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破滅した人類は希少資源です  作者: 結城 からく


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第58話 殺人鬼は孤軍奮闘を強いられる

 頭を撃ち抜かれたゴブリンが倒れる。

 脳漿が地面を汚して、四肢が痙攣して躍った。


 僕は深く息を吐いて周囲を見渡す。

 残骸と化した三台のバスにゴブリンの死体。

 車内を調べれば、人間の死体も出てくるだろう。


 僕と同じ業務を任された者達だ。

 一度の戦闘で全滅してしまった。


 僕は自分の身体を見下ろす。

 血だらけだ。

 返り血もあるが、自分の出血も混ざっていた。


 ゴブリンからの銃撃を受けてしまったのだ。

 現在は再生能力で治癒されているが、それがなければ死んでいた。

 補助スーツではカバーできない傷になっていたろう。


(力押しになってしまったな。反省しなければ)


 死体から武器を奪いながら、僕は一連の戦いを振り返る。


 他種族との戦闘は久しぶりだった。

 鍛え上げた戦闘技能と再生能力に頼ってしまった印象が強い。

 それでゴブリン達に通用するのが確かめられたのだから収穫はあったものの、相手の数によっては負けていた恐れがある。


 意識を混乱させる技は、半年前からさらに磨いた。

 なんとなくどうすれば相手を誘導できるか分かるようになった。

 ゴブリンは単純なので余計に相性が良く、部分的に活用できていた。


 ただ、辛勝とも言える状況には違いない。

 仲間は残らず殺されて、僕自身も被弾した。

 反省点はあるのだから次に活かせるように頭を働かせるべきだろう。


 荷物をまとめていると、首輪からウェアの音声が発せられた。


「よくやりました、N303。あなたの勇姿は記録しています。帰還後、クリアランスの昇進は約束されたものと思ってください」


「ありがとうございます」


「礼を言うには早いですよ。まだ業務は終わっていません」


 ウェアは語気を変えずに述べる。

 そして沈黙が訪れた。

 改めて告げる必要はないとでも言いたげである。


 だから僕は淡々と確認した。


「このままゴブリンの占拠する施設に向かうのですか」


「はい。調査が業務ですので」


「分かりました」


 ここで断れば殺されかねない。

 どうせ承諾しか答えは許されてないのだ。

 盾突くことはない。


「あなたの他に生存者はいないようですね。単独で調査に向かってください。電力供給とデータ送信用のロボットは破壊されましたが、あなたの首輪がその役目を果たすことができます」


「分かりました」


 僕は頷きながら荷物を持って進み始める。

 横転したバスのそばを抜けて、暗い路地裏に入った。

 もう大人数ではない。

 目立つ場所は避けて進んだ方が都合が良いだろう。


 僕は暗い道を歩きながら首輪に触れる。


(まだどうにかする段階ではない)


 ここで裏切れば即座に爆破されるだけだ。

 少なくとも施設までは大人しく従わなければいけない。

 解除方法もまだ見つかっていなかった。

 現状、どうにもならない以上、僕は人工知能の奴隷を続けるしかないのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >電力供給とデータ送信用のロボットは破壊されましたが、あなたの首輪がその役目を果たすことができます ……おや、データ送信はともかくとして、首…
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