第81話 殺人鬼は上司の力を垣間見る
正門に到着した僕達は、建物に雪崩れ込む戦闘部隊に遅れて追従する。
彼らは凄まじい勢いで進路を確保する。
立ちはだかる機械兵器を一方的に粉砕していった。
おかげで僕達が戦いに加わることはない。
彼らは競うようにして敵を殺しにかかっている。
時折、ライセンスを持たない奴隷扱いの人間が投入されたが、殺人鬼達は構わず虐殺した。
いや、むしろ嬉々としている。
派手な攻撃を仕掛けてくるロボットを放置して、パワードスーツや銃火器で武装する人間を優先して狙っていた。
きっと機械ばかりが相手ではつまらないからだろう。
彼らにとって最上の獲物は、やはり人間なのだ。
それを察することができたのは、僕自身も殺人鬼であるからである。
物足りなさを感じるのはよく分かった。
床に散らばる金属部品を踏みながら僕達は進んでいく。
テクノニカの居住区は通路が狭く入り組んでいた。
本来の構造とは大きく違う。
僕の記憶とは大幅に異なる内装だ。
どうやら侵入者対策で壁や階段の位置が変更されたらしい。
人工知能が防衛に適した形に修正したのだ。
建物自体にそういった機能が組み込まれていたのだろう。
しかし、殺人鬼の戦闘部隊は相も変わらず破壊を繰り返す。
人工知能の策略など関係ない。
その身で敵を殺し、罠を踏み潰し、すべてを否定するかのように突き進む。
スピーカーからウェアらしき声が何かを訴えるが、殺人鬼の歓声で掻き消されていた。
「そろそろ戦闘部隊とは別行動をしようか」
途中、そう言ってエマが壁を破壊した。
崩れた壁の先に通路が現れる。
何らかの感覚で探知したのだろうか。
侵入者対策の一環で潰された区画のようだ。
エマは戦闘部隊に声をかけてから隠し通路に入る。
「ご苦労様。このまま引き続き暴れてね」
戦闘部隊は虐殺を一斉に中断し、エマに向かって敬礼した。
彼女が通路に消えた途端、暴走を再開する。
一連の光景を目撃したロンは深々とため息を吐いた。
「このクレイジー集団を従わせられるなんて、とんでもない女だよな」
「否めませんね」
ノルティアスにおける力関係を知った瞬間だった。
未だに濁されて判然としないが、エマは相当な地位の殺人鬼らしい。
無論、地位とただ権力を指すだけではない。
おそらくは戦闘部隊すら凌駕する実力を有している。
「こっちだよ。たぶん近道だ」
エマに手招きされるままに、僕達は隠し通路を進み始めた。
狭い通路は終わり、すぐに開けた場所に繋がった。
そこはテクノニカの食糧倉庫だった。
人間に配給するための完全栄養食が保管されている。
味は決して良くないが、健康は保証される代物だ。
倉庫内はロボットが巡回していた。
天井には監視カメラも付いている。
僕達は食糧の陰に隠れながら移動する。
「戦闘は控えめに。消耗するよ」
「おうよ。ここで暴れるほど馬鹿じゃない」
ロンが得意げに応じながらロボットを破壊した。
死角から鱗の腕で貫いたのだ。
エマが無言で微笑みながらロンを見つめる。
彼は他人事のように口笛を吹き始めた。




