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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章後編 将来の夢と夏休みに向けて

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第333話 七夕② ~喫茶店での一幕~

「それじゃあ出掛けようか」


 食後の片付けを終えた怜の言葉で四人が玄関へと向かう。

 本日のメインは食事ではなく七夕祭りデートだ。

 先日、陸翔と蕾華から少し足を延ばしたところでやっている七夕祭りに出掛けよう、と提案を受けた。

 加えて本日は金曜日。

 つまり明日は土曜日ということで学園も休みであり、多少の夜更かしも問題はない。

 ということで、怜も桜彩も親友二人の提案に二つ返事で頷くこととなった。

 外へ出ると、さすがに寄るとはいえ辺りは薄暗くなっている。


「桜彩」


「うん」


 怜が桜彩へとそっと手を差し出すと、顔を赤くした桜彩がその手を握り返す。

 お互いに初恋を自覚した後もこうして手を握ることは幾度となくやっているが、恋心を抱いている相手とこうして手を繋ぐという行為はやはり照れてしまう。

 陸翔と蕾華としては『何を今更』といった感じなのだが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 少し足を延ばしてやってきたのは、そこそこ大きな商店街。

 全国的に有名というわけでもないのだが、とはいえそこそこ大きなイベントが数日にわたって開催されている。

 もちろん一番の盛り上がりは土日である明日以降なのだが、とはいえ通り全体を天の川に見立てた七夕飾りや提灯が連なる様子は圧巻だ。


「わああっ……!」


 色とりどりの提灯を見て桜彩の口から感激の声が漏れる。


「凄いね、これ」


「ああ。綺麗だよな」


 周囲の飾りつけや店内の様子を見ながら先へ先へとゆっくりと進んでいく。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そのまま四人で散歩デートを楽しんでいたのだが、今はもう初夏。

 いくら夜とはいえずっと歩いているとさすがに暑くなってくる。


「なんか暑くなってきたな」


「うん。人も多いしね」


 加えて大盛況の七夕祭りということで人口密度も高く、それがよりいっそう暑さを増幅させている。

 歩いている内に陸翔と蕾華が手で顔をパタパタと仰ぐ。

 言われてみれば怜も自分が汗をかいていることに気が付く。


「俺も少し汗かいてるな」


「うん。私も」


 怜の言葉に桜彩も同意する。

 そして二人の視線が二人の間、しっかりと繋がれた手に移る。

 当然ながら二人共手に少しばかり汗をかいており、それはお互いに理解している。

 とはいえ離したいとは思わない。


「ふふっ。そういえばさ、私がダイエットを始めた時、怜と一緒に汗の匂いを嗅いだよね」


「ああ、覚えてるよ。でもさ、桜彩の匂いってか香りは嫌いじゃない。それは今も変わらないから安心してくれ」


「うん、私も怜の香り、好きだよ」


 当時のことを思い出しながらクスリと笑い合う。

 普通に考えれば想い人に汗の匂いを嗅がれることは避けたいのだが、自分達にそれは当てはまらない。

 むしろそんなところも含めて魅力的に感じてしまう。


「とはいえ暑いのは暑いよな。少し休むか?」


「うん、そうだね。二人は?」


「オレも賛成だ。ちょっと冷たいの飲みたい」


「アタシも。アイスとかでも良いよね」


 全員が休憩に賛成した為に、周囲で休めそうな店を探す。

 すると大通りから少し横道にそれたところにある喫茶店が目に入る。

 外から店内を伺ってみるが、どうやらそこまで混んでいるわけでもなさそうだ。


「どうする? ここにするか?」


「私は賛成」


 真っ先に桜彩が賛成の意を伝える。


「そうだな。値段も手ごろそうだし良いんじゃないか?」


「だね。それじゃあ入ろっか」


 表の看板に表記されていたメニューを見た陸翔と蕾華も賛成する。

 どうやら七夕祭り限定のメニューも置かれており、テイクアウトにも対応しているようだ。


「いらっしゃいませー」


 入口の扉を開けると女性の声が店の奥から響いて来る。

 少し遅れて浴衣姿の店員が姿を現した。

 浴衣姿なのは七夕祭りの雰囲気づくりの一環ということだろうか。


「四名様ですか? お好きなお席へどうぞ」


 店員の言葉に怜達は窓際から少し離れた位置の席を選んで腰かける。

 さすがに外からの視線を気にしてはせっかくの休憩が台無しだ。

 しばらくすると先ほどの店員が人数分のお冷を持ってやって来た。


「ご注文はお決まりですか?」


「あ、すいません。もう少し待って下さい」


「かしこまりました。それではご注文がお決まりになりましたらお呼びください」


 それだけ言って再び店の奥へと戻って行く。


「ってかこうして見ると浴衣の人って多いよね」


 蕾華の言葉に店内を眺めると、先ほどの店員だけではなく他の客にも浴衣を着ている人が何人かいるのに気が付く。

 まあ先ほど通りを歩いている時にも浴衣姿の人は多かったので、店内に居ても不思議ではない。


「祭りの服装といったら浴衣だからな。見た目も華やかだし」


 蕾華の言葉に怜も同意する。

 非日常を楽しむといった点から考えても浴衣というアイテムを利用する人は多いだろう。


「まあそんなことより注文決めるか。さてと、メニューは……うん?」


(むぅ…………)


