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破滅した人類は希少資源です  作者: 結城 からく


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第48話 殺人鬼はディストピアに生きる

 そこは白い廊下だった。

 見上げると、かなり高い位置に天井がある。

 左右には等間隔で扉が並んでおり、僕が見ている間に次々と人が出てくる。

 彼らは誰もが慣れた様子でどこかへと歩き去っていく。


 部屋の前には、室内と同じモニターがあった。

 おそらくあらゆる場所に設置されており、人間を見張れるようにしているのだろう。


 僕は開き直ってモニターに質問をする。


「彼らはテクノニカの国民ですか」


「いえ、あなたと同じく国民候補です。今後の行動次第で昇格することもあれば、不十分として処理される場合もあります」


「処理や身分の降格とは、具体的に何なのですか」


「様々です。これ以上はクリアランスを満たしていないので回答できません」


 ウェアは流暢に答える。

 すべてを教えてくれるわけではない。

 やはり秘匿事項があるようだ。


 僕は部屋の前から動かずに周囲を観察した。

 白い衣服を着た人々は他の者達を会話したり、少し遠くにある建物で何かを購入している。


 視線をずらすと、台形のロボットが人間を引きずっている光景があった。

 人間は黒煙を発しながら動かない。

 どうやら高圧電流を流されて死んだらしい。

 何らかの違反で罰せられたのだろう。


 そのような状況も意に介さず、ウェアは僕のために説明を続ける。


「この付近は自由に散策できますが、別エリアに繋がる連絡橋への立ち入りは禁じられています。許可なく侵入した際は即座に処理されますのでご注意ください」


「分かりました」


「あなたは模範的な態度ですね、N303。非常に良いです」


「ありがとうございます」


 僕は頭を下げる。

 形ばかりの言葉だが、ウェアは感心しているようだった。

 おそらくこちらの内心までは読み取れないのだろう。

 発達した機械文明でも、それだけの技術には到達していないらしい。


「当然ですが、不当な暴力は違反行為です。特に上級クリアランス所持者への暴力及び異論は明確な反逆と見なされます」


「クリアランスとは何ですか」


「テクノニカにおける身分と階級を示す証書です。クリアランスの位が高くなるほど、利用可能なサービスが増えます」


「どうすれば上級クリアランスを取得できますか」


「我々と良好な関係を築き、テクノニカの平和に貢献することで昇格できます。日頃の行いも評価対象なので、良識ある国民像を心掛けてください」


 僕は着々と情報を得ていく。

 ここではとにかくルールを知るのが重要だ。

 ふとしたミスで処刑されかねない。

 行動に出る前に色々と知っておくのが第一だろう。


(まずは国民として認められて、クリアランスを取得するのが先か)


 僕はウェアの話を総括して方針を定める。

 クリアランスの取得後、昇格を狙うべきだ。


 現在の僕は、おそらく最底辺の身分に位置する。

 まだ国民として認めてもらえていない状態なのだ。

 従順な態度を続けることで信用を得て、脱出の糸口を探ることになる。


(こういった環境をディストピアと言うのだったな)


 僕は書物で見かけた言葉を思い出す。

 頭では理解していたつもりだったが、ここまで息苦しい生活だとは予想外だった。


 しかし、僕はこの国で暮らしていかねばならない。

 今も支配者たる機械は、僕を注視しているのだから。


「N303、理解できましたか?」


「はい。ご丁寧にありがとうございます。テクノニカの一員として、尽力しようと思います」


 衝動の燻りを感じつつも、僕は素直に述べるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンの国の話は一旦中断してガッツリテクノニカ編に入る雰囲気ですかね?助けが来るのかと思ったらダニエル単独での活躍が見られそう。続きが楽しみです。
[良い点] 今話もありがとうございます! ……AI技術を駆使して国民を監視している現実の世界の中共も、テクノニカの様に息苦しい所なんだろうな。 [一言] 続きも楽しみにしています!
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