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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章後編 将来の夢と夏休みに向けて

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第340話 エピローグ ~夏休みゼロ日目~

「今日でやっと終わりだね」


「そうだな。本当に長かったよ」


 朝、いつも通りに怜の部屋で朝食を食べながら、二人が笑顔でそう呟く。

 七月十九日、本日が領峰学園における夏休み前最後の登校日である。

 特に授業なども無く、やることと言えば教師陣からのお決まりの長ったらしい言葉を頂戴する程度

 その後は諸注意等を受けて解散となる。

 故に今日が終われば明日からは待ちに待った夏休みの始まりだ。


「春休みから色々とあったからなあ」


「そうだね。本当に色々とあったよね」


 これまでのことをしみじみと思い出しながら、二人揃ってクスリと笑い合う。

 春休み終了の数日前、出かけようとした怜とアパートに引っ越してきた桜彩が出会った。

 徐々に仲良くなって、一緒に食事を作ったり放課後を過ごすようになった。

 お互いに抱えていたトラウマを解決し、陸翔や蕾華と並んで一番仲良くなった。

 一緒にデートもして、そして、恋をした。

 振り返れば本当にたくさんの素敵なことがあった。


「明日からは夏休みだね」


「ああ。楽しみだな」


「うん。楽しみ」


 再び二人で笑い合う。

 一か月以上の長い長期休暇。

 これまで以上に一緒に過ごすことが出来る。

 素敵な夏休みになることは間違いないだろう。


「でもさ、明日と言わずにまずは今日だよな」


「うんっ。放課後のお買物だよね」


 先日決定した通り、放課後は夏休みにリゾートプールへ遊びに行く為の水着を買いに行く予定だ。

 もちろんそのついでに色々と遊びまわる予定でもある。


「だけどさ、そうやって考えてみると、終業式やその他諸々が終わって放課後になった瞬間から夏休みって感じがしない?」


「あ、それは俺も分かるな。全部終わって解散ってなった時からもう夏休みモードに気持ちも切り替わるし」


「だよねだよねっ!」


 自分の意見に怜が同意してくれたことに嬉しそうに桜彩がはしゃぐ。

 確かに桜彩の言う通り、解散となった瞬間の解放感は何物にも代えられない。


「っていうと、事実上は今日が夏休み一日目ってことか?」


「うーん……どうだろ。放課後から夏休みが始まるってのは確かにそうなんだけどさ、でもこうして学校に通った日を夏休みの一日目って呼びたくはないんだよね。矛盾してるのは自分でも分かってるんだけどさ」


「そう言われるとそうだな」


 首を傾げて考え込む桜彩に怜も同意する。


「なんか学校に来た日が夏休みって考えると少し損した気分になるな」


「だよね。でも放課後からもう夏休み気分になるってのはその通りだし」


 別段損をしているわけではない。

 しかし理屈では分かれど気分的に納得出来るかは別だ。

 少し考えこみながら、気分を切り替えようとコーヒーを口にする。

 濃いめに淹れたコーヒーを口に含むと、その苦みにより頭に新たな刺激を与えられる。


「それじゃあ今日は夏休みの予備日ってことかな?」


「うん、そうかもね。あっ、待って。夏休みの一日目は明日でしょ? だったらさ、今日は夏休みゼロ日目ってことにしない?」


 良いことを思いついた、と言った感じで桜彩が顔を綻ばせる。


「夏休みゼロ日目?」


「うん。明後日が夏休み二日目、明日が夏休み一日目ならさ、今日は夏休みゼロ日目って考えることも出来るでしょ?」


「まあ確かにそういう考えも出来るかな?」


「でしょ? だからさ、今日は夏休みゼロ日目ってことにしよ!」


「それは良いかもな。うん、賛成だ。今日は夏休みゼロ日目だな」


「ふふっ。ありがと」


 傍から見たらどうでも良いような内容の雑談。

 しかしこうした朝のゆったりとした時間にこうして二人でそのような意味のない雑談に興じることが出来ることを幸せに感じる。


「夏休み、いっぱい遊ぼうな」


「うんっ! 一緒に遊ぼうね」


 そう言って立ち上がり、二人で食器をキッチンへと持って行く。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねえ、そう言えばさ、夏休みに何をしたいか怜は考えた?」


