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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章前編 ダブルデート ~お家デート~

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第309話 ソファーへの新たな座り方

 ひとまず朝の片付けも終わったので、この後は一日中室内で過ごす予定だ。

 となると必然的にやることは限られてくる。

 そんなわけで四人でゲームでもして遊ぼうということになった。

 とはいえあまり腕前を要求されるゲームだと経験者と未経験者の差が大きすぎてつまらない。

 特に怜はそこまでゲーム好きというわけでもなく、桜彩と一緒に過ごすようになってからは数えるほどしか遊んでいない。

 桜彩に関しても怜以上にゲームとの関わり合いは少ないとのこと。

 そんなわけで必然的にゲームの内容はほのぼのとしたパーティーゲームに絞られる。


「ねえ、これやろ? これなら運の要素が大きいしさ」


 そんな中、蕾華が一つのゲームソフトを選択する。

 いわゆるすごろくゲームで初心者と上級者の差がそこまで存在しない運要素が強い物だ。


「いや待て! それ友情崩壊ゲーじゃねえか!」


 だがその存在を確認した怜が慌てて大声を上げる。

 すごろくゲーといってもこれは一般的なすごろくや人生ゲームのように早上がりを目指すゲームとは少し違う。

 自分が会社の社長になって、豊かな日本の開発や発展への寄与の為に日本中を鉄道で回って物件を買い集めるという物だ。

 蕾華の言う通り運の要素が強く、初心者でも最後に一発逆転を狙うことが可能となっている。

 問題はこれが別名『友情崩壊ゲー』と呼ばれていることである。

 なぜそのような呼ばれ方をしているかというと、最後に一発逆転可能ということは、相手を妨害し、コツコツ積み上げてきた努力の結晶を容赦なく破壊しつくして再起不能にまで追い込むことが可能ということである。

