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破滅した人類は希少資源です  作者: 結城 からく


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第75話 殺人鬼は狂乱を目の当たりにする

 移動中の車内にて、他の外交官達は大盛り上がりだった。

 口笛や歓声を上げてはしゃいでいる。

 途中から大音量で音楽を流してカラオケ大会が始まる始末だった。


 まるで遠足に行くかのような空気だ。

 しかし、そこには誤魔化し切れない狂気が渦巻いている。

 今にも割れんばかりの熱が蔓延していた。


 彼らは人工知能との戦争を心待ちにしている。

 施設での戦闘は、あくまでもウォーミングアップに過ぎない。

 まだ本番はこれからだというのが共通認識があった。

 ともすれば爆発しかねない殺意を、にぎやかな雰囲気で辛うじて濁しているのだ。


(弱肉強食だ。誰にも止めることはできない)


 僕は車内の狂騒を傍観する。

 これだけうるさいと仮眠をとることもできない。

 仕方なく椅子に座って眺めていた。


 大半が盛り上がる中で、一部の外交官は冷静を装っている。

 ただし、それも偽りだ。


 車内の人間は、機械の国テクノニカとの戦争を楽しんでいる。

 これからどれだけ殺すかを考えている。

 どれだけ残虐に暴れて、本能を解放するかを想像している。


 そうやって想像を膨らます中には僕も含まれていた。

 別に復讐心などではないが、テクノニカと殺し合うことに躊躇いはない。

 当然のように反撃を受け入れており、そのための策を脳裏で巡らせている。


 しばらく進んでいくと、前方に三台のバスが見えてきた。

 一台は横転して、その後ろにある二台は死体が覗いていたり黒焦げになっている。

 僕が行き道に乗ってきたバスだった。


 ロンは窓から顔を出してバスを眺める。


「まだ派手にぶっ壊れてやがるな」


「テクノニカの車両ですね。あそこで僕達はゴブリンに襲撃されました」


「他の奴らはどうなったんだ?」


「おそらく全員死にました。逃亡しようとした人も、人工知能に殺されてしまったので」


 僕が述べると、ロンはまたもや露骨に悪態を吐いた。

 彼は首を振って顔を顰める。


「本当にどうしようもねぇ国だな。いや、他の国も大概だが」


 ロンの言葉には含みがあった。

 その意味を察した僕は何も言えなかった。


(テクノニカだけが人間を蔑ろにしているわけではない)


 全世界が人類を資源と見なしている。

 そのうわべで争奪戦が行われているだけだ。

 ここでノルティアスが蹂躙しても、それは人類の勝利ではないのだ。

 いつの間にか僕は、人類の枠組みから外れつつあった。

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