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【第九章完結】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第五章後編 ダブルデートと恋心の自覚

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第289話 恋を自覚した二人② ~親友との会話~

「さて。これならさやっちにも聞こえないだろ」


 そう言って陸翔が怜の後ろへと視線を向ける。

 昼間とは違い屋内のフードコートは、大盛況とまではいかない物のそこそこ利用客がいる。

 といっても満員というわけではないので、怜と陸翔、桜彩と蕾華は少し離れたテーブルへと座る。

 これならば陸翔の言う通りそこそこ距離も離れているし、他人の声もノイズとなるのでこちらの話が桜彩に聞かれることは無いだろう。


「それで、どうしたんだ?」


 購入したコーヒーには手を付けずに陸翔がテーブルに身を乗り出して囁くように聞いてくる。

 質問の内容は先ほどと同じ。


「ゴンドラに乗った後、外を眺めてたんだよ。それで、もっとよく見ようと桜彩が立ち上がったところでゴンドラが揺れた。で、俺が桜彩を支えた」


 まず事実についてのみを簡潔に答える。

 その返答を陸翔は何を言うでもなく真剣な表情で聞いている。

 重要なのはこの先だ。


「それで、な。支えるって言うか、桜彩を抱きしめるような形になって……。それで、その……桜彩に悪いと思って慌てて離れようとしたんだけど…………。でも、桜彩が『嫌じゃないから』って言って、逆に抱きしめられて…………」


「お、おぉ……」


 期待気に目を輝かせる陸翔。

 そんな陸翔に対し怜は一度言葉を区切って唾を飲み込む。

 大きく深呼吸して心を落ち着かせる。

 そして続きを待つ親友に対して


「今まで桜彩に抱いていた気持ち。陸翔と蕾華に対してとは全く違う別の気持ち。それが、その、何なのか……自覚…………した……………………」


 一番大切なことを伝えた。


(おお…………!)


