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隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった【第九章 アフターストーリー(秋)】  作者: バランスやじろべー
第三章前編 歓迎会のバーベキュー

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第100話 バーベキュースタート!

「ファイヤーッ!!」


「ファイヤ―ッ!!」


 異常なほどのハイテンションで、バーベキューコンロに敷き詰められた炭にバーナーで点火する陸翔とそれを見てはしゃぐ蕾華。

 本日の主役である桜彩は怜と共に一歩引いてその様子を眺める。

 とはいえ怜と桜彩にもその気持ちは良く分かる。

 バーベキュー自体がテンションが上がる物だし、最初に炭に火が付ける時はなんとも言えない高揚感を感じる。


「よっしゃ、火ぃ点いたぞ!」


「バーベキュー、スタート!」


 炭が燃え盛り、薪の炎が舞い上がるのを見て、更にテンションを上げる二人。

 そんなハイテンションな二人の声で、その中心になって息を吹き込まれたように躍動を始めるコンロと共についにバーベキューがスタートした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 コンロ上には網と鉄板の二種類が置かれている。

 火の管理やその他諸々を陸翔と蕾華に任せて怜は食材の準備に取り掛かる。

 持って来たクーラーボックスを開けると、中から仕込みの終わった肉や野菜が顔をのぞかせる。

 昨日バーベキューの連絡を受けて、そのまま桜彩と二人で買いに出た物だ。

 その際に桜彩は自分もお金を出すと言っていたのだが、桜彩の歓迎会で逆にそれは三人に対して失礼に当たると言って頑として譲らなかった。

 数十センチある鉄串を取り出すと、興味深そうに桜彩が覗き込んでくる。


「あ、もしかしてその串にお肉を刺すの?」


「ああ、正解だ。肉や野菜をまとめて一本の串に刺して焼くぞ」


「わあ、すっごく楽しみ」


 これまでバーベキューを経験したことのがないと言っていた桜彩は、初めてのバーベキューに目を輝かせている。

 そんな桜彩を微笑ましく思いながら串に肉を刺そうとすると、桜彩がおずおずと聞いてくる。


「あの、怜。それ、私も手伝っていいかな?」


「え? 今日は桜彩の歓迎会なんだから、焼けるまでクッキー達と遊んでていいんだぞ」


「ううん、せっかくだから、私も怜達と一緒に作る楽しみも味わいたいなって。ねえ、駄目かな?」


 上目遣いで聞いてくる桜彩に、怜は自分の考えが間違っていたと改める。

 確かにバーベキューとは食べるだけではなく作ること自体も楽しみの一つだ。

 それに自分も桜彩と一緒に作ってみたいという思いが湧き上がってくる。


「そうだな、悪かったよ。それじゃあ一緒に刺していくか」


「うんっ、ありがとう!」


 そう言って桜彩が荷物の中から自分のエプロンを取り出す。

 もちろん誕生日に怜から貰ったプレゼントのエプロンだ。


「それじゃあ刺しちゃっていい?」


 楽しそうに桜彩が串を手に取る。


「あっ、ちょっと待った! 食材を取る前にそこの手袋を着けてくれ」


「あっ、ごめんね」


 早速刺そうとする桜彩を慌てて怜が止める。

 肉をはじめとした食材にそのまま触れては手が汚れてしまうため、使い捨ての手袋も一箱準備してある。

 それを両手に着けて、今度こそ串打ちを始める。


「怜、串打ちって何かコツみたいなのってある?」


「まあないわけじゃないけど気にしなくていいだろ。例えば火の通りやすさを考えれば一つの串には牛肉なら牛肉だけみたいに同じ食材しか刺さない方が良かったりするけど、一つの串に色々と刺した方が色んな味を楽しめるしな。あらかじめ食材は切ってあるし、自分の好きなように刺しちゃってくれ。あ、写真撮るんならいろどりを気にして刺す方が良いぞ」


「うん、分かった。それじゃあ刺していくね」


 怜の刺し方を見ながら、桜彩も串に食材を刺し始める。

 牛肉、椎茸、豚肉、パプリカ、鶏肉、ナス、牛肉と肉とその他を交互に刺していく。

 他にも玉ねぎやミニトマト、ピーマン等の様々な食材をそれぞれの串ごとに違った刺し方で刺す。


「おっ、いー感じじゃん」


 すると火の方が一段落したのか二人の後ろから蕾華が覗き込んでくる。

 カラフルに彩られたバーベキューの串は、見ているだけでテンションが上がる。


「サーヤも手伝ったんだ」


「はいっ。怜に教えて貰いながら刺しました。ですが、その、怜のように上手くいったかは分からないのですが……」


「全然大丈夫っしょ。バーベキューなんてのはこーゆーので充分充分。むしろそういう堅っ苦しくないようなのが魅力なんだから。あ、そうだ。一枚いっとくね」


 そう言いつつスマホを構えて串打ちしている怜と桜彩の写真を撮る蕾華。

 それに対して怜と桜彩も串うちを中断し、既に食材を刺し終えた串を持って笑顔で写真を撮られていく。

 何枚か写真を撮ったところで蕾華はスマホを片付けて、再び串の方へと目を向ける。


「あーっ、もう。れーくんの料理は見てるだけでおなかが空いてくるよ」


「分かります。物凄く見栄えが良いですよね」


「うんうん。それで、これもう焼いちゃうの?」


「いや、オリーブオイルを軽く塗ってから焼いた方が良いな。水分やうま味を逃さないようコーティングしてくれるし、つやが出て美味しそうに焼き上がるから」


「そうなんだ」


 感心したように呟く桜彩を横目にオリーブオイルの入った瓶を取り出してカップに移す。

 それをハケで肉串に軽く塗ってからいよいよ網の上に置いていく。

 豊かな色とりどりの食材が刺された櫛が、火で焙られて色を変えていく。

 鮮やかな赤、瑞々しい緑が炭火に触れ、そして空腹を誘うような焼けた香りが、バーベキュー場に広まっていく。


「わあっ! いい香り!」


 串から漂ってくる香りに桜彩が両手を胸の前で合わせて感激したように声をあげる。


「サーヤ、はい」


「あ、ありがとうございます、蕾華さん」


「ほら、怜も」


「サンキュー、陸翔」


 桜彩と怜に飲み物が渡されて四人でコップを掲げる。


「それじゃあ紙芝居の成功と、サーヤの入部を祝って! 乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 蕾華の言葉で四人でコップをコツンと当てる。

