第76話 殺人鬼は物資を得る
ロンは放置されたバスを指差しながらエマに尋ねる。
「どうするんだ。テクノニカの車両らしいが、無視していくか?」
「いや、少し調べよう。何か残っているかもしれない」
彼女の一言をきっかけに車両は停止し、外交官達は次々と下車した。
彼らは三台のバスに駆け寄ると、我先にと内部を調べ始める。
そして、銃火器や武具や死体を掲げて大盛り上がりした。
無邪気な様子で探索を満喫している。
(まるで宝探しのようだな)
流れに乗って下車した僕は、その光景に苦笑する。
さすがは殺人鬼だ。
凄惨な場を訪れても前向きどころか楽しんでいる。
本当にピクニックか何かと勘違いしているのではないか。
僕はそんな気分にはなれない。
かと言って嫌悪感もなく、ただ戦闘の痕跡を認めるばかりだ。
淡々と事実を受け入れて身を任せている。
ロンは地面に転がったテクノニカ製の拳銃を拾うと、器用に回してから腰のベルトに挟み込んだ。
彼は散歩でもするような気軽さでバスの周りを巡る。
「いくつか武器を貰ってくか」
付近を漁っていたロンが、何かを僕に放り投げてきた。
それはテクノニカで支給された弾丸だった。
死体の下敷きになって焼けずに残っていたらしい。
「ダニエル。予備の弾はあるかい?」
「はい、それなりに」
「別に強制しないが、弾はあるだけ持っていこうぜ。テクノニカの連中に残らずぶち込まないといけねぇからな!」
「ロボットやパワードスーツが投入されてくるだろうからね。いやはや、腕が鳴るというものだ」
いつの間にか近くにいた伯爵が、不気味な笑みで言う。
彼は元々はウォーグラトナの吸血鬼だが、気質的にノルティアスでも上手くやっていけているようだ。
種族が影響しているか分からないが、殺人は好む傾向にあるらしい。
そうして物資を漁っていると、死体の一つから音声が発せられた。
「警告。ノルティアスの外交官よ、これ以上の侵略は許しません。すぐに立ち去りなさい」
聞き慣れたウェアの声だ。
死体の首輪を経由して僕達に話しかけていた。
ロンはその首輪を見下ろして挑発する。
「おいおい、指図できる立場かよ。止められるものならやってみな」
直後、首輪が爆発した。
間近にいたロンであったが、片腕を竜の鱗で覆って防御していた。
白煙が上がっているだけで軽傷未満のダメージである。
凄まじい反射神経と危機察知能力の賜物だった。
「ハッ、甘いな。こんなオモチャで俺を殺せると思ったか」
「これより先にはテクノニカ居住区があります。無許可での侵入は禁じられています」
「俺達が大人しく従うわけねぇだろうがよ」
また別の首輪から聞こえた音声に、ロンは吐き捨てるように言い返すのであった。




