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平穏な日常と不穏な空気

2作品目です。文字量ってどんぐらいが丁度いいんですかね?書いてる時のテンションで口調変わったりするかもしれないですが、書籍化とかできたあかつきにはしっかりと直しますんで多めに見てください。感想等はTwitterで受け付けてます。応援よろデス! Twitter垢 @Alter_answer666

 雲に覆われ一筋の光も見えない空、崩れ落ちたビルが火の粉を撒き散らし燃えている。例えるなら地獄のような世界。

 

 周囲を見渡しても永遠に同じような光景が水平線に見えるまで続いていて、僕以外の人や動物、植物といった命あるものの存在を全く感じ取れないそんな世界で、俺は何をするわけでもなくただ燃えている街と暗い空を眺めている。


◇◆◇◆◇◆ 


 「この夢、久しぶりに見たな……」


 ジリリリリっというアナログな目覚まし時計のアラームが今日も朝から鳴り響く。時間は6:30、登校までまだ余裕があるため少し汗ばんだ寝巻きを脱ぎシャワーを浴びる。

 

 用意されていた朝食を食べ。予鈴5分前に着席が済むように登校する。


 平穏な日常。いつもと変わり映えのないごくごくありふれた俺の日常は、あの夢のせいで大きく歪み始めていた。


◆◇◆◇◆◇


 「ねぇ、起きなよ夢園。HR(ホームルーム)終わったよ」


 「んぁ?」


 「毎度毎度全然起きないし……うちの学校で授業中完全に熟睡してる人なんて夢園以外いないよ?まったくもう……」


 「ふぁ〜、お前が夢園って呼ぶの違和感しかねぇな。いつもみたい名前で呼べよ。美咲」


 俺があの夢を見る日、必ず昼間は睡魔に襲われていた。高校生としては珍しくもないことだとは思うが、一度眠ってしまうと日が完全に落ちるまで目を覚ますことはない。だが、不思議なことになぜか幼馴染の美咲に声をかけられると目が覚める。


 「な、学校で下の名前呼ぶなって何度言わせる気?あんたがずっとそんな調子だから男子には冷やかされるし、私たちが幼馴染だって知らない後輩からは恨み言言われるし、迷惑被ってるんですけど⁉︎」


 「頭に響くからギャーギャー騒ぐなって……帰るぞ」


 「私が勝手に騒いでるみたいに言わないでくれる?って、教室出るのが早い‼︎」


 後ろで騒いでいる幼馴染を置いて教室を出る。美咲の部活がoffの日はこのまま一緒に帰宅するまでがいつもと変わらない日常だ。


 「ちょっと待ってよ律!私今日一緒に帰れないからね」

 

 「あー、ついに週一の休みが約束されていた軽音楽部までも、生徒に休息を与えないブラック部活に成り果てたのか」


 うちの高校はそこまで何か特出した活動はなかった。部活動においても、進学や就職先においても基本平凡な結果になる。勿論努力している人たちは例外だが、大半はそれなりの進路へと進む。そんな中、ここ数年体育会系の部活が結果を出し始め部活動の動きが活発化してきている。今時珍しく顧問もやる気を出していて休息日が少なくなった部活が増えていた。


 「違うって、部活動をそんな悪の巣窟みたいな言い方しないで」


 「じゃあ何か用事でもできたのか?」


 「先生からプリントの整理頼まれたのよ。なんなら律も手伝ってくれない?」


 訂正、ブラックなのは部活だけでなく学校そのものだった。


 「何で俺が……あのな、今日は……


 「寝れてないんでしょ?あんたが素直な時はお腹が減ってる時か、夢のせいで寝れてない時の二択だし。ずっと一緒に過ごしてきたんだもん、分かるわよ。」

 

 美咲は俺の言葉を遮り、お構いなしに俺を追い越して資料室へと向かう。


 「分かってるなら早く帰って寝かせてくれ」


 「なんだかんだで資料室まで付いてきてるじゃない。まぁ、そうね。手伝ってくれたら今日の夕飯は私が作ってあげる。金曜日だしおじさんおばさんも遅いんでしょ?その間寝てていいから」


