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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章中編 体調不良のクールさん

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第328話 授業中、脇腹にイタズラを

「ふぁあ……」


 授業も半ば、さすがに眠気がひどくなってくる。

 倒れそうになる頭を必死に気力で支えながら、なんとか授業に集中してノートをとる怜。


(とはいえ、さすがにこれは……)


 眠気がひどくなってきて、ついに瞼がピタリと閉じ――


 ツンッ


(ひゃっ……!)


 左脇腹に何かが当たる感触がした。

 予想外のそれに声を出してしまいそうになるが、すんでのところで口を閉じる。

 いったい何事かとそこに視線を向けと、怜の瞳に人差し指を立てた桜彩の右手が映った。


「ふふっ」


 怜にしか分からないように桜彩が小さく笑い、メモに何かを書いて渡してくる。


『怜、目が覚めた?』


 どうやら眠りそうになっていたのを指で突いて起こしてくれたということか。

 いきなりでびくりとしたが、確かに少しは眠気が離れてくれたようだ。


『ありがと 危なかった』


『どういたしまして 頑張ってね』


 桜彩から励ましのメッセージと、なにやらマラカスのような物を振って応援している猫のイラストがセットで付いてくる。

 それを見て二人でクスリと笑い合う。

 そのまましばらく授業を受けていると、今度は桜彩の目がトロンと眠そうにしていることに気が付く。


 ツンッ


 先ほど桜彩がやってくれたのと同じように脇腹をとつつくと、慌てて桜彩が上体を起こし、目をこすりながらこちらを向く。

 そして視線を手元に落とし、メモを書いて渡してくる。


『ありがとね』


『どういたしまして』


 再び二人で授業に戻る。

 そのまましばらくの間、二人は相手が眠そうな仕草を見せたら脇腹を突いて起こしていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 しばらくそのまま授業を受けていく。


「つまりこれは次のページにある通り――」


 瑠華の説明に合わせて教科書のページをめくる怜。


 ツンッ


(わっ……!)


 教科書のページをめくったところで、先ほどと同じように脇腹に軽い衝撃が走る。

 当然桜彩が脇腹を突いてきたことによるものだ。

 慌てて隣を見ると、桜彩がクスリと笑っている。


『俺は今寝てなかったぞ』


 いきなりのことに抗議のメモを渡す。

 しかし桜彩からは


『えーっ 寝てたよ』


 と返信が来る。

 とはいえその表情から、怜が寝ていなかったのにわざとやったことは明白だ。

 となれば怜の行動は一つだけ。

 世界最古の法であるハムラビ法典に倣うとしよう。

 同態復讐法、つまるところ『目には目を、歯には歯を』というやつだ。


「それじゃあこの問題を渡良瀬さん」


「はい。ひぅっ」


 瑠華に指された桜彩が答えようとしたタイミングで脇腹を突き返すと、桜彩が思わず小さく声を漏らす。


「渡良瀬さん、どうかした?」


「い、いえ。なんでもないです。えっと、今の問題は――」


 そのまま平静を装って瑠華の問題に答えた桜彩。


「はい、正解だよー」


 皆の視線が自分から外れたところで、怜の方を睨む桜彩。


『怜! 今、イタズラしたよね!』


 怒った猫のイラスト付きで桜彩の抗議が届く。


『先にやったのは桜彩だろ?』


『むーっ』


 桜彩が睨んでくるが、怜はそれを何事も無かったかのように受け流す。

 これは正当なる報復行為だ。

 非難されるいわれはない。


「それじゃあ次の問題を光瀬君」


「はい」


 ツン


 瑠華に指されて立ち上がろうとしたタイミングで桜彩が脇腹を突いてくる。

 先ほどの報復ということだろうが、当然それは怜も予測済み。

 であれば耐えることなど造作もない。


――(むぅーっ)


