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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第五章後編 ダブルデートと恋心の自覚

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第277話 膝枕で休憩

「ふう…………」


 ベンチに腰掛けたまま一息つく怜。

 休日のこのキサラギパークは既に大勢の人が訪れており、この場所は人が少ないとは言えど通行人はそこそこいる。

 その多くが怜達の方を見てクスリと穏やかな笑みを浮かべながら歩いている。

 中には一緒に来たであろう相手と何やら楽しそうに会話をしている者もいる。

 その理由は一目瞭然。


「桜彩、大丈夫か……?」


「う、うん……。もう少し待って……」


 怜の問いに答える桜彩。

 怜の隣に腰掛けている――というより怜の膝の上に頭を置いてぐったりとしている。

 傍から見れば、これはいわゆる膝枕。

 陸翔と蕾華が飲み物を買いに行っている為に、怜はベンチで桜彩を膝枕することとなっていた。

 ついでに膝の上にある桜彩の頭を優しく撫でる。

 すると桜彩がぐったりとしながらも嬉しそうに表情を緩める。

 当然ながら通行人の視線を集めてしまうのも仕方のないことだ。

 本人達はまるで気が付いていないのだが。

 どうしてこのようなことになったのかと言えば、それは当然ジェットコースターのせいである。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「うぅ……怖かったあ…………」


 マシンが発着所へと戻って来ると、まだ恐怖が抜けきっていない桜彩が震える足でマシンから降りる。

 顔は青くなっており、今にも泣きだしそうな表情だ。

 ちなみに乗っている時は絶えず恐怖の叫び声を出していた。

 これを設計した人にとっては、ここまで恐怖を感じてくれて感無量だろう。


「桜彩、大丈夫か?」


「う、うん……。怖かったけど、でも楽しかったから……」


「そ、そっか……」


「うん。でもね……その……ちょっとまだ怖いから、体、支えてくれる……?」


 ふらふらとしながら上目遣いで潤んだ瞳を向けてそう問いかけてくる。

 当然ながら怜の返答は一つだけだ。


「ああ。ほら」


「うん。ありがと」


 そう言って差し出した怜の腕に自分の腕を搦める桜彩。

 それだけで表情が少しばかり明るくなる。

 とはいえまだ足下がおぼつかない為か体重も怜の方へと預けてくる。


「ごめんね」


「気にするなって。どうだ、歩けるか?」


「うん。こうやって怜に掴まってれば大丈夫だよ」


「分かった。それじゃあ行くか」


 左手に桜彩を感じながら預けていた荷物を受け取ってジェットコースターを後にする。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんな二人を見ながら親友二人はそっと耳打ちをする。


「ねえりっくん。初っ端から良い感じじゃない?」


「そうだな。やっぱりこういう非日常感ってのが大事だよな」


 一番最初に絶叫系を押した結果、予想以上に良い感じになっている。


「うん。でもあの二人のことだからねえ。もっともっと後押ししなきゃ!」


「ああ。作戦通りにな!」


 手を組んで歩く怜と桜彩の姿を後ろからニヤニヤと眺める二人。

 そんな二人の会話が怜と桜彩の耳へと届くことはなかったが。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「サーヤ、気分はどう?」


「もうある程度は大丈夫だよ。それに怖かったけど、やっぱり楽しかったから」


 問いかける蕾華に桜彩が笑顔を作って答える。


「まあでも念の為に少し休んだ方がいいかもね。ほら、そこにベンチあるし」


 蕾華の指差す先には程よい大きさのベンチが置かれている。

 表通りに比べてここは人混みも少なく静かだし、少し休むのにはちょうど良いだろう。


「そうだな。蕾華の言う通り少し休むか」


「うん」


 そう言ってベンチの方へと移動する。

 コースターの上と違って優しく吹く風が体に当たって心地良い。


「あ、それじゃあオレ達は飲み物買ってくるから」


「二人共、何が良い?」


「あ、それじゃあお茶で」


「私もそれで」


「オッケー。それじゃあ少し待っててくれ」


「うんっ。行こっ、りっくん!」


 リクエストを聞いた陸翔と蕾華が中良さそうに二人で自動販売機の方へと向かって行く。

 そんな親友二人と別れて怜は桜彩をベンチへと座らせた。


「ふう。ここなら少しは休めるよな」


「うん。ありがとね、怜。でももうほとんど大丈夫だよ」


「気にしないで良いぞ。二人が来るまでゆっくりと休んでろって」


「ありがと。っと……」


 背もたれへと背を預けようとした桜彩だが、まだ上手に力が入らなかったのか怜の方へと倒れてくる。


「おっと」


 それを危なげなく受け止める怜。

 肩越しに見上げてくる桜彩と目が合う。


「あっ……ありがと……」


「ああ。どういたしまして……」


 なんだか恥ずかしい。

 二人とも顔を赤くしてしまう。


「ごめんね。すぐにどくから」


 そう言って体を起こそうとする桜彩だが、怜は桜彩を抱えた手に力を込めて、むしろそのまま桜彩の体を横にした。

 太ももに桜彩の頭の感触が伝わる。


「え? 怜……?」


 困惑する桜彩に対し、顔を赤くしたままゆっくりと答える。


「横になってた方が休まるだろ? 二人が戻って来るまでこうしてろって」


「あ……。うん、ありがと。それじゃあ少しだけこうしてるね」


「ああ。好きなだけ構わないぞ」


「ふふっ。ありがと」


 そう言って桜彩は安らかな顔で怜の膝へと頭を預ける。

 そんな桜彩の頭をゆっくりと撫でる怜。


「あっ……ふふっ。気持ち良い……」


「そっか。それじゃあもっと……」


 そうして桜彩の頭を撫で続ける。

 強くもなく弱くもなく、ちょうどいい力加減で。

 一撫でするたびに、膝の上の桜彩の表情が緩んでいく。


「私、こうしてるの好き……」


「ああ。俺も。なんだか平和っていうか幸せっていうか……」


「うん。もっと撫でて……」


「了解」


 桜彩のリクエストに応えるように頭を撫でていく。


「ふふっ……しあわせぇ……」


 とろんとした笑顔で甘い声を上げる桜彩。

 そんな桜彩の頭を怜はゆっくりと撫で続けていった。

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