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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第五章後編 ダブルデートと恋心の自覚

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第279話 フードコートで昼食を

「それじゃあ買って来るぞ」


「おう。席の確保しとくからな」


「お願いねー」


 昼食時、遊園地内のレストランは込み合っている為にフードコートで食べることにした。

 遊園地には室内のフードコートだけではなく、外の広場の周りにキッチンカーが集結しており、そこで買った物を広場に置いてあるイスとテーブルで食べることも出来る。

 天気が良い為に四人で広場の方へと向かうと、広場に置かれたテーブルはそのほとんどが埋まっており各店舗の前にも人が並んでいる。

 買いに行くのは陸翔と蕾華に任せ、怜と桜彩で空いている席を探す。

 最初は怜と陸翔で買いに行こうとも思ったのだが、桜彩と蕾華の二人を残してしまうと面倒なことになりかねない。

 何しろ二人共とても目を引く美少女だ。

 カップルや家族連れが多いとはいえ、男の友人同士で楽しんでいる者も少なくはない。

 そんな彼らに声を掛けられてもおかしくは無いのでそれを防止する目的だ。

 二人でテーブルを見て回るが、フードコートの方もそこそこ込み合っており席を探すのも一苦労。

 すると桜彩が少し離れた一角に目を向ける。


「あっ、あそこ!」


 桜彩の指さす方を見れば、ちょうどテーブルが一つ空いたのを見てそこに滑り込む。


「ふう、なんとか座れたな」


「うん。ラッキーだったね」


 腰を下ろして一息つきながら二人でやれやれと肩をすくめる。


「まあ席は確保出来て良かったよ」


「うん。でも何を買って来るんだろうね?」


「さあなあ。あの二人なら結構ネタに走ってもおかしくないし。まあ激辛とかそういうのは無いと思うけど」


 何を買うかは二人に一任している。

 座ったまま二人を探すと既に商品は購入したようで、大きめのトレーを抱えて周囲を見回している。

 立ち上がり二人に向かって手を振ると、二人共すぐにこちらに気が付いて速足で向かって来る。


「買ってきたぞー」


「おっまたせーっ! さあ食べよ!」


 二人が持ってきたトレーがテーブルに置かれ、その上には人数分のドネルケバブとコーラ。

 それに皆で摘まめる大量のボックスポテト。

 ジャンク感溢れるラインナップであり、このような場所で食べるのにはもってこいだ。


「あっ……サーヤ、そういえば炭酸大丈夫?」


 怜としても普段から桜彩が炭酸系の飲み物を飲んでいるのは見たことはない。

 もしかしたら炭酸が苦手という可能性もあるだろう。

 しかしそんな心配を桜彩は杞憂だというように首を横に振る。


「うん。普段は飲まないけど嫌いじゃないよ」


「そっか。良かった」


 安心したように蕾華が胸を撫で下ろす。

 怜がボディバッグからウェットティッシュを取り出し皆に配って手を拭くと、早速陸翔が紙コップを掲げる。


「それじゃあはい。かんぱーい!」


「「「乾杯」」」


 コーラの入った紙コップをこつんと当ててそのままストローに口を付ける。

 シュワシュワとした炭酸の感覚が口の中で弾け、なんというか爽快感を感じる。


「いただきまーす!」


 早速桜彩がドネルケバブへと手を伸ばす。

 半分に切られたピタパンの切り口からは、溢れんばかりの肉と野菜とソースが顔を覗かせて、そこから漂ってくる香りが食欲をわきたてる。

 切り口から飛び出した具材をこぼさないように持ち上げて顔の前へと運んだところで一瞬躊躇してしまう。

 初めて食べるであろうそれにおっかなびっくりとしながら、はむっ、とそのまま可愛らしくかぶりつく。


「んっ! 美味しい!」


 空いた手で口元を押さえながら嬉しそうに顔を緩ませる。

 怜もケバブにかぶりつくと、肉や野菜、ピリ辛ソースの旨味が口の中に広がっていく。


「美味いな、これ」


「だろ? オレのチョイスだ。ホットドッグとかハンバーガーとかと違ってこれはあんまり食べる機会が無いからな」


「うん。アタシも去年の文化祭でれーくんが作って以来食べてないはず」


「そうだな。俺もこういったのは普段作らないし」


 怜も昨年の文化祭で作って以来食べていないが、久しぶりに食べるという後押しもあってかより美味しく感じる。


「それじゃあ次はポテトを貰うね」


 ボックスに山盛りに盛られたポテトへと手を伸ばす桜彩。

 とそこで怜は桜彩の口元に今しがた食べたばかりのケバブソースが付いていることに気が付く。

 ピタパンの中に具材が溢れんばかりに詰め込まれている為、どうしても口周りに付いてしまうのは避けられない。


「桜彩。ちょっと待って」


「え? どうしたの?」


 ポテトへと伸ばしかけた手をとめてきょとんとする桜彩に、怜はポケットティッシュを取り出してその口元へと当てる。


「あ……」


 桜彩もそれで分かったのか、恥ずかしさで顔を赤くして怜の手を受け入れてくれる。

 そっと手を伸ばして優しく口元を拭く怜。

 一瞬、ティッシュ越しに桜彩の柔らかい唇に触れてしまいドキッとする。


(そ、そう言えば、バーベキューとか初デートの時もこういうことがあったな)


