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第10話 殺人鬼は才覚に気付く

 盗賊達を倒した僕達は、彼らの乗ってきた車両で移動する。

 運転するロンは、上機嫌に煙草を吸っている。


 盗賊達から奪ったこの車両は、普通の車両ではなかった。

 見慣れない計器が付いていたり、一時的に浮遊することもできるらしい。

 燃料もガソリンではないそうだ。


 ロンによると、別の国の車両だという。

 ノルティアスとは異なる技術で製造されているとのことだった。

 魔術と呼ばれる概念が盛り込まれているそうだが、僕にはよく分からない。


(やはり他国のことを知るのは面白いな)


 僕はペットボトルの水を飲みながら思う。

 おにぎりも齧っていた。

 ちなみに中身は鮭だ。

 僕に世界の真実を告げた女性からの支給品である。


 毒が入っているのではと疑ったが、空腹に負けたのだ。

 ロンも食べているので問題ないと思われる。

 彼は毒は臭いで分かるらしい。

 嗅覚が優れているのだろう。


(また新たな命を奪ってしまった)


 僕は腰に吊るした拳銃を一瞥する。

 特に感想はない。

 達成感も嫌悪感も罪悪感も感じなかった。

 その事実だけを受け止める。


 今度は一発で殺せるようにしなくてはならない。

 確実に始末するため弾を撃ち切ったが、他にも敵が隠れている可能性があったのだ。

 それを考えると、弾を残しておくべきだろう。

 次回に繋げるための反省点だと思う。


 おにぎりを食べ終えて拳銃を弄っていると、ロンが唐突に話を切り出した。


「やっぱり、あんたには殺人鬼の才能がある」


「そうですかね」


「ああ。殺しに躊躇いがないし冷静だ。まだ素人で発展途上だろうが、殺しに慣れた三人の盗賊を無傷で始末したんだ。しかも、それを顔色一つ変えずにやり遂げた。結果としては上出来だろう」


「すごく褒めてくれますね」


「事実を並べているだけだ。客観的に自己評価してみろよ」


 ロンが助手席の僕の肩を叩いてきた。

 やはり力が強い。

 気分が上がっているのだろう。


 彼はハンドルを握りながら語る。


「あんたの場合、さらに尖った能力がある。戦いの中で殺気を発さず、相手の意識の隙間に潜り込める。その特性が合わさることで、相手が混乱して思考停止に陥っていた」


 彼の指摘には心当たりがあった。

 僕はペットボトルを置いて記憶を探る。


(そういえば、オフィスでも同じようなことがあったな)


 職場の同僚達は呆然としていた。

 目の前で人が死んでいたのに、僕を止められずに固まっていたのだ。

 あれと同じ現象が、盗賊達との戦いでも起きていた。


「正直、面白い戦法だと思うぜ。殺気をコントロールする者は多いが、あんたみたいなのは珍しい。だいたいは過剰な殺気で威嚇するか、抑制して気配を薄めるくらいだ」


「僕はその二パターンではないのですね」


「敵前であえて堂々として、頭を混乱させて殺害する。ははっ、こんなの特殊能力に近いだろう!」


 ロンは嬉しそうにまた肩を叩いてきた。

 そろそろ痣ができるのではないか。

 息が詰まるも、僕は眉を寄せて耐える。


「殺人鬼として優れた才能は良い。存分に活かすといい。成長方針は定めておくと分かりやすいからな」


「分かりました。ありがとうございます」


 僕は頭を下げながら、ふと疑問に思う。


「なぜ僕は、こんな能力を持っているのでしょう」


「元から才能があったんだろ。極限状態で開花したんだ。まあ、その気質で日常生活が壊れたわけだが」


 ロンは冗談めかして言う。

 僕は何も言わずに水を飲んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第10話到達、おめでとうございます! ダニエルとロン、まさに意気投合といった感じ。 この二人は一般常識的な意味での「善人」ではありませんが、 それでもなぜか感情移入し、「このコンビには長…
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