第102話 猫に餌付けしたいクールさん
「ニャッ!」
「フーッ!」
四人が肉串を食べていると、ここまでお預けを食らっていた三匹が、そろそろ自分達にも食べさせろとアピールしてくる。
とりあえずバーベキューの方も良い感じに始めることが出来たので、そろそろ三匹にも食べ物を与えても良いだろう。
「れーくん、クッキー達に食べさせるのも持って来るって言ってたよね。何をあげていいの?」
「クーラーボックスの端の方にささみの入ったタッパーが入ってるから」
「あ、これだね!」
怜の言葉に蕾華がクーラーボックスを開けて、そこからタッパーを取り出す。
柔らかく煮て身をほぐしたささみは三匹の大好物だ。
タッパーの蓋を開けるとクッキーとケットが待ちきれないように蕾華へと寄っていく。
バスカーは『待て』の命令が下っているままなのでその場から動かないが、目はタッパーへと向いている。
「はい、サーヤ!」
「え?」
蕾華がささみを紙皿に移して桜彩へと渡すと、反射的にそれを受け取った桜彩がきょとんとした顔で蕾華を見る。
すると蕾華は桜彩に笑顔を向けながら
「ほらサーヤ。クッキーとケットにあげてみて」
「良いんですか?」
「もっちろん! 今日はサーヤの歓迎会なんだから!」
ささみの入った紙皿を持った桜彩が、予想もしなかった幸運に期待でそわそわしながら二匹へと視線を向ける。
猫にエサをあげるのは先日猫カフェに行った時以来だ。
視線の先では二匹が今か今かと目を光らせている。
「あ、紙皿は一旦別の場所に置いた方が良いかも。隙を見せるとそっちを狙ってくるから」
「は、はい!」
そういえば猫カフェでも猫用のクッキーが入った器を狙って来た子がいたことを思い出す。
スマホのカメラを起動しながらの蕾華の忠告に頷きながら、桜彩が紙皿をコンロのふちに置く。
ここならば二匹には届かないし、火が燃え移ることもない。
そしてささみをそっと摘まんで二匹の方へと差し出す。
「クッキーちゃん、ケットちゃん。ご飯だよ~」
そう言いながら嬉しそうにしゃがみこみ、ささみ持つ手を二匹の前に近づけていく。
それを見た二匹は一気に桜彩の下へと駆け出していく。
その姿を見てウキウキしながら桜彩が二匹へささみを食べさせようとすると
「ニャッ!」
「カーッ!」
「あっ!」
桜彩の笑顔が一瞬で驚きに変わる。
クッキーとケットが目にもとまらぬ速さで桜彩の手に猫パンチを繰り出したので、桜彩はささみを落としてしまう。
驚いている桜彩をよそに、二匹は桜彩が落としたささみを満足そうに咥えると、そのまま桜彩に背を向けて怜の足へとすり寄っていった。
「にゃぁ」
「ふなぁ」
怜の足に体をこすりつけるように甘える二匹。
それを見た桜彩の目が悲しそうな感じからジト目へと変わっていく。
「……怜、ずるい」
「いや、ずるいって言われても……」
別に特別なことをしているわけではなく、勝手に向こうから寄って来るのだ。
動物好きな怜としてそれはそれで嬉しいが、それで恨まれてはシャレにならない。
「……怜ってホントに動物に好かれやすいよね。前に行った猫カフェでも怜にばかり寄って来たし」
「まあ、そうだけど……」
昔からなぜか動物に懐かれることが多かったのは事実だ。
そのくせつい最近まで動物に触ることが出来なかったのはある意味拷問に近かったかもしれないが。
そんな葛藤など知らないかのようにクッキーとケットは怜の足に身を摺り寄せ続けながら美味しそうにささみを頬張る。
(……確かに猫カフェでも同じような感じになったな)
怜のトラウマを治すために行った猫カフェでも、猫達が自分にばかり寄ってきたせいで桜彩が拗ねてしまった。