 相手の行動を妨害することなどは所詮序の口、最大の問題は貧乏神と呼ばれるシステムだ。

 まず日本のどこかの都市が目的地に設定されそこに向かうのだが、誰かがゴールした時に一番遠い位置にいた物に貧乏神が取り憑いてしまう。

 その貧乏神は取り憑いたプレイヤーに恐るべき嫌がらせを繰り返し、ゲームの終盤においてはトップから最下位に転がり落ちることも珍しくは無い。

 そしてその恐るべき貧乏神を他人に擦り付けることが可能なのだ。

 この貧乏神の擦り付け合いこそが、相手をマジギレさせ、時に人間関係までも崩壊させてしまう『友情崩壊ゲー』たる所以である。

 何故ここでそのゲームをチョイスするのだろうか。


「いや、別に良いだろ。オレ達の友情はこの程度じゃ壊れないって」


「うんうん。りっくんの言う通りだよ」


「いや、確かにそうだけどな……」


 確かに二人の言う通り、この四人の友情はゲーム程度では壊れないだろう。

 とはいえ怜も陸翔も蕾華も基本的に勝負ごとに手を抜く人間ではない。

 親友だろうが恋人だろうが徹底的に勝利を狙いに行く性格だ。

 故に過去にこの三人でプレイした時に、その後もしばらく敗者が愚痴をこぼすということがあった。


「ちなみにサーヤ、これのルールは分かる?」


「えっと……何年か前にやったことがあるけど……」


 これは数十年に渡るシリーズ物ということで、過去作をプレイしたということか。

 怜も何作かプレイしたことはあるが、基本的にそこまで大きく操作は変わっていないはずだ。


「そっかそっか。それじゃあサーヤもこれで良いよね?」


「え、えっと……」


 桜彩が振り向いて先ほど言いよどんだ怜を見る。

 どうやら桜彩としてはこれをプレイすることについて問題は感じていないようだ。


「分かった。それじゃあやるか」


「うんっ!」


 そんなわけでコントローラーを取り出してそれぞれに配る。

 全員にコントローラーが行き渡ったところで陸翔が慣れた手つきで設定を始める。


「それじゃあまずさやっちの為に一回テストプレイするか」


「そうだな。過去作知ってるとはいえ違うところもあるだろうし」


「あ、うん。ありがと」


 いくら初心者と経験者の差が少ないとは言っても、さすがにほぼ未プレイでは難しいだろう。

 そんなわけでプレイ期間を三年と定めて、まずは勝敗を度外視してゲームを始めることとした。


「それじゃ始めよっか! りっくん、お邪魔するね」


「おう!」


 その会話に桜彩が疑問符を浮かべるが、蕾華はソファーに座る陸翔の太ももの間に腰を下ろしてもたれかかる。

 陸翔が後ろから蕾華を抱きしめるような格好だ。

 それを見た桜彩が驚いて目が点になっている。

 一方で怜の方はそれを当たり前のように受け入れている。


「桜彩。この二人はいつもこんなんだから」


「え、あ、そ、そうなんだ……」


 この二人が怜の部屋でくつろぐ際にこのようなことが何度かあったので、怜にしてみれば今更だ。

 その反応を見て、陸翔の膝の間から蕾華が怜と桜彩の方へと振り向いて


「あ、それならサーヤもれーくんにやってもらったら?」


 そんなことを提案してきた。


「「えっ……!?」」


 その提案に二人同時に驚く。

 陸翔はというと、抱きかかえている蕾華動揺ニヤニヤとした視線を怜と桜彩へと向けている。


「わ、私も怜にやってもらったらって……」


 口をパクパクと慌てながら桜彩が驚愕の視線を蕾華へと返す。

 怜としても驚きで言葉が出てこない。


(そ、それって、俺が桜彩を抱きかかえるように……)


(そ、それって、私が怜に抱かれちゃうような……)


 その光景を想像して顔を真っ赤にして俯いてしまう。


(ま、まあ、やってみたくはあるけど……)


(た、確かにそれやって欲しいけど……)


 好きな相手と目一杯密着するというのはそれだけで幸せだろう。

 しかしさすがにそれは恥ずかしい。

 いや、過去にもお姫様抱っこしたりおぶったりと同じくらい恥ずかしいことをしてはいるのだが。


「ねえサーヤ。別にれーくんにそうやってもらうの嫌じゃないでしょ?」


「怜だってそうだよな? 別にさやっちにもたれかかられても嫌じゃないだろ?」


「え、えっと……うん……」


「ま、まあ嫌じゃないけど……」


 嫌じゃないどころか、羞恥心を無視すれば二人ともむしろ積極的にやってみたくはある。

 怜がチラリと隣に座る桜彩へと視線を向ければ、同じように桜彩も恥ずかし気に見上げてきており視線が交差する。


「え、えっと……そ、それじゃあ怜、そ、その……わ、私達もやって……みる…………?」


「そ、そう、だな……。や、やっても良い、かもな…………」


 そう言うと二人共一度目を逸らす。


(や、やった……! ら、蕾華さんと同じように怜にやってもらえる……!)


(い、良いんだよな……!? その、桜彩を抱きしめるような形になっちゃうけど……!)


 恥ずかしさと嬉しさで頭の中がいっぱいになり、一度深呼吸して心を落ち着ける。


「そ、それじゃあ怜……。その、失礼するね……」


 そう言って桜彩が立ち上がって、怜の前へと移動する。


「お、おう……。い、いつでもいいぞ……」


 怜も桜彩が座りやすいように両膝を離して体の前にスペースを開ける。

 それを確認した桜彩が百八十度体の向きを回転させ、怜に背中を向けて振り向く。


「え、えっと……おじゃまします…………」


 そう言ってゆっくりと桜彩が腰を下ろす。

 しかしまだ恥ずかしいのか、怜の前のスペースにちょこんと腰掛けただけで背中を預けるまでには至っていない。

 そしてそのまま顔を真っ赤にして目を瞑ってしまう。

 そんな桜彩を蕾華が『仕方ないなあ』というような目で見て立ち上がり


「えいっ!」


 と桜彩の両肩を押した。


「えっ!?」


「わっ!?」


 当然ながら蕾華に押された桜彩の体は怜の体へと倒れ込み、それを怜が胸で受け止める。

 そのスペースにすっぽりと入った桜彩が赤い顔のまま怜へと振り向く。


「え、えっと……」


「あ、ああ……」


(せ、背中に怜がいっぱいで……)


(む、胸の中に桜彩が……。それになんだか良い香りも……)


「うんっ! れーくんもサーヤも良い感じだよ!」


「ああ。蕾華の言う通りだな」


 恥ずかしさで顔を赤くした二人を親友二人がニヤニヤと見つめる。


「こ、これで、い、良いんだよね……?」


「い、良いと思うぞ……」


 なんと言うか、これまでにもこのように密着したことは何度もあったのだが、これまで以上に恥ずかしい。

 しかもゲームをすると言うことは、この格好が何時間も続くということだ。


「うんうん。良い感じ良い感じ!」


 そんな二人の姿を蕾華がスマホで撮影して見せてくる。


「う……」


「こ、これは……」


 なんというか、こうして見るとこれはいわゆるバカップルというものではないのだろうか。


「え、えっと……そ、それじゃあゲーム、始めるか……」


「そ、そうだね……」


 何はともあれ座ることは出来たので、当初の予定通り四人はゲームを開始した。

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