第57話 殺人鬼は蹂躙する
バスに近付いていくと、人々の悲鳴が聞こえてくる。
そこにゴブリンの歓声と銃撃音が混ざる。
虐殺を楽しんでいるようだ。
僕は素早くバスのそばに寄り、姿勢を低くして見つからないようにする。
そこで窓から車内へ手榴弾を放り込んだ。
バスの周りを歩きながら同じ要領で投擲していく。
計七つの手榴弾を使った後、僕は退避する。
背後で轟く爆発。
振り返ると、バスが炎上していた。
何もかもが壊れて燃えている。
間もなく火だるまになったゴブリンが飛び出してきた。
そこに僕は拳銃の連射を浴びせる。
弾丸を受けたゴブリンはひっくり返って動かくなった。
バスの窓から別のゴブリンが飛び出し、掴みかかってきた。
猛然と迫る動きは、拳銃で撃っても間に合わない。
間違いなく突進を受けることになるだろう。
それを察した僕は、拳銃を捨てて笑顔を作った。
隙だらけの体勢で握手を求める。
何も強制はしない。
ただそれが当然のように行動した。
目の前で立ち止まったゴブリンは、燃えながらそれに応じようとする。
混乱した頭で、無視してはいけないと思ったのだろう。
僕の仕草を真に受けたせいで、戦闘中という意識が抜け落ちたのである。
その一瞬の混乱を逃さず、僕は斧を叩き込んで殺した。
倒れる死体を踏み付けて斧を引き抜いて、深く息を吐く。
車外に出てきた者を見境なく殺すうちに三台目のバスにいたゴブリンは全滅できた。
燃えるゴブリンに掴まれたりもしたが、問題なく殺すことができた。
焦げた衣服を叩きつつ、僕は歩き出す。
そのまま先頭の横転したバスのもとへと向かった。
こちらのゴブリンは外に出ていた。
残り五人だ。
僕の存在に気付いて、既に陣形を組んでいる。
数の利が活かせる戦法で勝つつもりらしい。
(混乱させるのは難しいな)
そう判断した僕は、即座にグレネードランチャーを撃ち込んだ。
一人のゴブリンが棍棒で打ち返そうとして、殴った瞬間に爆死する。
飛び散る血肉に黒煙が混ざって嫌な臭いを漂わせた。
残る四人のゴブリンが一斉射撃を始めた。
僕は物陰に転がり込む。
何発か当たってしまったものの、再生するのだ大丈夫だ。
廃屋に侵入した僕は、窓からゴブリン達を狙い撃つ。
胸を撃ち抜かれた代わりに、向こうの一人を射殺することができた。
(残り三人……)
僕は傷を庇いながら階段を上がる。
廃屋の二階に到着すると、そこから外に飛び出した。
落下しながら散弾銃を構えて、驚くゴブリンの顔面に発砲する。
至近距離からの炸裂は、相手の頭部を粉微塵に吹き飛ばした。
着地に失敗した僕は地面を転がる。
おかしな方向に折れた腕をねじって無理やり治す。
(残り二人)
ゴブリンの放ったライフル弾が僕の腹部を貫いた。
倒れずに踏ん張った僕は、散弾銃を連射して相手を殺害する。
吐血の衝撃で、傷口から臓腑がこぼれ出た。
「あと、一人……」
最後のゴブリンが恐怖していた。
腰が引けて今にも逃げ出しそうだった。
僕は真顔で歩み寄る。
ゴブリンが銃を向けてきたので、手を前に出して制する。
「駄目です」
それが当然という雰囲気を出した。
銃に怯えず、かと言って強がりもしない。
毅然とした態度を保つ。
ゴブリンは躊躇する。
発砲すべきか否か迷っているらしい。
僕は目の前まで近付くと、手を差し出す。
ゴブリンは恐る恐る銃を渡してきた。
僕はそれを受け取ると、ゴブリンの額に当てて発砲した。




