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八十分間異世界半周  作者: 仙葉康大
最終章
44/45

空がきこえる②

 チャイムが鳴る。

 現代文の授業が始まった。


 若い女の先生が教壇に立ち、「『こころ』夏目漱石」と板書した。


「じゃあ、先週やったことの復習から。この作品の時代背景を説明してくれる人?」


 つと、先生と目があった。


 当てられるかなと思ったが、先生はまばたきをするばかりで、何も言わない。そのまま、時間だけが過ぎていく。


「先生?」


 誰かが言った。


「あ、ごめんなさい」


 教科書に目をやり、そしてすぐ僕の方を見た。


「あの、深入くん、よね?」

「はい」

「今日はラノベ、読まないの?」

「え? 僕は普段、授業中にラノベを読んでいるんですか?」

「僕?」

「え?」


 混乱している。僕も先生も。

 クラスメイトたちがさざめき立つ。


「先生、私と霧彦が記憶喪失になったって聞いてないんですか?」


 音根さんの発言に先生は目を丸くした。


「あれ、デマじゃなかったの? 本当に?」


 僕はうなずいた。

 先生はうなだれて、教卓に両ひじをついた。


「そう。分かったわ。ごめんなさい。授業を再開します」


 声が沈んでいた。

 授業中、先生は何度もチョークを落した。


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