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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章前編 ダブルデート ~お家デート~

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第315話 罰ゲーム② ~膝枕+耳かき~

「桜彩?」


 頬に載せられたものは、恐らくその感触からティッシュペーパーで間違いないだろう。

 とはいえそれを何に使うのかが分からない。


「ふふっ。怜、耳かきしてあげるね」


 怜の問いに、楽しそうな声で桜彩からの返事が返ってくる。


「え? 耳かき?」


「うん。耳かき」


「い、いや、いいって……。その、汚いかもだし……」


「ううん。私は別に気にしないよ。それにさ、これは罰ゲームなんだから、怜に拒否権は無いからね」


「う……」


 そう言われては断ることは出来ない。

 耳かき棒を手に取る桜彩。

 先ほど自室で準備して来ると言ったのはこれを取りに戻ったのだろう。


「でも何で罰ゲームが耳かき?」


「え? ええっと……」


 質問の内容としては至極当然だと思うのだが、なぜか桜彩は言いよどんでしまう。


「ま、まあそれは気にしないで」


「いや、気にしないでって……」


 気にするなと言われても、何故罰ゲームがこのようなことになったのかは気になるだろう。

 これでは罰ゲームというよりはご褒美と言った方が適切だ。

 いや、もちろん怜としてはその方が嬉しいのだが。

 ちなみにこれはもちろん『罰ゲームってことでれーくんに耳かきしてあげなよ! 絶対喜ぶから!』という蕾華の入れ知恵である。


「まあまあいいからいいから。それじゃあやっていくねー」


 楽しそうにウキウキとする声が上の方から聞こえてくる。

 対照的に怜は大人しく桜彩の膝の上で固まっている。

 視線を正面、桜彩のお腹の辺りを見たままだ。

 少しすると、耳に硬いい物、おそらく耳かき棒が触れるのが分かる。

 その感触に、思わず小さくビクッと震えてしまう。


「あっ、怜、じっとしてて!」


「あ、悪い……」


 何しろこうして他人に耳かきをしてもらうなどいつ以来だろうか。

 記憶を掘り起こしてみるが、そもそも自分以外の者に耳かきをされた記憶はない。

 つまりこれが初めての、他の人による耳かきだ。


「ふふっ。こちょこちょ、こちょこちょ」


 聞こえてくる声色によると、相変わらず桜彩は楽しそうだ。

 しかしこうして桜彩による耳かきを味わってみると、こそばゆいというかなんというか、やはり自分でやるのとはなんだか違う。


「怜、どうかな? 気持ち良い?」


「ああ。こうして桜彩にやってもらえるのもなんだか心地良いよ」


「ふふっ。良かった」


 怜の言葉に、先ほどとは別の種類の嬉しさのこもった声が聞こえてくる。

 そのまま少しの間、桜彩による耳かきが続く。


「はい。こっちはこれで完了」


「ん。ありがと」


「それじゃあ最後に……」


「え……?」


 すると突然桜彩が体を手前に倒してくる。

 ということは、その胸の膨らみも自分の方に寄って来るということで。

 困惑する怜だが、その膨らみは幸か不幸か顔に触れることなく停止する。

 何をしているんだ? と聞こうとするが、それより先に桜彩の顔が怜の耳に近づいて――


「ふーっ。ふーっ」


「――ッ!!」


 耳の中に軽く息を吹きかけられた。

 思わずビクッと震えてしまう。

 吹きかけられた息のくすぐったさと照れくささ、そして幸せな気持ちが怜の中で回っていく。


「はい、こっちはおしまい。それじゃあ怜、逆を向いて」


 そう、そしてこれはまだ半分。

 当然逆側の耳も残っている。


「ん。分かった」


 桜彩に言われるままに逆側を向こうと体をよじる。

 その際に、再度桜彩の胸のふくらみを見てしまい慌てて顔の向きを変える。


「ふふっ。それじゃあ次、やるからね」


「ああ。お願い」


「うん。こちょこちょっ」


 再び桜彩による耳かきが始まる。

 下からは桜彩の太ももの感触、上からは優しい耳かき。


(……………………最高か)


