『元 ーもとー』 ※漫才台本
理屈っぽい漫才の台本です
漫才台本『元』
ボケ 「先日街を歩いていたら、元カノとばったり会いましてね。」
ツッコミ「元カノと? なんか気まずくない?
俺やったら気が付かんふりとかするかもな~」
ボケ 「なんで? 全然気まずくないで」
「それで元カノと結構話して、元カノと結構盛り上がって、
元カノと今度また会おかってなったんですよ」
ツッコミ「ほぉ・・・良かったやないか」
ボケ 「まぁ、これをきっかけに元カノと元サヤに戻れたらとかね、
考えなくもないんですが」
ツッコミ「なんか、さっきから元カノ元カノって耳につくな~」
「今は彼女やないんやから、そないに元カノ強調せんでも」
ボケ 「ひょっとして、元カノって『元彼女』のことやと思てない?」
ツッコミ「違うんか?」
ボケ 「その子結婚しててな、前の苗字が『狩野』やねん」
ツッコミ「元カノやなくて、『元・狩野』かい! ややこしいな」
ボケ 「元カノな訳ないやん、元狩野やん、聞いたら分かるやろ」
ツッコミ「分かるかい! 今の苗字で呼べや!」
ボケ 「好きだった子を結婚後の苗字で呼ぶって、
なんか負けた気せえへん?」
ツッコミ「そこで勝ち負けを持ち出してくる感性が分からん!」
ボケ 「まぁ、付き合ってはなかったんですけど、
ボクはその子のこと好きやったんですよ」
ツッコミ「付き合ってない? お前さっき『元サヤ』に戻れたら
とか言うてなかったか?」
ボケ 「言うてましたよ」
ツッコミ「ほな付き合ってたんやないか!」
ボケ 「お前、ひょっとして元サヤのことなんかと勘違いしてない?」
ツッコミ「別れた男女がよりを戻すことを『元サヤ』言うやないか?」
ボケ 「違う違う、俺が『元さや』やねん」
ツッコミ「どういうこと?」
ボケ 「俺の前の苗字が『佐屋』やねん」
ツッコミ「元サヤやなくて『元・佐屋』かい! ていうか、
お前の旧姓 佐屋なん?婿入りしてたん?初耳やで?」
ボケ 「結婚はしてないけど、複雑な家庭の事情があんねん」
ツッコミ「まぁ・・・相方とはいえお互いのプライバシーに
土足で踏み入る気はないけどな・・・」
ボケ 「要するに、お互い旧姓に戻って、フラットな関係から
始めたいなっていう希望を述べただけや」
「で、元カノと元サヤでいろいろ話をしたわけですわ」
ツッコミ「ややこしいな・・・ほんで?」
ボケ 「僕ら、もともと町に住んでましてね」
ツッコミ「ん?」
ボケ 「だから僕と元カノ、もともと町に住んでたんです」
ツッコミ「もともと町って・・・今、どこ住んでんねん?」
ボケ 「どことは?」
ツッコミ「だから、村に住んでんのか、山にすんでんのか、
町に住んでんのか・・・」
ボケ 「まぁ、大阪市内やから、どちらかというと町やなぁ」
ツッコミ「ほな、今も町に住んでるやないか!
もともと町に住んでたってどういうことやねん」
ボケ 「お前、ひょっとしてもともと町に住んでたってのを、
もともと町に住んでたって勘違いしてない?」
ツッコミ「だからぁ、お前がもともと町に住んでるって
言うてるやないか!」
ボケ 「違う違う、僕は『元・元町』に住んでたのであって
『もともと、町に住んでいた』のやないよ」
ツッコミ「ちょっと待て、整理する」
「お前は、もともと町に住んでいた」
ボケ 「違う違う、元・元町に住んでいたが正解やで」
ツッコミ「元町って神戸の?」
ボケ 「せやで」
ツッコミ「要するに『元・元町』民で、もともと町民ではないと
そういうことやな」
ボケ 「ようやっと理解したんかい、飲み込みの悪い奴やなぁ」
ツッコミ「分かるかい!」
「以前とか、かつて住んでたとかそういう言い方せえや!
元町に元を被せる感性が分からん!」
ボケ 「えー、普通分かるやろ」
「もともと、元・元町住みのことをもともと町に住んでるって思う?
