」


 一方で桜彩の方も、いきなり現れた瑠華に困惑して、洗面所の扉からオロオロとした顔を見せている。

 瑠華と桜彩の視線が交差し、そして二人揃って怜の方を見る。

 しかも心なしか桜彩からの視線が痛い。


「えっと……まあ、とにかく中へどうぞ」


 とりあえずもうそうしないと話が進まないと思い、頭を抱えながら怜は瑠華を部屋の中へと招き入れた。

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