第83話 殺人鬼は機械の王に辿り着く
それから僕達はテクノニカの施設内を進んでいく。
フロアごとに様々な罠や防衛戦力に遭遇したが、結論から述べるとこちらの圧勝だった。
同行する殺人鬼達の能力が凄まじかったのだ。
竜人のロンは、目にも留まらぬ速度で機械兵器を解体する。
彼の爪や牙は如何なる硬度でも問答無用で穿つのだ。
それが竜という種族の特性らしい。
吸血鬼の伯爵は、血液の操作で場を支配する。
鮮血の濁流が何もかもを一掃してしまうので、基本的に数の不利は関係なかった。
多少の消耗も、テクノニカ側の人間を吸血することで解決する。
弱点である日光や銀も克服しているため、機械兵器が勝てる道理など存在しなかった。
エマに至っては何をしているかよく分からない。
彼女が視線を送ったり、近くを通り抜けるだけで兵器が解体されていった。
撃ち込まれたレーザー攻撃や爆発は跳ね返り、テクノニカ側の被害だけを膨らませる。
彼女が散歩のように進むだけで、何もかもが壊されて死んでいくのだ。
おかげで僕のやれることは少ない。
精々、拾った武器でロボットを破壊するくらいだ。
筋肉のリミッターを外すと反動で動けなくなるので、なるべく使わずにやり過ごす。
意識の混乱を使える状況ではなかったため、ひたすら肉弾戦に徹することになった。
他の三人に比べれば地味だと思う。
そうして進むうちに、やがて最深部にあたるフロアに到着した。
閉鎖された自動扉の前で足を止めたエマは、僕達を振り返って告げる。
「ここがマザーAIの私室だね。テクノニカにおける実質的な心臓だ」
半年住んでいた僕でさえ、具体的な場所は知らなかった。
エマは事前調査でもしていたのだろうか。
人工知能が管理する国内の見取り図を取得するのは困難な気がする。
探索中に何らかの手段で特定したと考えるのが自然だろう。
「何が仕掛けられているか分からない。なるべく離れずに歩いてきてね」
そう言ってエマは自動扉に触れる。
ブザー音と共に扉から煙が上がった。
数秒後、軋みながら勝手に開く。
僕達は部屋に踏み込む。
そこは一辺が百メートルほどの巨大な立方体の部屋だった。
床も壁も天井も無数の回路やダクトや金属板で構成されている。
一歩ごとに何かを踏み割ってしまう有様だ。
きっと誰かが入ってくることを想定していないのだろう。
自動扉は何らかの名残なのかもしれない。
部屋の中央に一本の柱が立っている。
床の大部分を占めるサイズで、側面はガラス製だった。
その内側で何かが脈動する。
はっきりと視認できているはずなのに、不思議と理解できない。
脈動する奇妙な存在は、どうやらこちらを見下ろしているようだった。
やがてノイズ混じりの女性の声がする。
「こんにちは。ノルティアスの皆様」
「初めまして、マザーAI。お会いできて光栄だよ」
エマは気さくな調子で挨拶に応じた。




