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八十分間異世界半周  作者: 仙葉康大
第四章
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ノーパンツ・ノーライフ

 苗字が変わった。


 お母さんが深入くんのお父さんと再婚したのだ。私の名前は深入音根となった。

5LDKのマンションに引っ越したその夜、私は段ボール箱を開けながら、隣の部屋にいる深入くんのことを考えていた。


 ああ、どうしよう。ついに同居生活が始まってしまった。思春期の男女であるからして、もちろん部屋は別々なのだが、住んでいる気配というのは壁越しにも伝わる。だからどうしても体温が上がってしまう。


 私は窓を開け、夜の風を部屋に招き入れた。


 もう寝ようかな。でももう少し起きていたい気もする。

 段ボール箱の中からお気に入りの一冊を取り出し、ベッドに寝転がる。


 その小説の主人公は、冷淡で優しい紳士だ。まだ飛行機というものがなかった時代、彼はたったの八十日間でロンドンからロンドンまで世界を一周した。


 彼の名は、フィリアス・フォッグ。

 本のタイトルは『八十日間世界一周』。


 この本を読むと、いつも思う。私にはできないって。学校へ行って帰ってくるだけで、私は疲れ切ってしまう。何か言葉を発しようと口を開くたびに、莫大なエネルギーが持っていかれる。そんな私が、旅の途中に起こるトラブルをフォッグ卿のように解決できるわけがない。「世界一周」、それは私にとって、「絶対無理」と同じ意味なのだ。


 だからこそ、この本は私のお気に入りなのだ。


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