 照れながら桜彩の口を拭き終えると、桜彩がにっこりと笑ってお礼を言ってくれる。


「あ、ありがとね、怜」


「ど、どういたしまして……」


「そ、それじゃあ次は私の番だね……」


「え……?」


 戸惑う怜の口元に、今度は顔を赤くした桜彩がそっとティッシュを近づけていく。

 よく考えれば怜もケバブを食べていたので当然口元にはソースが付着しているわけで。


「ほら、じっとしててね……」


「ん……」


 恥ずかしそうに拭いてくれる桜彩の手を黙って受け入れる。

 照れくさいが先ほど自分がやったからには黙って受け入れるしかないだろう。

 ティッシュ越しに唇に桜彩の指の感触が伝わってきて気恥ずかしい。


「ほら、取れたよ……」


「あ、ありがと……」


「…………」


「…………」


 お互いに照れ合ってしまう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねえ……」


「ああ……」


 一方で一緒に食事をしているはずがいつの間にか蚊帳の外へと置かれてしまった蕾華と陸翔。

 だからなんでこれで付き合っていないのかと呆れてしまう。


「これ以上どうやったら関係進むのかな……」


「地道にやってくしかねえだろうな……。とりあえずはこれ食べたら例のヤツ行こう」


「うん。でもこの二人なら普通にやりそうだけどね……」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 呆れる二人をよそに怜と桜彩は食事を続けていく。


「そ、そういえばさっき桜彩はポテトを食べようとしてたよな」


「え、う、うん……」


 ポテトに手を伸ばそうとしたところで、桜彩の口元のソースを怜が拭ったのだ。


「それじゃあ……はい、あーん」


「あっ……」


 桜彩より先にポテトへと手を伸ばしそこから一本を摘まんで桜彩へと差し出すと、桜彩が嬉しそうに口を開ける。


「あーん」


 空いた口にゆっくりとポテトを伸ばすと桜彩が美味しそうに食べていく。

 時々思うがこうして桜彩に食べさせていると、小動物のように思えて可愛らしい。


「うん、美味しいよ。それじゃあ次は……はい、あーん」


「あーん……うん、美味しいな」


 今度は逆に桜彩が差し出してきたポテトを食べていく。


「じゃあ次はまた俺の番だな。あーん」


「あー……あっ!」


 差し出したポテトに桜彩が口を伸ばしたその瞬間、怜はポテトを引き戻す。

 結果として桜彩の口はポテトを捉えることなく空を切った。

 初デートの時にもやった怜のイタズラだ。


「むーっ! 怜、またやった!」


 両頬をぷくっと膨らませて桜彩が睨んでくる。

 言うまでもなくそんな桜彩も可愛らしい。


「あははっ。成功成功」


 そう言って桜彩に食べさせるはずだったポテトを桜彩に見せつけるように一口齧る。


「うん。美味しいな」


「むーっ! だったら、えいっ!」


「わっ!」


 気を抜いた瞬間、桜彩が怜の手を掴んでそのまま手に持ったポテトを自分の方へと寄せてくる。


「あむっ!」


 そして怜の持っていたポテトを一口齧った。

 怜の食べかけの場所から。


「ふふっ。どうだ!」


「むっ! だったら……」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねえ……」


「言うな、蕾華……」


 この二人のいちゃつきを特等席で見せつけられて、呆れたため息を吐く親友二人。

 この時、親友二人の考えていることはいつも通り。

 すなわち


(だからなんで付き合ってないの!)


(なんでこいつら付き合ってないんだよ!)



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 言うまでもなくこれはフードコートで行われた一幕である。

 人気遊園地のお昼時ということで当然フードコートにはかなりの人がいた。

 そんな中、周囲の視線は怜と桜彩で二人占めだ。


「ねえねえ。あたし達もあれやってみる?」


「いや……恥ずかしい……」


 というカップルの会話や


「すっごく仲良さそう! もうずっと付き合っちゃってるのかな?」


「そりゃそうでしょ。あんなに自然にあーんってやったりしてるんだし」


 という友人同士の会話や


「すっごいお似合いだよね。彼氏もカッコイイし、彼女もすっごく美人だし」


「うんうん。それが二組でしょ? いいなあ」


「もう一組の方はやらないのかな?」


 という会話がなされており、当然ながら怜と桜彩が恋人同士ではないことに気付いている者は一人たりともいなかった。


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