 今までであればただ単に幸せだとしか感じなかっただろう。

 しかし恋心を自覚した今となってはそれ以上の感動が胸に押し寄せる。

 そうこうしている内にこちら側の耳かきも終了する。

 先ほどと同じように耳元に息を吹きかけられるとついビクリと震えてしまう。


「はい、終わったよ」


 この幸せな時間はもう終わりか、と残念に思いながらも体を起こす。

 桜彩の顔を見ると楽しかったのか笑みが浮かんでいる。


「ありがとな」


「どういたしまして。気持ち良かった?」


「ああ、最高だったよ。本当に気持ち良かった」


「なら良かった。これからもして欲しくなったら言ってね。またやってあげるから」


 むしろ今もっとして欲しい。

 喉までせりあがってきたその言葉を何とか飲み込む。


「怜? どうかした?」


「ああいや、なんだか罰ゲームって感じじゃないなって」


「ふふっ。良いじゃない、こういうのも」


「そうだな。あ、それと桜彩、もう一つの罰ゲームってのは?」


 二回最下位になってしまった怜への罰ゲームはもう一つあるはずだ。


「ああ、それはね。はい、これ」


 そう言って桜彩が差し出してきたのは先ほどとは別の耳かき棒。

 それを見て怜も桜彩の言いたいことを察する。

 ソファーに座り直して太ももの上を軽くぽん、と叩いて桜彩を見る。


「それじゃあ次は桜彩の番だな。はい、どうぞ」


「うん。お邪魔するね」


 そう言って桜彩は先ほどの怜と同じように太ももの上へと頭を置いて怜の方を向く。

 先ほどと違うのは耳かきをする側の怜が男性である為に、胸部に邪魔されることなくお互いの顔を見ることが出来るということだ。


「それじゃあ始めるぞ。注文があったら遠慮なく言ってくれよ」


「うん。お願いします」


 そして先ほどの桜彩と同じように耳かきを始める。

 耳かき棒を桜彩の耳へと少しずつ挿入させると、くすぐったさからか桜彩の顔が少し揺れる。


「ほら、桜彩。動かないで」


「う、うん。でもちょっと、くすぐったくて……。ひゃんっ!」


「あ、悪い」


「ううん。続けて」


 桜彩の耳かきを再開していく。


「ふふっ。怜にこうされるのって気持ち良いなあ」


「そう言ってくれると頑張りがいがあるよ」


 そのまま何を話すでもなくまったりと耳かきを続けていく。

 ただこうして触れ合っているだけで心地が良い。

 そして最後にふーっ、と息を吹きかけようと顔を近づけて――

 先ほど、桜彩が耳かきをしている時は、桜彩の胸部によりお互いの顔を見ることが出来なかった。

 しかし今は違う。

 男性である怜の胸部は二人の視線を邪魔することはなく、顔を近づけるとお互いの視線が絡み合う。

 ゆっくりと桜彩の顔に自分の顔を近づけていく行為。

 一歩間違えればそれは――


「「――――ッ!!」」


 お互いにそれに気が付いてビクッと震えてしまう。


(お、落ち着け! 俺は、さっき桜彩にやってもらうように、耳に息を吹きかけるだけ!)


 決してキスをしようとしているわけではない。

 いや、もちろんキスをしたいという欲求もある。

 桜彩のすべすべで柔らかな頬に自分の唇を押し当てたい。

 自分の頬に、桜彩の瑞々しい唇を押し当てて欲しい。

 そして、お互いの唇を――


(って何考えてんだ、俺は!)


 まだ桜彩とそのような関係になったわけではない。

 早まった心臓の鼓動を落ち着けるように胸を撫でながら、桜彩の耳へと唇を近づけてふーっ、と息を吹きかける。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(ち、違うから! 怜は、さっき私がやったように、息を吹きかけようとしてるだけで……!)


 決してキスをしようとしているわけではない。

 いや、もちろんキスをしたいという欲求もある。

 怜の瑞々しい唇を自分の頬に、そして唇に押し当てて欲しい。

 その思いは確かに桜彩の胸の中に存在する。


(ってそうじゃないよ!)


 慌てて自分の胸に浮かんだ邪な考えを振り払う。

 早まった心臓の鼓動を落ち着けようと胸を撫でていると、怜が耳へと唇を近づけてふーっ、と息を吹きかけて来る。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「お、終わったぞ」


「う、うん……」 


「そ、それじゃあもう片方だな」


「そ、そうだね……」


 そう言って桜彩が体の向きを百八十度変えて怜に後頭部を向ける。

 これでお互いにお互いの顔を見ることは出来なくなった。

 大切な、そして大好きな相手の顔。

 しかし今この時だけは見ることが出来なくて良かった。

 もしこのまま見つめ合いでもしたら、もう歯止めが効かなくなるかもしれない。

 そんな自分の欲求を抑え込みながら、桜彩への耳かきは終了した。

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