第82話 殺人鬼は成長を披露する
僕達は進む。
食糧倉庫を抜けて、他種族の収容施設に着いた。
荒野を彷徨う者達を監禁している場所だ。
その身体能力を研究し、人体実験に転用したり兵器開発や医療面に活かしている。
並べられたガラスケースには様々な種族が囚われていた。
これまで関わった国の支配種だ。
妖精や悪魔といった希少な種族もいる。
「ダニエル。こっちだ」
「はい」
僕はロンに手招きされて小走りになる。
その時、床を突き破って鋼鉄のアームが現れた。
奥には金属の胴体とドーム状の頭部が見える。
(ロボットの罠か)
アームが僕の足首を掴み、その場に固定した。
ロボットは這い上がりながらもう一方の手を伸ばしてくる。
そこにはアームではなく回転する刃が装着されていた。
モーター音を鳴らす刃が僕の胴体に迫る。
僕は咄嗟に散弾銃を連射するが、ロボットの装甲に弾かれるばかりだった。
反撃とばかりに刃が僕の脇腹にねじ込まれる。
硬い音と共に血飛沫が散った。
肋骨が削られて、衝撃で身体が振動する。
ロンが血相を変えてこちらに駆け付けようとしていた。
「ダニエルっ!」
「……っ」
僕は気の狂いそうな激痛を耐えながら吐血する。
散弾銃を捨てると、回転刃を装着したロボットの腕を掴んだ。
筋肉のリミッターを外して力を込めて、関節部を握り潰して破壊する。
さらに奪い取った回転刃を振りかぶり、ロボットの頭部に叩き込んだ。
金属同士の衝突で火花が弾ける。
抵抗するロボットを何度も蹴りながら引き倒し、回転刃を振り抜いて頭部を完全に破壊した。
ロボットは黒煙を立てながら機能停止する。
僕はひしゃげた回転刃を投げ捨てて座り込んだ。
ロンは大破したロボットを見て大喜びした。
「おいおい、すげぇな。今のどうやったんだ! テクノニカの手術でサイボーグにでもなったのか!?」
「いえ……違い、ます」
僕は息を切らしながら答える。
疲労ではなく、満身創痍で呼吸すら苦痛によるものだ。
回転刃で脇腹を深く切り裂かれたのと、リミッターの解除で筋肉断裂が著しい。
瞬間的にはロボットを上回ることができたが、すぐに動けるほど便利ではなかった。
エマが僕の四肢に触れて、痛みの反応を見て状態を解析する。
「筋力を限界以上に引き出す技だね。独学で習得したの?」
「無理なトレーニングをしているうちにできるようになりました」
「連発はできないみたいだけど、すごいね。まさかここまで強くなっていると思わなかったよ」
「ありがとうございます」
今度は伯爵が僕の肩を叩いた。
彼は胸を張って微笑する。
「さすがは私が見込んだ男だ。上質な殺人鬼として成長しているようだね。いやはや、血を飲めないのが残念だよ」
たった一体のロボットに苦戦したのだが、他の三人からの評価は上々だった。
元々はサラリーマンで、そこから成り上がったという観点で見てくれているのだろう。
僕は再生途中の肉体に鞭を打って立ち上がる。
先を急ぐように三人を言うのであった。