 そのままコップの中の烏龍茶を飲み干すと、色々と動いて温まった体に染み入っていく。


「あ、そうだ、写真撮ろ、写真! 撮って良いよね!?」


 返事も聞かずにスマホのカメラを起動する蕾華。

 特に異存はないのでコンロを背に四人で固まる。


「あ、サーヤ、はみ出してる! もっとれーくんの方に寄って!」


「こ、こうですか?」


 インカメラを起動したスマホを左手で掲げながら蕾華が指示を出すと、その指示通りに桜彩が怜へと身を寄せる。

 必然的に怜と桜彩の触れ合う面積が増えていく。


「し、失礼するね……」


「あ、ああ……」


 怜に寄り添う形になった桜彩が恥ずかしさから照れてしまう。


「あ、ちょっとれーくんもサーヤも下向かないで!」


 自分が原因にも拘らず不満げに声を上げる蕾華。

 仕方ないなと思いつつ、まだ微妙にひきつった顔を二人で上げる。


「それじゃあ撮るよ! はい、チーズ!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「サーヤ! 改めて入部してくれてありがと! ようこそボランティア部へ!」


「いえ、私こそ誘っていただいてありがとうございます。みなさんと一緒に活動出来る事が嬉しいですから」


 それを聞いた蕾華が嬉しそうに顔を綻ばせる桜彩の耳に口を近づけて囁くように聞いてくる。


「一緒に活動したいのはれーくんじゃなくて?」


 いたずらっ子のようにニヤッと笑いながらそう聞いてくる蕾華に桜彩の顔が一瞬で赤く染まる。


「い、いえ、れ、怜と一緒で嬉しいというのはその通りなんですが……蕾華さんや陸翔さんとも一緒に活動したいですよ……」


「ん-、サーヤ、可愛い!」


「か、からかわないでください……」


 真っ赤な顔をした桜彩を蕾華がぎゅっと抱きしめる。

 一方で怜と陸翔は肉串の様子を見ながら時々串をひっくり返したり塩胡椒を振ったりしている。


「肉串の他はないのか?」


 今はまだ網の上に肉串が何本か置かれているだけだ。

 ちなみにバーベキュー場の手配は全て陸翔と蕾華がやってくれた代わりに、食材の方は怜が担当している。


「いや、他にも色々と用意はしてきたけどやっぱり見た目にもビジュアル的にもこれからだと思ったからな」


「まあ確かにな」


 やはりバーベキューといえば肉だろう。

 それも串に刺した肉。

 バーベキューの代名詞と言っても過言ではない。


「少し時間をおいてから色々と出していくよ」


「そっか、楽しみにしてるぜ!」


「ああ、期待してくれ!」


「でも悪いな。仕込みの方は完全に任せちゃって」


「気にすんなって。それにバーベキュー場の手配とかの方は二人がやってくれたんだからお相子だろ」


 怜にしてみればそちらの方が色々と面倒くさい。

 適材適所というやつだ。


「ワンッ!」


 焼いていると匂いに釣られたのかバスカーが足下へと寄ってくる。

 後ろ足で立って鉄板の上を覗こうとするが少し高さが足りない。


「ちょっと待って、バスカー! 危ない、危ないから!」


「にゃあ!」


「みー!」


 すると今度はクッキーとケットも足下へと寄ってくる。

 鉄板はかなり熱くなっている為、うかつに触れると火傷してしまう。


「陸翔、三匹をお願い!」


「分かった。バスカー、伏せ! ステイ!」


「ワンッ!」


 陸翔が指示を出すと、即座にバスカーが身を伏せる。

 そのまま陸翔はバスカーの頭を撫でながらクッキーとケットを近づけないように引きはがす。


「三匹とも、ちょっと待ってて。もうすぐ食べさせてあげるから」


 怜が焼きながらそう語り掛けると三匹は少し大人しくなった。

 そんなことを話していると、目の前の食材の色が変わっていき先ほどよりも香りが強くなっていく。


「よし。そろそろ焼けてきたぞ」


「おう。美味そうだな!」


「口に合えばいいけど」


「信じてるぜ、怜!」


 ペットをあやしたまま親指を立ててサムズアップしてくる陸翔に怜は苦笑する。


「ま、実際に食べて美味しいって言ってくれると嬉しいけどな」


 それを聞いた陸翔が怜の耳に口を近づけて囁くように聞いてくる。


「美味しいって言ってほしいのはさやっちじゃないのか?」


 いたずらっ子のようにニヤッと笑いながらそう聞いてくる陸翔に怜の顔が一瞬で赤く染まる。


「い、いや、確かに桜彩に美味しいって言ってもらえると嬉しいけど、二人にもちゃんと美味しいって言ってほしいと思ってるぞ……」


「ククッ、照れんなって!」


「……からかうな」


 顔を赤くしてそっぽを向いた怜の背中を陸翔がバンバンと叩いてくる。

 それぞれが別々に顔を赤くしている怜と桜彩を、陸翔と蕾華は面白そうに笑いながら眺めていた。


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