熟考という概念が存在しない退屈な世界
制服を着た私は、テンションが上がってしまい、姿見の前でくるっとターンした。それから、ピースを決め、鏡の中の私を見つめてみた。けれど、やっぱり、私は私のことが思い出せないのだった。
私と霧彦という私の義理の兄は、林間学校の最中に姿を消し、その数時間後、正確には五時間後ぐらいに、イギリスのコーンウォール地方の西海岸で発見された。砂浜に空いた穴の中に二人、抱き合うような恰好でいたそうな。
すんごいミステリーだ。
だって日本とイギリスって超遠いよ。私たち、パスポートも持っていなかったんだって。リュックの中には林間学校のしおりとかあって、それで、私たちの名前とか国籍とか、通っている学校がどこかとか分かって、パパとママが迎えに来てくれて、でも、すぐには帰れなくて、いろんな人にいろんなことを訊かれて、で、やっと日本に帰って来たと思ったら、また、質問の嵐。でも、なんにも覚えてないんだもん。分からない、覚えてないって何度も言ったのに、同じ質問ばかりされた。
本当に何も覚えていないの?
覚えてないってば。
いらついてきた私を見かねて、お医者さんはしばらく様子を見ましょうと言った。学校へ行って友達と話せば、何か思い出せるかもしれませんし、とも言った。
そうだそうだ、と私も大賛成したかいもあって、今日から学校だ。
楽しみで仕方がない。
私はどんな子と友達だったのだろう?