 怜の言葉を聞いて陸翔が内心で大きく喜ぶ。

 具体的にその気持ちが何なのかは聞いていないが、もう間違いなく自分の予想と違うことは無いだろう。

 怜と桜彩の関係を知ってから二か月以上ずっとヤキモキしていたのだが、ついに怜が桜彩に対する気持ちに気が付いてくれた。

 そして多分、先ほどの桜彩の反応から察するに桜彩の方も怜に対する気持ちに気が付いていてもおかしくは無い。


「それで、その気持ちってのは?」


 一応念の為に確認してみる。

 自分から『さやっちのことが好きなんだな?』と確認しても良いのだが、それよりも怜の口からはっきりと聞きたい。

 しかし怜の言葉は陸翔の予想とは少し違った。


 陸翔の問いに少し考えこむ怜。

 桜彩に対する気持ち。

 それはもうはっきり『好き』や『恋』だと自覚している。

 しかし陸翔の問いに対して怜は言葉に詰まってしまう。


「……………………」


「怜?」


 不思議そうに陸翔が聞いてくる。

 確かにもうここまで伝えて、その気持ちについて言葉を濁す必要は無いのかもしれない。

 しかし、それでも――


「その、な……。多分、陸翔が考えている通りだと思う」


「怜……。今更ごまかさなくても良いだろうが」


 不満気に睨むような目を向けてくる陸翔。

 まあそれも分からないでもない。

 しかし、それでも怜はこの気持ちを表す言葉を目の前の親友に一番最初に伝えたくはない。


「ごまかすとかじゃないんだよ。俺のこの、桜彩に対する気持ちはさ、一番最初に桜彩に伝えたいって思ってるんだ」


 桜彩のことが好き。

 それを一番最初に伝えたい相手は、目の前にいる陸翔でも蕾華でもなく桜彩だ。

 それを聞いた陸翔は不満げな顔をやめて、ふっ、と笑う。


「そっか。なら良いや」


「ありがとな」


「お礼を言うことじゃないだろ」


「それでもだよ。だってさ、俺が桜彩のことをそう思ってるってこと、陸翔も蕾華もずっと前から気付いてたろ?」


 間違いなくこの親友達は、自分が桜彩のことが好きだと気が付くよりも遥かに早く、それに気が付いていたはずだ。

 その問いに陸翔は苦笑して答える。


「そりゃあな。お前の見舞いに行ったその日から気付いてたって」


 親友以外の同級生を誰一人として入れなかった怜の部屋。

 そこで桜彩と『あーん』でプリンを食べさせ合っている所を見られた。

 その時にはもう既に気が付いていたということか。


「言っとくけどお前の言う通り蕾華もだからな。分かってると思うけど」


「ああ。ありがとな」


「ん? だから別に礼を言われることじゃないだろ」


「いや、それからずっと、俺達にそのことを気付かせてくれようとしてただろ?」


 今にして思えば思い当たる節は数多くある。

 桜彩とのピクニックでデートという言葉を使ったのをはじめとして、この親友二人は事ある毎に色々と意識させようとしてくれていた。


「良いってことよ。こうして気付いてくれたんだからな。大分時間かかったけど」


「う……。そ、それは…………」


「ははっ。だから構わないって。それよりもこれからどうするんだ?」


「ん。いずれこの気持ちは桜彩に伝えたいと思う。たださ、自分の気持ちに気が付いたから焦ってそれを伝えるのも違うと思うんだ」


「まあ言いたいことは分かる」


 納得したように陸翔が頷く。

 無理やりせかしてきたりしないところが本当にありがたい。


「だからさ、蕾華共々これからも相談に乗ってくれるか?」


「聞くまでもねえだろ。当然だ」


 そう言って陸翔が右手を軽く握って差し出してくる。

 それに自分の右手をコツンと当てて二人で笑い合う。

 楽しそうに笑う陸翔を見て、怜も随分と胸が軽くなったような気がしてきた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「さてと。これなられーくんにも聞こえないからね。それでどうしたの?」


 購入したコーヒーには手を付けずにテーブルに身を乗り出して囁くように聞いてくる蕾華。

 質問の内容は先ほどと同じ。

 それに対して桜彩は一口コーヒーを飲んでから口を開く。


「ゴンドラに乗った後、怜と一緒に園内を眺めながら今日の思い出を振り返って……。それで、私が立ち上がったところでゴンドラが揺れたの。危うく倒れそうになってくれた私を怜が支えてくれた……」


 まず事実についてのみを簡潔に答える。

 その返答を蕾華は何を言うでもなく真剣な表情で聞いている。

 重要なのはこの先だ。


「それで、その、支えてくれたって言うか、怜が私を抱きしめてくれて……」


「う、うん……」


 その時のことを思い出す桜彩の顔がにやけてしまう。

 なにしろ大好きな怜に抱きしめられたのだ。

 対面でニヤニヤと笑う蕾華に気が付いて、慌てて表情を引き締め直して続きを口にする。


「それで、その……怜が申し訳なさそうにして、慌てて離れようとして……。もちろん怜が申し訳なく思う必要なんてこれっぽっちもないわけだから、だから私も『嫌じゃないから』って言って、逆に怜を抱きしめて…………」


「うん! うん!」


 期待気に目を輝かせる蕾華。

 そんな蕾華に対し桜彩は一度言葉を区切って唾を飲み込む。

 大きく深呼吸して心を落ち着かせる。

 そして続きを待つ親友に対して


「今まで怜に抱いていた気持ち。蕾華さんや陸翔さんに対してとは全く違う別の気持ち。それが、その、何なのか……自覚…………したよ……………………」


 一番大切なことを伝えた。


(わあ…………!)