少し前のことを思い出しながら、あの時はどうやって桜彩を宥めたのかを思い出す。
「クッキー」
「にゃ」
足下のクッキーを片手で抱き上げて胸に抱える。
嬉しそうにするクッキーを眺める桜彩の目が、より不満そうな色を帯びる。
「桜彩」
「え?」
突然名前を呼ばれてきょとんとする桜彩。
クッキーを左手で抱えて、右手でそんな桜彩の左手を空いている方の手で掴む。
「れ、怜?」
「ほら、触れてみて」
猫カフェの時と同じように、桜彩の手をとて怜の胸の中のクッキーへと触れさせる。
あの時も自分の膝の上に座る猫の上に、桜彩の手を取って触れさせた。
その時のことを思い出しながら当時の状況を疑似的に再現する。
「にゃあ」
怜に掴まれた桜彩の手がクッキーに触れるとクッキーも嫌がることなく桜彩に撫でられるがままになる。
「わ、わわっ……!」
「ほら、猫カフェでも同じようにしただろ?」
「え……う、うん……」
あの時のことを思い出しながら照れる桜彩。
嬉し恥ずかしで戸惑いながらも桜彩はクッキーを撫で続ける。
「ほら。せっかくの機会だから楽しまなきゃ」
「怜……。うん、そうだね! ありがとう、怜!」
先ほどまでのジト目から一転して嬉しそうに桜彩がクッキーを撫でていく。
怜の腕の中で嬉しそうに鳴くクッキー。
再びささみを与えると、今度は猫パンチを繰り出すこともなく、桜彩の手からささみを食べていく。
「わあっ! 怜、見て見て! クッキーちゃんにご飯食べさせられたよ!」
「ああ、良かったな」
ひとしきりクッキーを撫でると一度地面へと降ろし、今度は同じようにケットを抱きかかえて桜彩の手をケットへと導く。
嬉しそうにささみを与えたり、喉を撫でる桜彩。
「ケットちゃんはここが気持ちいいんだね。もっと撫でてあげるね」
「な~、にゃぁ」
「ふふふ、気持ちよさそう」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方で陸翔と蕾華は怜と桜彩を見ながら小声で囁き合う。
猫カフェに行ったことは聞いてはいたが、まさかそんなイチャイチャしているとは思わなかった。
「ねえねえりっくん、聞いた? あの二人、猫カフェでもあんなことやってたんだ」
「マジかあ。普段からはマジで考えられねえよな」
長く深い付き合いのある二人ですら、つい最近までは思いもよらなかった怜の行動に驚いてしまう。
しかしすぐに楽しそうにしている怜と桜彩の二人を微笑ましく思う。
「ホント、凄く仲良いよね」
「ああ。てかその姿を見れなかったのは残念だよなあ」
「二人共、自分達が今何やってるのかちゃんと理解してないよね」
「だよな。つか怜に手を握られるって、それ一部の女子にとってはかなり嬉しいシチュエーションだよな」
「サーヤ相手にはあんなこと自然に出来ちゃうんだね」
桜彩以外の女子、というか、同年代では男女問わずに陸翔と蕾華以外の相手には一定の距離を取り続けていた怜があんなに自然にコミュニケーションを取る事実に分かってはいたけれど驚きがある。
「さやっちの方もクーさんモードしか知らない奴が見たら驚くだろうな」
「だよね。まあアタシ達も最初に見た時は驚いたけど」
「相手が怜ってことを含めて余計にな」
そんなことを小声で話しながら、二人はバスカーにささみを与えながら怜と桜彩の姿を写真に収めていった。
申し訳ありません。
先日も後書きの所に書きましたが
現在当初の予定を外れてノープロットかつ書き溜めもしていない状況でして
明日は投稿出来ません。
月曜日に投稿出来るように頑張りますので
これからも応援をお願いいたします。