 怜の洗った食器を拭きながら桜彩が首だけをこちらに向けて問いかけて来る。

 その質問に怜は首を横に振る。


「いや、特別何をしたいってのはなあ」


「うん、そうだよね。私も」


 怜の答えに桜彩も自分も同様だと告げる。

 この二人、加えて陸翔と蕾華の四人であれば何をしても楽しいことに間違いはないのだが。


「まあ現実的なことを考えればさ、とりあえず課題から片付けて心配事を無くしてからだよな」


「そうだね。明日から徹底的にやる予定だもんね」


 先日四人で話し合った通り、夏休み一日目からは怜の部屋で徹底的に課題に取り組む予定だ。

 どうせいつかはやらなくてはならないのなら、早めに片付けて心配事を無くしてしまう。

 その方が遊ぶ時に楽しめる。


「課題は夏休みの天敵だからね。早めに倒さないと安心出来ないよ」


「まあ集中してやればすぐに終わるさ。それに四人でなら一緒に勉強するのも苦じゃないし」


「あっ、それは分かるな」


 実際に昨年怜が陸翔と蕾華と共に課題を終わらせるための集中勉強会を行った時は、勉強しているとはいえそれはそれで楽しかった。

 そんなことを話しながら洗い物を終える。

 一緒に洗い物を始めた当初は桜彩の動作もぎこちなかったのだが、数か月に及ぶ特訓の成果として今ではもう流れるようにスムーズに進行した。

 もうこの後の登校までは着替えるだけとなっている。


「あっ、そうだ怜。まだ時間あるけどさ、今日は一緒に登校しない?」


「一緒に?」


「うん。ほら、今はまだ早い時間だからさ、あんまり登校してる人っていないでしょ? だから私達が並んでても問題無いんじゃないかって。ダメかなあ?」


 可愛らしく桜彩が問いかけて来る。

 それを聞いて怜はふむ、と少し考える。

 確かに桜彩の言う通り通常の登校時刻まではまだかなり余裕がある。

 加えて今日は終業式、いつもとは違い朝練をやっている部活も無いので早めに登校して来る生徒の数は格段に減る。

 それであればこういう時くらいは桜彩と共に登校するのも良いかもしれない。


「うん。それ良いな。まあ誰かに見られたとしても、たまたま登校中に会ったって言えば良いし」


 この数か月の甲斐もあって、怜と桜彩は他人同士というよりは友人同士として周囲に認識されている、少なくとも自分達ではそう思っている。

 何しろ事ある毎に蕾華が桜彩に絡み、その流れから怜や陸翔にも話を振る為に自然と桜彩と話すことが多くなった。

 加えてその四人でボランティア部として活動していることからも、そこまで周囲に対して警戒する必要も無いだろう。


「えへへ、ありがと」


 怜の返事にはにかみながら桜彩がお礼を言う。

 その笑顔を見て、怜も嬉しくなってくる。

 この笑顔を見ることが出来たのなら少しくらいの危険は甘んじて受け入れるべきだろう。


「それじゃあ私、着替えてきちゃうね」


「ああ。俺も着替えて待ってるよ」


 それだけ言って桜彩は制服に着替える為に一度自室へと向かう。

 怜も制服に着替えながら、先ほどの桜彩との会話を思い出す。


『今日は夏休みゼロ日目ってことにしよ!』


 つまりは今日の放課後から夏休みの始まり。

 桜彩と過ごす初めての夏休み。

 大切な、大好きな人と過ごす初めての夏休み。


(うん。最高の夏休みにしよう!)


 そう決意を新たにする。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ヴヴヴ


 しばらくするとスマホに桜彩からのメッセージが届く。


『準備出来たよ』


 メッセージと共にいつもの猫スタンプも表示されている。

 そんなメッセージを見て自然に笑みを浮かべながら、怜も桜彩にメッセージを返す。


『こっちもオッケー それじゃあ行こう』


 玄関を出ると、ちょうど桜彩も玄関を出たところだった。

 二人揃ってポケットから友情を記念して贈り合ったお揃いのキーホルダー付きの鍵を取り出して玄関を施錠する。


「お待たせ、怜。それじゃあ行こっか」


「ああ。それじゃあ行こう」


 二人でにっこりと笑い合い、そして手を繋ぐ。

 一緒に登校するとしても二人の関係を隠している以上エントランスに到着したら離さなければならないが、それまではお互いに手の感触を堪能させてもらう。


「ふふっ。初めての登校デート、だね」


「そうだな。初めての登校デートだな」


 初めて一緒に登校する。

 繋いだ手の感触を堪能しつつ、幸せな気持ちで玄関を後にする。

 これが二人にとっての夏休みゼロ日目、絶対に忘れられない夏休みの始まりだ。

 お読みくださりありがとうございました。

 以上で第六章は完結となります。


 第七章は来週月曜日から投稿予定です。


 よろしければ感想等頂けたら嬉しいです。

『まだ付き合わないのか』『各イベント一つ一つが長すぎる』『そもそも中編と後編必要か?』 とかでも構いません。


 また、面白かった、続きが読みたい等と思っていただけたらブックマークや評価、各話のいいねを下さると嬉しいです


 第七章についてですが、ついに、です(予定)。

 本来第二章終了後に第三章エピローグの高台で夜空を見上げながら両片想い→両想いになって完結の予定でしたが、色々と書きたい内容もあってここまで伸びてしまいました。

 ここまで読んで下さった皆様の期待に応えられるように頑張りますので、これからも応援をよろしくお願いいたします。

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