 桜彩の言葉を聞いて蕾華が内心で大きく喜ぶ。

 具体的にその気持ちが何なのかは聞いていないが、もう間違いなく自分の予想と違うことは無いだろう。

 桜彩と怜の関係を知ってから二か月以上ずっとヤキモキしていたのだが、ついに桜彩が怜に対する気持ちに気が付いてくれた。

 そして多分、先ほどの怜の反応から察するに怜の方も桜彩に対する気持ちに気が付いていてもおかしくは無い。


「それで、その気持ちってのは?」


 一応念の為に確認してみる。

 自分から『れーくんのことが好きなんだね?』と確認しても良いのだが、それよりも桜彩の口からはっきりと聞きたい。

 しかし桜彩の言葉は蕾華の予想とは少し違った。


 蕾華の問いに少し考えこむ桜彩。

 怜に対する気持ち。

 それはもうはっきり『好き』や『恋』だと自覚している。

 しかし蕾華にそう問われた桜彩は言葉に詰まってしまう。


「……………………」


「サーヤ?」


 不思議そうに桜彩が聞いてくる。

 確かにもうここまで伝えて、その気持ちについて言葉を濁す必要は無いのかもしれない。

 しかし、それでも――


「その……。私のこの気持ちは、多分、蕾華さんが考えている通りだと思う」


「サーヤ……。今更ごまかさなくても良いでしょ」


 不満気に睨むような目を向けてくる蕾華。

 まあそれも分からないでもない。

 しかし、それでも桜彩はこの気持ちを表す言葉を目の前の親友に一番最初に伝えたくはない。


「ごまかすとかじゃなくて……。私のこの、怜に対する気持ちは一番最初に怜に伝えたいって思ってるの」


 怜のことが好き。

 それを一番最初に伝えたい相手は、目の前にいる蕾華でも陸翔でもなく怜だ。

 それを聞いた蕾華は不満げな顔をやめて、ふっ、と笑う。


「そっか。なら良いや」


「ありがとう」


「お礼を言うことじゃないって」


「ううん、それでも。だって、私が怜のことをそう思ってるってこと、蕾華さんも陸翔さんもずっと前から気付いてたでしょ?」


 間違いなく自分が怜のことが好きだと気が付くよりも遥かに早く、それに気が付いていたはずだ。

 その問いに蕾華は苦笑して答える。


「それはね。れーくんの見舞いに行ったその日から気付いてたって」


 親友以外の同級生は誰一人として入れなかったであろう怜の部屋。

 そこで怜と『あーん』でプリンを食べさせ合っている所を見られた。

 その時にはもう既に気が付いていたということか。


「言っとくけどサーヤの言う通り、りっくんも気付いてたからね。分かってると思うけど」

「うん。ありがとう」

「え? 別にお礼を言われることじゃないって」

「ううん。それからずっと、私達にそのことを気付かせてくれようとしてたでしょ?」


 今にして思えば思い当たる節は数多くある。

 怜とのピクニックでデートだということを強調したことをはじめとして、この親友二人は事ある毎に色々と意識させようとしてくれていた。


「あはは、構わないって。こうして気付いてくれたんだからさ。まあ気付くまでが長かったけど」


「う……。そ、それは…………」


「あははっ。だから構わないって言ってるじゃん。それよりもこれからどうするの?」


「えっと……。いずれこの気持ちは怜に伝えたいと思ってる。ただ、自分の気持ちに気が付いたから焦ってそれを伝えるのも違うと思うんだ」


「まあ言いたいことは分かるよ」


 納得したように蕾華が頷く。

 無理やりせかしてきたりしないところが本当にありがたい。


「だからさ、陸翔さん共々これからも相談に乗ってもらえる?」


「聞くまでもないって。当然でしょ?」


 そう言って蕾華が右手を軽く握って差し出してくる。

 それに自分の右手をコツンと当てて二人で笑い合う。

 楽しそうに笑う蕾華を見て、桜彩も随分と胸が軽くなったような気がしてきた。

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