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調律師の自治領域

3話目……誰か見てくれないかなぁー

 「今の説明だとお前の名前しか分からなかったんだが……知らないことばかりで理解できることが少なすぎる。夢幻の調律師って何なんだよ」


 苗木はキョトンとした顔で俺を見つめたあと、少し考え込む素振りを見せてから話し出した。


 「なるほど……君はこの世界をただの夢だと思っているようだね。まずはそこから説明していかないといけないようだ。だが、その前にいくつか質問をさせて欲しい。君が望む答えを教えるにはいくつか僕も君のことを知らないといけないようだからねぇ」


 「なんだよ、質問って」


 「話が早くて助かるよ。それじゃ早速1問目、君はいつからこの夢をみているんだい」


 「最初に見たのは3歳の時だと思う。記憶に残ってるのはそこから」


 「ほほぉ、末恐ろしい才能だ……。それじゃ2問目、君はこの世界で僕以外の生き物と出くわしたことはあるかい?」


 「無い。今まで誰も見たことがなかったから、あの化け物にもお前にも存在自体に戸惑ってる」


 「なるほど、それじゃ最後の質問だ。君は創造主を知っているかい?」


 「何だそれ、宗教的なのは分からねぇぞ」


 「アッハッハー。信仰や神がどうこうって類の話じゃ無いんだけどね。知らないなら良いんだ」


 正直なところ、夢の中だと思っていた世界で化け物に襲われ、突然現れた人間に質問をされているという状況に全く頭が追いついていない。 

 だけど、苗木の質問に含まれている単語から俺が夢だと思っていた世界は考えていた以上にヤバい所だということは察せられた。


 「不安かい?まぁ、無理もない話だ。少しゆっくりできる所に移動しようか。君との話もこの世界でだと“夢喰”が気になって集中できないだろうからね」


 「移動ってどこにだよ。また、現実で会うってことか?」


 苗木は首を横に振り、飄々とした笑みを浮かべて言った。


 「それも悪くはないけれど、時間がない。話をせずに次も君の領域に入り込めるか分からないからね。僕の世界に案内させてもらうよ」


 「お前の世界だと?そんなもんどこに……」


 「さぁ、行こうか」


 苗木が指で宙に文字を書くような身振りをするとガチャっという扉が開いたような音がした。


 「ついておいで、時詠(ときよみ)の名において君を僕の自治領域(テリトリー)に招待しよう」

 

 そう言うやいなや苗木は俺の腕を引っ張った。すると突然何処からともなく霧が立ち込め世界を包んだ。

◇◆◇◆◇◆


 霧が晴れたとき、目の前の世界は一変していた。先程の世界とは真逆としか言いようがないほど綺麗で命の溢れている世界だった。


 「苗木……ここは何だ……」


 「驚いたかい?綺麗だろう。ここが庭で、あそこに見えている塔が僕のホームさ」


 苗木が指で示すのは一面の花畑とその中央に聳え立つ大きな塔だった。


 「とりあえず塔まで行こう。あそこならいくらか時間の流れを抑えられる。君の幼馴染ちゃんが大騒ぎする前に君を元の世界に返さないといけないからね。君もあの子に心配はかけたくないだろう?」


 「あぁ……」


 苗木は振り向くことなく塔へ向かって歩きだす。

 

 「坊や、君は調律師として恐ろしい才能を持っているようだ。」


 歩みを止めることなく苗木は話しだした。


 「調律師が何なのかすら、未だに理解できていないんだが。才能ねぇ、ずっと夢だと錯覚してたんだ。そんなものないと思うけどね」


 「それが大きな間違いなんだよ。この世界に足を踏み入れてから能力に覚醒するまでの期間が長い程、強力な力を持った調律師になれるからね」


 「あんたはこの世界に入ってどのくらいで覚醒したんだ?」


 「僕かい?僕はね、入ったその日のうちに覚醒したよ。いや、せざるを得なかったんだ。その結果能力のリソースが少なくてね。時詠にほとんどを持っていかれたから身体能力の向上くらいしか夢喰への対抗手段がないんだよ。」


 「待て待て、リソースがどうのって言われても何も分かってないんだ。基礎から教えてくれ」


 「すまない、僕も君の才能を前に少し興奮しているようだ……ふぅ、その文字を刻んである部分に手をかざしてくれるかい?ここからは座ってゆっくりと話そう。ここが目的地だ」


 話に夢中になり、いつの間にか塔の真下に着いていた俺たちは文字の刻まれた壁に手をかざす。その瞬間俺たちは塔の最上階へと移動していた。

 


 

 


 

 


 


 

 


 


 

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