香水
お気に入りの香水を久しぶりにつけた。
その香りは甘くて重くて、春になる頃には使うのを控えてしまう香水だが、僕の吸う煙草によく合う。その上僕が大学に入って初めて買ったこれには他の香水よりも思い入れがある。
大学2年の冬、僕には好きな人がいた。
周りの子と比べてみても垢抜けていて、黒く長い髪が良く似合う子だった。
そしてなにより魅力的なのは彼女の香りである。
夜の街に一輪咲いた華のような、なんて言い方にしてしまうと余りにチープであるし、少しキザになってしまう。
しかしそれ位に際立って良い香りだったことを覚えている。
彼女とは同じグループ内でも特に仲がよかった。
花見も夏祭りも紅葉もイルミネーションも全て一緒に過ごした。
けれどその先を望んでいたのは僕だけだった。
ある冬の寒い日、大学の図書館裏のベンチで気持ちを伝えた。
その日から関係は嘘のように崩れ、連絡も取り合わなくなってしまった。
あれから1年。
今日お気に入りの香水をつけた。
街に出ると人で溢れかえっている。
ふと彼女の香りがしたような気がした。
香水を枕にふりかけて寝るのが好きです。
この作品はフィクションです…笑