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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第五章後編 ダブルデートと恋心の自覚

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第288話 恋を自覚した二人① ~自覚した故のぎこちなさ~

 桜彩の顔を見つめたまま、怜は自分の顔が真っ赤に染まっていることを自覚する。


『好き』


 桜彩に対する気持ちの答え。

 その言葉を頭の中で反芻すると、パズルのピースがはまったようにしっくりとくる。


(そっか……。そうなんだよな……。俺、桜彩のことが、その……好き、なんだ…………)


 抱き合うように胸の中にいる桜彩と見つめ合う。


(え……。こ、これって……)


 今のこの状況。

 つまり今自分は好きな相手を抱きしめているというわけで。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 怜の顔を見つめたまま、桜彩は自分の顔が真っ赤に染まっていることを自覚する。


『好き』


 怜に対する気持ちの答え。

 その言葉を頭の中で反芻すると、パズルのピースがはまったようにしっくりとくる。


(そっか……。そうなんだよね……。私、怜のことが、その……好き、なんだ…………)


 抱き合うように胸の中にいる怜と見つめ合う。


(え……。こ、これって……)


 今のこの状況。

 つまり今自分は好きな相手を抱きしめているというわけで。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「も、もう安全だよな……」


「う、うん……」


 一度お互いの背に回した腕を解き、先ほどのように対面に座り合う。

 しかしその空気は先ほどとはまるで違う。

 何しろ好きだと自覚してしまったのだ。

 そんな相手と抱き合っていたという事実。


「あ、あの……」


「う、うん……」


「……………………」


「……………………」


 会話が続かない。

 どう話して良いか分からない。

 とはいえ時はそのまま流れ続ける。

 無言の二人を乗せた観覧車はそのまま動き続け、ついに地上へと戻って来る。


「そ、それじゃあ桜彩……」


「うん……。ありがと……」


 係員の開けた扉から一足先に出た怜が桜彩に手を差し出すと、そっと桜彩がそれを掴んで降りてくる。


「「あ……」」


 ゴンドラから降りた瞬間目が合ってしまい、二人共同時に目を逸らしてしまった。


(…………ヤバイ。桜彩の顔がまともに見れない…………)


 桜彩に対する自分の気持ちを自覚した今、どのように桜彩と接すれば良いのか分からなくなってしまった。

 今までずっと持っていたこの想い。

 一度それを意識してしまうと顔が真っ赤になってどう声を掛けて良いのか分からない。

 気持ちを自覚したからと言って、桜彩に『好き』と自分の気持ちを伝えたわけではない。

 故にこの関係は今までとは全く変わっていない。

 であれば、いつものように笑って声を掛けるだけ。

 しかしそれが出来ない。

 心臓は過去最高にバクバクと早い心音を奏でており、落ち着く気配がまるでない。


『観覧車、たのしかったよな』


 そうなんとか声を出そうとするが、口から言葉が出るその直前で慌てて口を閉じてしまう。

 それでも思い切って桜彩の方を向くと、ちょうど桜彩もこちらの方を向き視線がぶつかり合い――即座に離れた。

 少し離れた場所で行われているパレードの音が、どこか別世界のように感じてしまう。

 繋いでいる手から伝わる桜彩の体温だけが、今ここにある現実のように感じてしまう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(…………ど、どうしよう。怜の顔がまともに見れないよぅ…………)


 怜に対する自分の気持ちを自覚した今、どのように怜と接すれば良いのか分からなくなってしまった。

 今までずっと持っていたこの想い。

 一度それを意識してしまうと顔が真っ赤になってどう声を掛けて良いのか分からない。

 気持ちを自覚したからと言って、怜に『好き』と自分の気持ちを伝えたわけではない。

 故にこの関係は今までとは全く変わっていない。

 であれば、いつものように笑って声を掛けるだけ。

 しかしそれが出来ない。

 心臓は過去最高にバクバクと早い心音を奏でており、落ち着く気配がまるでない。


『とっても綺麗な景色だったよね』


 そうなんとか声を出そうとするが、口から言葉が出るその直前で慌てて口を閉じてしまう。

 それでも思い切って怜の方を向くと、ちょうど怜もこちらの方を向き視線がぶつかり合い――即座に離れた。

 少し離れた場所で行われているパレードの音が、どこか別世界のように感じてしまう。

 繋いでいる手から伝わる怜の体温だけが、今ここにある現実のように感じてしまう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ゴンドラが到着し、陸翔と蕾華はそこから降りてすぐに怜と桜彩の姿を見つけた。


((……あれ?))


 しかしこの親友二人の様子がいつもとはまるで違う。

 いつもであれば、それこそ恋人かと見間違うかのごとく仲良さそうにしているのだが、どういうわけか今は二人ともなぜかよそよそしい。

 チラチラと相手の顔を見ては目を逸らし、再び顔を見て――また逸らす。

 それこそたった今到着した自分達親友のことに気付いてすらいない。

 別に喧嘩をしているわけではないだろう。

 その証拠に怜の右手と桜彩の左手は、今も仲良く繋がれている。

 今までとはまるで違う雰囲気に、陸翔と蕾華は何かあったのだと確信する。


「りっくん……」


「ああ……」


 それだけ言って二人で顔を合わせる。

 以心伝心というものか、それだけで二人は今やるべきことを確認する。


「怜、さやっち」


「えっ!?」


「ひゃいっ!?」


 様子の違う二人に声を掛けると、慌てたような返事が返って来た。

 本当に自分達が到着したことに今気が付いたのだろう。


「どうかしたのか?」


「ど、どうかって……?」


「べ、別にどうも……」


 怜も桜彩も自覚はあるのか目を逸らしながら小さな声で答える。


「いや、もう何かあったって言ってるようなものだからな」


「うんうん」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(そ、そう言われてもな……)


(そ、そう言われても……)


 何かあったのかと言われても、怜も桜彩も素直に頷くことは出来ない。

 実際に二人の間には何もなかったのだ。

 ただ、お互いに相手のことを好きだと自覚した。

 変わったのは二人の関係ではなく心の中だけ。

 とはいえ二人共、その相手が横にいる現状、それをそのまま伝えるわけにもいかない。

 チラリと横を見ると目が合ってしまいすぐにまた目を背けてしまう。


「なあ、蕾華……」


「うん……」


 陸翔も蕾華も今のやり取りで、怜と桜彩がお互いに何か言えないことがあるのだと理解した。

 であればこの後の行動は一つ。


「なあ、怜」


「ん?」


「ねえ、サーヤ」


「え?」


 陸翔が怜に、蕾華が桜彩に声を掛けて


「ちょっと話そうぜ?」


「ちょっと話さない?」


 それぞれ同性の親友相手の話し相手に立候補した。

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