普通はもともと元・元町住みって思うやろ?」
ツッコミ「もともともともと言うな! 頭おかしなるわ!」
ボケ 「もっともっと言うで」
ツッコミ「被せんでええ!」
ボケ 「で、僕らはお互い元・元町在住でたまに遊んだりしてたんですよ」
ツッコミ「まだ、続くんかい・・・そんで?」
ボケ 「ある日、二人で飲んでるとそこに元カレが現れましてね
・・・いやぁ修羅場でしたわ」
ツッコミ「元・カレさん・・・「カレ」ね、珍しい名字やな」
「・・・どんな字書くんやろ?」
ボケ 「で、元カレが元カノに食って掛かっていくんですよ
こいつ誰やねんと」
ツッコミ「元カレさんからしたら面白くないわな、かつての彼女が
どこの馬の骨とも分からん奴と一緒なわけやから」
ボケ 「お前、ひょっとして元カレのこと、旧姓カレさんと思ってない?」
ツッコミ「今までの流れからしたらそうやろ? 違うんか?」
ボケ 「ここは普通に元彼氏のことやで」
ツッコミ「元カレでええんかい!」
ボケ 「あと、元カレって元カノの元カレやと思てない?」
ツッコミ「元カノ元カレ・・・ややこしいな・・・違うんかい?」
ボケ 「俺の元カレやで」
ツッコミ「お前の元カレかい!」
ボケ 「あと、お前勘違いしてるみたいやけど、元・狩野さんも男やで」
ツッコミ「登場人物全員男かい!修羅場度が俺の中では一気に5割増しになったぞ!」
「っていうか、元カノ結婚してるっていうてなかったか?」
ボケ 「法律婚はでけへんから、養子縁組してるみたいやで」
ツッコミ「まぁ、俺はその辺りの事情に疎いけど・・・」
ボケ 「そんで、僕が元カノと楽しんでるのが元カレは面白くなかったんでしょうね」
「俺と元サヤに戻れって、強引に迫ってくるんですよ」
ツッコミ「元サヤって・・・お前のその、複雑な家庭の事情を解きほぐして
旧姓に戻れってことか?」
ボケ 「そこは普通によりを戻す『元サヤ』のことやで」
ツッコミ「さっきから言葉の意味が分かりにくい!」
ボケ 「あと、佐屋に戻って欲しかったって意味もなくはないで」
ツッコミ「そこはダブルミーニングなんかい!」
ボケ 「その事件がきっかけで、僕と元カノは疎遠になってしまったんよ」
ツッコミ「まぁ、男女の間、もとい男と男の間にはいろいろあるわな
よー分からんけど」
ボケ 「風の噂に聞いたんやけど、そのあと元カノと元カレが
元サヤになったって聞いて・・・」
ツッコミ「・・・ん?」
ボケ 「あぁ、これは言いたくなかったなぁ・・・悲しいわぁ」
ツッコミ「ちょっと待て・・・お前が元カレと付き合ってたんやな」
ボケ 「そうやで」
ツッコミ「元カノと元カレが付き合ってたわけではないと」
ボケ 「そう言うてるやん」
「元カレと僕が付き合ってて、もともと元元町に住んでた
元カノと元カレは付き合ってないよ」
ツッコミ「もともともともとややこしいな」
「じゃあな、なんで元カノと元カレが元サヤになるんや」
ボケ 「そら、付き合って結婚したからやん」
ツッコミ「だから、さっきも言うたやろ!」
「別れた男女がよりを戻すことを『元サヤ』と言うのであって・・・」
「新規でお付き合いする場合に『元サヤ』とは言わん!」
ボケ 「お前ひょっとして、『元サヤ』のこと『元サヤ』と思てない?」
ツッコミ「えっと・・・お、思ってないよ」
ボケ 「いや、絶対『元サヤ』やと思てるで」
ツッコミ「ぜ、全然思ってない、『元サヤ』のこと『元サヤ』やと
なんか思ったこと一度もない!」
ボケ 「ほんまかぁ、まあええわ。ところで今度の選挙やけど・・・」
ツッコミ「説明せえ! 尻切れトンボであさっての方向へ飛んでいくな!」
ボケ 「なんやの、分かってるんやったらええやん」
ツッコミ「いや、大体分かってる。今までの流れからしたら大体分かる」
「だが、きちんと解決しろ、投げっぱなしは許さん」
ボケ 「じゃあ、いっせいので言おか」
ツッコミ「望むところや」
ボケ&ツッコミ
「せーの」
「『元サヤ』言うのは男女がよりを戻すことやなく
元カレの苗字が『本鞘』言うねん!」
ボケ 「わー(ぱちぱち拍手をする)」
ツッコミ「おっしゃあー!(ガッツポーズ)」
ボケ 「お前もだんだんコツをつかめてきたみたいやな」
ツッコミ「せやな、ようやく元の使い方に慣れてきた・・・」
「って、こんな会話に慣れたないわ!」
ツッコミ「大体最初から『元狩野』だの『元佐屋』だの、過去形やなくて現在形で話せや」
「結局お前は何が言いたいねん」
ボケ 「僕が言いたいのはですね・・・」
「夫婦別姓になれば離婚しても『元』とかつけなくて済むから
早く国会で審議してくださいねって」
ツッコミ「意外にも社会派!」
「もうええわ」
実際におろすとなると、アクセントやイントネーションが結構難しくなりそうです。