 メニューを確認しようとしたところで隣の桜彩から何やら不満そうな視線が向けられていることに気が付く。


「桜彩?」


「怜、そんなに浴衣が良かったの?」


「え?」


「なんだか浴衣の人に見とれてたみたいだし」


「い、いや、そんなことないって。ただ普段は見ないから珍しいなって……」


「ふーん……」


 本当の事なのだが桜彩からのジト目は終わらない。

 別に浴衣に見とれていたわけではない。

 ただ話の流れから浴衣を着ている人に少し目が行ってしまっただけだ。


「私も浴衣を着てきた方が良かったかな……?」


 自分の服装に視線を落としながら桜彩がぽそりと呟く。


「い、いやだから別に見とれてないって。それにさ、いくら浴衣って言ってもそれ以上に桜彩の方が魅力的だし……」


「えっ…………?」


「あっ…………」


 ふと口から出た言葉に桜彩が驚いて目を丸くする。


「えっと、怜……、今のって……」


「あ、そ、その……お、俺にとっては他の人の浴衣姿よりもこうして桜彩の方を見てる方が、その、好きだし……」


「あ……う、うん……。その、ごめんね……」


「い、いや……」


 そのまま二人揃って俯いてしまう。

 当然ながらその光景に呆れる親友二人。


「ねえ、そろそろ注文決めない?」


「あ、そ、そうだな……!」


「う、うん、決めようか……!」


 恥ずかしさをごまかすように蕾華の言葉に同調して声を上げる。


「えーっと、何にするかな」


「せっかくだから七夕祭り限定のメニューっての頼まない?」


 桜彩の言う通り、ここは通常のメニューではなく特別メニューというものを頼むのも良いかもしれない。

 そう思って特別メニュー表を怜と桜彩、陸翔と蕾華がそれぞれ二人ずつ覗き込む。


「あっ、ねえ、これどうかな?」


「えっ、どれだ? ……あっ」


「えっ……?」


 桜彩が指差した先を覗き込もうとして顔を動かした怜。

 しかしその拍子に桜彩のおでこと自分のおでこがこつりと当たってしまう。

 幸いなことに決して勢い良くぶつけたのではなかった為、二人共ダメージは特にない。

 しかしぶつかとおでこがぶつかるような超至近距離でお互いに顔を見合ってしまい


「「…………ッ!!」」


 予想もしなかったタイミングに二人揃って赤面してしまう。

 後少し、後少しだけ顔を動かせば、キス出来そうなこのシチュエーション。

 それほどまでに想い人との距離が近づいてしまっている。


「うん。アタシは決めた」


「オレも決まったぞ」


 テーブルの対面から聞こえてきた蕾華と陸翔の声に慌てて顔を離す。

 あちらはあちらでメニューを見ていた為に、今のことについては気がつかれなかったようだ。


「二人は決まった?」


「あ、いや、もう少し待ってくれ」


「う、うん。私も……」


 慌てて再びメニューへと視線を戻す。


「ねえ、これなんてどう? さくらんぼのエ『キス』が入ってるって」


「「…………ッ!!」」


 蕾華が指差したのは織姫ドリンク。

 さくらんぼのエキスの入った炭酸ドリンクだ。

 蕾華としては特に意図したわけではなかったのだろうが、怜と桜彩は『キス』という音に反応して思わず固まってしまう。


(き、キス……。い、いや、別にあのままキスしようとかそんなことを思ったわけじゃないけど……)


(き、キスって……。ら、蕾華さんもそういう意味で言ったんじゃないのは分かってるけど、でも、さっき私が少しでも動いたら怜と……)


「二人ともどうかしたのか?」


 陸翔の声で二人共慌てて意識を現実へと戻す。


「そ、そうだな。それじゃあ俺はこの彦星ドリンクってのを頼むか」


「う、うん。私は織姫ドリンクにするね」


 慌ててメニューを決めて店員を呼ぶ。

 ちなみにこの後はお互いのドリンクの味が気になったので、間接キスで飲み合うことになったのだが。

 すみません

 体調不良により数日更新出来ないかもしれません

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