第14話 殺人鬼は装備を選ぶ
(自衛のための武器を選ばなくては。どれがいいのだろう)
僕はロッカーを順に開けながら考える。
自由に選んでいいそうだが、候補も何もないので逆に迷ってしまう。
我ながら戦いの素人だ。
どういった武器を使うべきなのか判断が付かなかった。
僕は試しに大型のナイフを手に取る。
刃先に血の染みが付いて、グリップ部分は少し割れている。
それを握って構えてみた。
(刃物が扱いが難しそうだ。自分の指を切ってしまうかもしれない)
振り回して切り付けたら、果たして吸血鬼達は怯むだろうか。
オフィスにいたかつての同僚達なら問題なく殺せるはずだ。
しかし、今回の相手は人間を養分とする怪物である。
平然と反撃してきそうな気がした。
刺突で心臓を狙えば効果があるかもしれないが、失敗すれば終わりだ。
他にも鉈や斧といった刃物も用意されていた。
しかし、重い上に取り回しが悪い。
僕の筋力ではまず使いこなせないだろう。
次に僕が手に取ったのは金属バットだった。
野球の道具のはずだが、あちこちが陥没している。
やはり血の染みが付着していた。
(鈍器は使いやすいだろうけど、吸血鬼に通用しない気がする)
頭を殴れば昏倒させられるかもしれない。
ただ、反撃が飛んできた場合、上手く躱せないだろう。
おまけに力一杯にスイングするだけでも体力を消耗する。
これで僕が吸血鬼を撲殺していく姿は想像しづらい。
そもそも至近距離で戦う前提なのがおかしいのだ。
格闘術の心得があるわけでもないのだから、距離を取って攻撃できるのが最も安全だろう。
(やはり銃が無難だな)
僕はロッカー内の銃火器を探す。
ロッカーには様々な種類の銃が乱雑に放り込まれていた。
オートマチック式の拳銃。
無骨な見た目の散弾銃。
ゲームに出てくるライフル。
古めかしい火縄銃。
どう見ても玩具の銃まで入っていた。
(ここから厳選するか)
色々と考えた末、僕はとりあえずオートマチック式の拳銃とポンプ式の散弾銃を掴み取る。
それぞれの弾も集めて、スーツのポケットに詰め込んでおく。
ついでに手榴弾も貰った。
万が一の武器として、鞘付きのサバイバルナイフもスーツのジャケット裏に忍ばせておく。
咄嗟に引き抜けるように角度を調節した。
願わくば、このナイフを使う瞬間が訪れないことを祈っておこう。