 報復に失敗した桜彩が、一見いつものクールモードを保ちながらも声にならない唸り声を上げて、不満そうなオーラを漂わせているのが良く分かる。

 それがなんとも心地良い。


「この場合は――」


 全く意に介していないといった感じで瑠華の問題に答える怜。


「はい、正解でーす」


 再び皆の目が自分達から離れたタイミングで怜は桜彩へとメモを渡す。


『残念でした』


 ついでに勝ち誇った猫のイラスト(桜彩ほど上手に描けたわけではないが)を添えておく。


――(むぅーっ)!」


 メモを見た瞬間、桜彩が頬を膨らませて小さく唸る。

 そして

 ツンツンツンツンツンツンツンツン

 怜の脇腹を連続で突いてきた。


『甘い甘い』


 再度メモを渡し桜彩を煽っていくと、当然ながら桜彩はよりムキになっていく。

 しかし何度突かれたところで予測出来ていれば先ほどの桜彩のような失態を犯すようなことはしない。

 何も感じていないかのように振る舞って前を向いて授業を受ける怜。

 そして桜彩が気を抜いたタイミングでカウンターで桜彩の脇腹を一回突く。


――(ひゃんっ)


 今度は桜彩も歯を食いしばって何とか耐えたようだ。

 そして涙目になりながら怜を睨んでくる。


『怜! またイタズラした!』


『桜彩から始めたことだからな』


 そうメモを返したところで、机の上のペンに肘が当たりペンが床に落ちてしまう。

 それを拾おうと座ったまま体を横に傾けてペンへと手を伸ばす怜。

 その瞬間


――――――――こちょこちょこちょこちょ


 桜彩に脇腹をくすぐられた。

 怜の数少ない弱点であるくすぐり。

 何度も怜に喰らわせたことにより弱点を網羅している桜彩からの攻撃。

 当然怜に耐えられるわけが無い。

 

「ふわっ!」


 予想もしなかった攻撃にバランスを崩して床へと倒れてしまう。

 ドン、と床に倒れたせいで教室の視線を独り占めだ。


「ちょっと光瀬君、どうしたのーっ?」


「い、いえ。ペンを取ろうとしてころんじゃって」


 訝し気に問いかけてくる瑠華に立ち上がりながら言い訳を口にする。


「もう。ちゃんと気を付けないとダメだよーっ」


 クラスメイトからくすくすと笑い声が起きる。

 それをBGMにペンを拾って椅子へと座り直す怜。


『よくもやってくれたな』


『ふふん。思い知ったか』


 ドヤ顔で勝ち誇った笑み向けてくる桜彩。


 ツンツンツンツン

 こちょこちょこちょこちょ


――――(ひゃあっ)! ――――(うぅっ)!」


――――(ひゃんっ)! ――――(ちょっ)!」


 この後、二人は授業終了まで事ある毎にお互いの脇腹を突いたりくすぐったりしていた。

 声を出すことだけは頑張って耐えながら。

 まあ最終的には二人共笑顔で相手の脇腹を触り合っていたのだが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「…………………………………………なあ」


「…………………………………………うん」


「…………………………………………だからなにやってんだよ、この二人」


「…………………………………………授業中だよ、今」


 唯一目の前に座っている陸翔と蕾華の二人だけはその様子に気が付いており、二人だけの空気を作り出している怜と桜彩に背中を向けたまま呆れていたのだが。

次回投稿は月曜日を予定しています


 中編はここで終了となります。

 前編で述べた通り、中編、後編は夏休みの始まりまでの助走区間ということで、これまでに比べて短めにするつもりではあります。

 後編では夏休みに向けてのネタを書いていくつもりです。

よろしければ感想等頂けたら嬉しいです。

 話の展開が遅い、とっとと二人がくっつけ、といった内容でも構いません。

 また、面白かった、続きが読みたい等と思っていただけたらブックマークや評価、各話のいいねを下さると嬉しいです。

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