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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章後編 将来の夢と夏休みに向けて

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第339話 夏休みの予定は?③ ~レジャープールに行こう~

「それでさ、結局夏休みの予定はどうするんだ?」


 放課後、ボランティア部の部室で四人になったところで怜は昼の話題を切り出す。

 クラスの皆と遊ぶのも嫌ではないが、やはりこの四人で何か計画を立てたいところだ。

 ちなみに不機嫌だった桜彩は蕾華によってなだめられた為、もういつも通りに戻っている。


「この前のダブルデートみたいに、四人でどっか行きたいよねー」


 蕾華の言葉にうんうんと頷く。

 先日の遊園地でのダブルデートは本当に楽しかった。

 加えて桜彩への気持ちを『恋』だと自覚したことも大きい。


「他に面白そうなとこって無いかなー?」


「つっても往復に時間が掛かりすぎるところだと遊ぶ時間減るしな」


「そうなんだよねえ。アタシ達だと泊まりは無理だし」


 条例などにより高校生という身分の者が泊まりがけで遊ぶには様々なハードルがある。

 よって遊ぶにしても日帰りが基本だ。


「ってなると定番だけどプールだな。もちろんレジャー系の。みんなはどうだ?」


「ああ。俺は賛成だよ」


「アタシも!」


 陸翔の提案に怜と蕾華が賛成を現す。

 しかし一方で桜彩は少しばかり考え込む。


「桜彩、どうかしたのか?」


 領峰学園の体育のカリキュラムには水泳が組み込まれているものの、水泳の授業は男女別となっている為に怜は桜彩が泳いでいる所を見たことが無い。

 しかし蕾華によると、(蕾華ほどではないが)運動神経の良い桜彩は水泳でも人並み以上に泳げていたと聞いている。

 であれば、特に問題は無いと思うのだが。


「あ、うん……。あのね、その、プールってことはさ、やっぱり水着を着ることになるでしょ?」


「うん。そりゃあそうだよ」


 何を当たり前、と言った感じで答える蕾華。

 いや、もちろん着衣水泳といったものも存在するのだが、さすがにそれは例外だ。


「その……みんなでプールに行ってみたくはあるんだけど、水着が恥ずかしいって言うか……。この四人だけなら問題無いんだけどね……」


 桜彩の言いたいことも分かる。

 とはいえ問題がそれだけならば、対処自体は可能だ。


「それだったらそれ用のパーカーとかラッシュガードとか着たらどうだ? さすがに全部は隠せないけど、遊ぶだけなら問題ないと思うぞ」


 大きめのパーカーやラッシュガードならそこそこの部分は隠すことが出来る。

 レジャープールはそう言ったものが着用可能な所が多い為、それを水着の上から着用すれば問題は無いはずだ。


「う、うん。でもさ、それじゃあ泳いだりは出来ないでしょ? 怜達が楽しめないんじゃないかって……」


「そんなことは絶対に無い」


 申し訳無さそうに告げる桜彩に、怜は真剣な顔で即座に桜彩の言葉を否定する。


「怜……?」


「俺は、俺達はさ、桜彩と一緒に水着で遊びたいとは言ってないよ。桜彩と一緒に遊べるのならそれで充分だ」


「怜……」


「それにさ、レジャープールの楽しみ方ってのは泳ぐだけじゃない。ウォータースライダーだったり、それこそ一緒に浮かんでいるだけでも楽しめるさ。なあ?」


 そう言って陸翔と蕾華の方を向くと、二人共怜と同じ意見だというようにコクリと首を縦に動かす。


「そうそう。ラッシュガード着たままでも良いからさ、一緒にプール行こっ!」


「そうだぞさやっち。怜の言う通りオレ達ならそれで充分だ」


「みんな……。うん、そうだね。ごめんね、変な事言って。うん。私もみんなとプールで遊びたいな」


 ニコリと笑みを浮かべて桜彩が頷く。

 まず夏休みの予定の一つにレジャープールが加わった。


「うんうん。それじゃあそういうことで……はい、これ見ろこれ!」


 そう言って陸翔が鞄から封筒を取り出して、中から紙を四枚取り出す。

 そこに書かれていた文字を流し見すると


「……シー・アルカディアのチケット?」


「そう! それもちゃんと四人分! いやー、さやっちが来てくれるって言って良かったぜ!」


 陸翔がグッ、と親指を立てたサムズアップを見せて来る。

 シー・アルカディアとは、少し前にオープンした大型のレジャー施設だ。

 水着で入れるスパも併設されており、遊び疲れた後はゆっくりと体を休めることも出来る。

 それゆえに随分人気らしく、チケットの値段もそこそこするらしい。

 そんなチケットを四枚も手に入れたということに怜は目を丸くする。