 「……シチューが良い」


「了解、早く終わらせましょ。そのあとスーパー寄って律の家ね」


 資料室に入るやいなや、美咲は慣れた手つきでプリントをまとめていく。


 「美咲って、こういうの慣れてるんだな」


 「一応人数の少ない部活とはいえ部長だしね。誰かに迷惑かけたくないから」


 「ふーん」


 「何よ、ふーんって。別に手伝ってもらえないほど人望がないってわけじゃないんだからね」


 「そこまでは言ってねぇだろ。ま、気が向いたらまた手伝ってやるから。声かけろよ」


 「驚いた。あなたってそんな気の利いた台詞言えたのね」


 「うるせぇ」


 口を動かしながらも淡々と作業を進める。久しぶりに幼馴染が手料理を振る舞ってくれることが多少モチベーションを上げているようで想像よりも早い時間でプリントのまとめは終わった。


 「手伝ってくれて、ありがと」


 「いいから早く帰ろうぜ。お腹は減ったし、何より眠い……」


 「はいはい、買い物は手伝いなさいよ。女の子に重い荷物持たせるわけないわよね?」


 「お前いつもギター担いでるじゃねえか……行くぞ」

 

 「鍵返してくるから先に行っといて」

 

 こちらの返事を待たずに職員室へと美咲は走っていったため、先に自転車置き場へと向かい校門前で待っておく。


◇◆◇◆◇◆


 自転車置き場に着くと怪しげな男が一人立っていた。生徒の保護者だろうか。

 

 「やぁ、初めましてだね。怖がらなくて良い。僕はこの学校の関係者の関係者。君のことはよく知っている。今日は君に挨拶と君の様子を見にきただけなんだ。目的は果たした。それでは失礼するよ。」


 一方的に喋りその場を後にする中性的な顔立ちの男。

 「なんだあいつ」


 寝不足から頭がぼーっとしてきたため深くは考えず、美咲を待つことにした。


 「お待たせ、行こっか」


 おそらく自転車置き場からも自転車を押して走ってきたのだろう。顔を少し赤くし息が荒い。

 なるべく急かさないようにゆっくりとたわいもない話をしながら自転車をこいでスーパーへ向かう。


 「今からだと4品くらいなら普通に作れるか」


 「今更だけど、おばさんとおじさんには言ったのか?幼馴染とはいえ、男1人の家に行かせるって親としては不安じゃないか?」


 「大丈夫よ。さっき鍵返して自転車取りに行ってる間にメールしたら……っと、そこ停めて」


 スーパーの駐輪場に自転車を置いた後、ポケットからスマホを取り出しておばさんとの会話を見せてくる。

 『律君ならいつでもウチは大歓迎よ。なんなら今日は泊まらせてもらいなさい。お父さんは私が黙らせるからね!』


 「おばさん!?」

 メールの内容に驚く俺と対照的に美咲は慣れきっているようで、ため息を一つ溢すと話を続ける。


 「まぁ、お父さん云々は置いといて、こんな感じだから大丈夫よ」


 「なんでこんなに信用されてるのか分からない……美咲って家で俺のこと話したりしてる?」


 「はぁ?なんであんたの話なんかしないといけないのよ」


 心なしか美咲の顔が赤い気がする。何か怒らせてしまうような失言でもしてしまったのだろうか。


 「まぁ、いいけど。買い物済まして帰るぞーー」


 欠伸を噛みころしながらスーパーで夕食の材料を揃える。面倒なはずの買い出しが幼馴染と一緒だからか心なしか終始温かい気持ちでいることができた。


◇◆◇◆◇◆

 「ただいま」


 「お邪魔します」


 買い出しが済んだので俺は自室、美咲はキッチンへと向かう。


 「律ー‼︎一時間もあったらできるから、目覚ましかけといてねー」


 自室はニ階、キッチンは一階。階段を通じて美咲の声が聞こえて来る。適当な相槌で応えながら俺の意識は夢の中へと沈んでいくのだった。


 

 


 





 





 

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