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破滅した人類は希少資源です  作者: 結城 からく


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第40話 殺人鬼は逆襲を試む

 僕はゆっくりと目を開ける。

 朦朧とする意識で、背中に当たる地面の硬さを感じ取った。

 どうやら仰向けに倒れているらしい。


 そう、ゴブリンだ。

 ゴブリンに殴られて気絶したのである。


 胸に痺れが広がっている。

 いや、違う。

 これは痛みだ。

 とんでもない痛みが身体を蝕んでいた。


(何だ)


 ぼやける視界で目を凝らす。


 胸に錆びたナイフが刺さっているのが見えた。

 血で汚れた刃がぬめっている。

 痛みはそのためだった。


 僕は首を回す。

 炎上する馬車のそばに数人のゴブリンがいた。

 爆破や地形操作の魔術を扱う杖持ちと、僕を気絶させた棍棒持ちがいる。

 彼らはこちらを見ていない。

 僕を殺せたものだと判断しているようだった。


 遠くから喧騒が聞こえてくる。

 まだ吸血鬼とゴブリンが戦っているらしい。

 殺し合いは続いているので、気を失っていたのは短い時間なのだろう。


(まずは起きなくては)


 僕は胸に刺さったナイフを掴む。

 刃が動いて、肋骨に当たる感触がした。

 内臓も抉れた気がする。


「……っ」


 背筋のざわつく激痛に、こみ上げてきた血を吐く。

 震える手でナイフを握り直すと、今度は一気に引き抜いた。


 傷から鮮血が溢れ出すも、再生して塞がっていく。

 歯を食い縛る僕は、深呼吸をしながら痛みが引くのを待った。

 気の狂いそうな痛みが脳裏を支配している。

 その中で懸命に理性を手放さないように気を付けた。


 体感で十秒ほどが経過した頃、胸の痛みが小さくなった。

 僕は上体を起こす。

 特に不自由はなく、しっかりと息ができていた。

 破れた衣服から血で汚れた胸が見えるが、傷は見当たらない。


(再生能力に感謝しないと)


 僕はむくりと立ち上がる。


 そこでゴブリン達がこちらに気付いた。

 何やら驚いており、殺気立っている。

 いきなり突っ込んでくる兆しはないものの、臨戦態勢なのは間違いなかった。


 こちらを見るゴブリンは五体だ。

 ただし、決め付けは良くない。

 先ほどのようにいきなり接近してくる恐れがある。

 周囲に気を配っておいた方がいいだろう。


(考えろ。皆殺しにする方法だ)


 血だらけの僕は、歩きながら考える。


 まともに立ち向かえば敵わない。

 僕の身体能力はただの人間レベルだ。

 脳や心臓が無事なら傷も治るが、複数のゴブリンから袋叩きにされれば死ぬかもしれない。


 ただ、不思議と恐怖は感じなかった。

 僕は一歩ずつゴブリン達に歩み寄っていく。

 胸に刺さっていたナイフを片手に、ふらつきながら進んでいく。


 頭の中で、歯車が噛み合うような感覚があった。

 内に秘めた衝動が、隙間から漏れるように這い出てくる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第40部分到達、おめでとうございます! [気になる点] さて、ここからダニエルのターン……。 [一言] 続きも楽しみにしています!
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