「いや、それどうしたんだ?」


「ああ、貰い物」


 うんうんと頷きながら陸翔が続ける。


「オレんトコの幼稚園の取引先から貰ったんだ。親父もお袋もまあ行くわけ無いからオレに回って来た。行くよな?」


「ああ。そういうことならありがたく」


「うん。私も」


 怜と桜彩がすぐに参加を表明する。


「混んでるっぽいし夏休みの平日だな」


「ああ。それじゃあ……」


 カレンダーを見ながら四人で行く日を話し合う。

 夏休みが始まって数日は怜の部屋で集中して課題に取り組むという伝統が、怜があの部屋に引っ越す前の中学生時代から続いている。

 よってプールに行く日程は必然的にそれが終わった後になる。


「それじゃあそういうことで」


「うんっ。楽しみだなあ」


 四人でレジャープール。

 これはもう楽しいことが約束されている。


「あっ、そうだ。さっきの水着の話で思い出したんだけどさ、みんなは水着どうするの?」


「俺は去年のがあるからそれで良いかな」


「オレも。サイズもそんなに変わってないだろうしな。まあ一度試しに履いてみるけど」


 怜も陸翔も昨年から体格はほとんど変わっていない。

 故に昨年の水着で充分だろう。


「サーヤは?」


「えっと……私は授業で使うやつしか持ってないから買わなきゃ」


 さすがに授業で使う水着でレジャー施設に行くわけにもいかない。

 いや、桜彩なら似合うかもしれないがTPOとしてそれは良くない。

 いくらパーカーやラッシュガードで隠そうともだ。

 すると桜彩の返事を聞いた蕾華が目を輝かせる。


「あっ、それじゃあさ、アタシも新しいの欲しいしこれから買いに……は難しいか」


 本日はもちろん通常授業であり、その後にこうして部活動もやっていた為にもうそこそこ良い時間だ。

 これから買いに行けなくもないが、とはいえそこまで急ぐ必要も無い。


「ゆっくり選びたいし、終業式の日の午後に四人で買いに行かない? ついでにそのままご飯食べたり遊んだりしてさ」


「うん。でもそれじゃあ怜と陸翔さんは――」


 水着を購入するのが女性陣だけということは、その間男性陣は手持無沙汰ということだ。


「かまわないって。なあ?」


「ああ。怜の言う通りだぞ。それにどうせ行くのはショッピングモールだろ? いざとなったら時間潰せるしな」


「あはは。ありがとね、二人共」


「ありがとう」


「気にしないで良いって。それに夏休み前日にこの四人で遊ぶのも楽しみだしな」


「そうそう。それじゃあ終業式の日に買いに行くってことで」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねえれーくん。サーヤの水着姿、見れなくて残念だった?」


 提出物の関係で桜彩が部室から出て行ったところで蕾華がニヤニヤと笑みを浮かべて聞いてくる。

 言うまでもなく答えは分かり切っているだろうに。


「…………まあ、そうだな」


 一瞬迷ったが正直に答える。

 どうせ蕾華、というかこの二人にはごまかしても無駄だろう。

 そんな怜の返答に蕾華は満足そうに頷く。


「あははっ。まさかれーくんからそんな返事を聞くことが出来る日が来るなんてね」


「あの怜がなあ。ホント、感慨深いよなあ」


「うっせえ」


 これまで女性の陰など一切無かった怜が、まさか好きな女子の水着姿を見たいというまでになるとは少し前まで陸翔も蕾華も思いもしなかっただろう。

 二人がかりでからかわれて恥ずかしさから怜は顔を背けてしまう。


「うんうん。せっかくのプールなんだからサーヤの水着姿、見たいよねえ?」


「…………だからそう言ってるだろ」


 確かに蕾華の言う通り、桜彩の水着姿は見てみたい。

 自分の好きな人の水着姿なのだから当然だろう。

 加えて桜彩はとてもスタイルが良い。

 おそらくどのような水着であれ素晴らしく似合うはずだ。


「うんうん。そっかそっか。なるほどねえ」


「……からかうなっての」


「あははっ、ごめんごめん。でもさ、サーヤも言ってたじゃん。『この四人だけなら問題無いんだけどね』って。だかられーくんになら普通に見せてくれると思うよ」


 桜彩がそう言ってくれたのは怜としても嬉しい。

 だが――


「いや、プールに俺達しか居ないってことはまずありえないだろう」


 そのハードルをクリアするのはとてつもなく面倒だろう。

 他の人から死角になる位置でラッシュガードを脱ぐとしても、それはそれでなんだかいかがわしい雰囲気だ。

 しかし蕾華はニヤニヤとした笑みを崩さずに


「まあまあ。アタシに任せといて。ちゃんとれーくんにサーヤの水着姿を拝ませてあげるから!」


 自信満々にそう宣言した。

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