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八十分間異世界半周  作者: 仙葉康大
第十二章
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熟考という概念が存在しない退屈な世界②

「おはよー」


 元気に挨拶して教室に入ると、変な顔をされた。


「え? なんで?」


 普通、挨拶するでしょ。意味わかんない。

 私の方を見ながら、何かささやき合っている子たちもいる。


 うざったいなあ、ああいうの。

 一発、言ってやろうか。

 腕をまくり、そいつらのいる方へ行こうとしたら、三人の女子に行く手を阻まれた。


「音根、なんだよね?」

「そうだよ。私、深入音根。あ、でもね、なんにも覚えてないの。記憶喪失ってやつ。ほんと、まいっちゃうよね。あ、もしかしてあなたたち、私の友達だった? 名前、教えて」


 三人はとまどいながらも、名前を教えてくれた。

 佐藤さくら、鈴木すみれ、山田八重。

 あ、この人たち、林間学校で私と同じ班だった人たちだ。しおりにそう書いてあったもん。


「私の机ってどこか分かる?」

「こ、こっちだよ」


 案内してもらう。


 私は、席につくなり、自分の身にふりかかってきた災難について話し始めた。イギリスでのこと、帰国してからのこと、たくさん質問を浴びせかけられたこと。ほとんど愚痴だった。三人はすごく真剣に聞いてくれた。というか、全然、しゃべらないの。無口だなあ。しゃべってくれていいのに。


「ねえ、私のこと教えてよ。私ってどんな子だった?」

「音根は――」


 佐藤さくらと言う子が答えようとして、言葉を切った。その目には涙が膨らんでいた。今にも目じりから零れ落ちそうだ。


「ええっ? どうしたの? なんか嫌なことあった?」

「ううん、なんでもないの」

「え? そうなの?」


 でも本人がそう言うなら、そうなんだよね。


「ねえ、二人も答えてよ。私、どんな子だった?」


 鈴木すみれと山田八重はすでに泣き出していた。

 ええ、なにこれ怖い。


「三人とも急にどうしちゃったの? もしかしてこの学校では朝、泣くのが流行ってたりする?」

「ううん、しないよ」


 そう言って、こらえかねたかのように佐藤さくらまで泣き出してしまった。


「何これ、どういうこと? 意味わかんない」


 でも、まあ、いっか。

 考えるだけ無駄だよね。人の気持ちなんて分かりっこないんだし。考えるの、疲れるし。

 私は私が楽しければそれでいいや。


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